アドビ、Premiere Proに「文字起こしベースの編集」など新技術を搭載したビデオツール群最新バージョン発表

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2023/04/15 12:30

 アドビは、放送、メディア、エンターテイメントの進化を牽引するカンファレンスと展示会「2023 NAB Show」の開催に先駆け、「Adobe Premiere Pro」へのAI搭載「文字起こしベースの編集」や「自動トーンマッピング」機能など、プロフェッショナル向けビデオツール群に新機能を盛り込んだ最新バージョンを発表した。

 さらに、最新版の「Adobe Premiere Pro」は、GPUアクセラレーションやワークフローの強化により、これまでリリースされた同製品史上最速のバージョンに。

 また、モーションデザインソフトウェア「Adobe After Effects」には、ユーザーの生産性を向上させるコンテキスト対応の「プロパティパネル」や一貫したカラーサポート、パフォーマンスの最適化などを導入した。

 アドビの最新のイノベーションは、プロフェッショナルな映像編集者やモーションデザイナーのワークフローに対するニーズに応えるため設計されている。作業の手間を減らし、時間のかかるタスクを自動化することで、ユーザーは伝えたいストーリーの開発により多くの時間を割くことができる。また、動画コラボレーションプラットフォームFrame.ioを、写真やPDFドキュメントのワークフローにも対応させ、それにともない新しいパートナーシップを発表。

 アドビのクリエイティブ製品部門およびデジタルメディア推進担当シニア バイス プレジデント アシュリー スティル(Ashley Still)氏は、次のようにコメント。

「プラットフォームやデバイスを問わず、優れた動画コンテンツへの需要は飛躍的に高まっており、今日の映像関係者は、こうした需要に対応するために奔走しています。アドビは、Adobe Premiere ProとAdobe After Effectsに最新技術を搭載することで、ワークフローを改善し、クリエイターの創造性に刺激を与え、彼らが制作に集中できるよう支援するとともに、構想段階から制作、配信までの各ステージにおいて時間のかかる作業を削減します。コンテンツ制作のスピードアップを実現することでクリエイターの課題に応えることができて、うれしく思います。」

新たなイノベーション

 コンテンツの需要が加速し続け、過去2年間で2倍、今後2年間で5倍の成長が見込まれる中、映像クリエイターはこれまで以上に高品質なコンテンツを迅速に納品するためのツールを必要としています。アドビの人工知能(AI)と機械学習プラットフォームであるAdobe Senseiを活用したAdobe Premiere ProとAdobe After Effectsは、ビデオワークフローを合理化し、AIを活用した編集機能を提供することで、制作チームの貴重な時間を短縮し、コストを削減。

Adobe Premiere Proのおもなアップデート

文字起こしベースの編集

テキストのコピー&ペーストという簡易な操作でビデオ編集を可能にする。映像を自動的に分析しテキストを生成することで、エディターやプロデューサー、アシスタントが文章をコピーし任意の順番で張り付けるだけで、編集したいパートがタイムライン上に表示される。また、文章はトランスクリプトの検索窓から検索するだけで正確に単語やフレーズを特定することができる。

自動トーンマッピングとLOGカラー検出機能

自動トーンマッピングとLOGカラー検出機能により、エディターは異なるタイプのHDR映像を同じSDRプロジェクトにいれても、一貫した色彩の映像を作ることができる。これらの機能によりルックアップテーブル(LUT)を使用したり、手動で映像バランスを調整する手間が不要となる。

同製品史上最速のバージョンを提供

Adobe Premiere Proは、大幅な改良がなされた同製品史上最速のバージョンで提供を開始。そのほかにも、パフォーマンスの向上に加え、バックグラウンドでの自動保存や起動時のリセットオプション、プラグインエフェクトのマネージャーなど、新たな機能が追加されている。

シーケンスロックを含む共同編集機能の強化

シーケンスロックを含む共同編集機能の強化により、編集中のシーケンスにはロックがかかり「閲覧モード」になるため、他者が変更できないようすることが可能。また、共有プロジェクトで誰が作業しているかを示す「プレゼンスインジケーター」が追加され、「オフライン作業」では、オフラインで作業後オンラインに戻ったときに、ほかのエディターの作業を上書きせずに変更箇所を公開できるようになった。また、Adobe Creative Cloudに含まれるFrame.ioのサポートにより、Adobe Premiere Proで作業中のプロジェクトをFrame.ioに直接書き出し、アップロード、レビュー用に共有することができ、プロジェクトの安全な共有と共同レビューが可能となった。

そのほかコミュニティからの数多くの要望に応える

RED V-Raptor X、ARRI Alexa 35、Sony Venice 2カメラのフォーマットサポートの強化、オランダ語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語などが加わり合計16言語対応となった「音声のテキスト化」、デベイヤリングとトランジション効果のGPUアクセラレーション、よりシンプルなトラックターゲット、Adobe Media Encoderへの直接書き出しとレンダリングも追加された。

Adobe After Effectsのおもなアップデート

新しいプロパティパネル

新しいプロパティパネルは、もっとも重要なアニメーション設定にすばやく容易にアクセスできる便利なパネル。プロパティパネルは選択した内容に応じてもっとも重要なコントロールが自動的に表示されるため、タイムラインを移動しながら設定を探す時間が省かれ、新規ユーザーにとっても使いやすくなった。

新しいプロパティパネル

新しいACESとOpenColorIOは、他のポストプロダクションアプリケーションとアセットを共有する際にも一貫したカラーを維持し、より少ない時間と労力で予測可能かつフォトリアルな画像を作成できる。

そのほかの新機能

タイムラインのレイヤー選択の高速化やシェイプのマルチフレームレンダリングなど、パフォーマンスの最適化を実現。加えて、選択可能なトラックマット用の新しいキーボードショートカットが利用可能。また、ワークフローの問題に対するアプリ内でのトラブルシューティング、システムパフォーマンスの最適化、プラグインの有効化と無効化のためのシンプルなインターフェイス、キャッシュや環境設定のボトルネックを修正する診断ツールなど、IT専門家のサポートを必要とせずに、Adobe After Effects自体が一般的な問題の解決をサポートできるようになった。

今後の展望

 アドビは、パートナーに「世界を動かすクリエイティブな体験を」提供する力を与えるため、すべてのビデオ製品において総合的かつエンドツーエンドのアプローチを提供する新しいAdobe Video Partner Programを開始。このプログラムでは、パートナーのビジネスを進化させ、成長させるために設計された限定特典、リソース、ソリューションにアクセスすることができる。

 半導体メーカーのAMD、Intel、NVIDIA、カメラメーカーのキヤノン、DJI、Nikon、RED、Sony、テクノロジープロバイダーのAWS、Fraunhofer IIS、Microsoftなど、400社を超えるグローバルパートナーがアドビのユーザーにソリューションを提供している。新たに発表された富士フイルム製品との統合により、アドビの代表的なツールである「Frame.io」が拡張され、スチル写真の撮影、編集、レビュー、承認のためのエンドツーエンドのワークフローをサポートする。

価格と提供時期

 Adobe Premiere Proの「文字起こしベースの編集」と「自動トーンマッピング」、Adobe After Effectsの「プロパティパネル」(すべてベータ版)を含めたアドビの最新アップデートは、4月15日から19日までラスベガスで開催される2023 NAB Showのブース#N2438で展示し、2023年5月から一般提供を開始する。