アドビ、クリエイターの祭典であるAdobe MAX 2023において、「Adobe GenStudio」を公開した。これは、生成AIテクノロジーAdobe Fireflyを中核にAdobe Creative Cloud、Adobe Express 、Adobe Experience Cloudを統合し、急増するコンテンツ需要への対応を支援するエンドツーエンドの新しい企業向けソリューション。新たに発表するカスタマイズ機能とAPIにより、企業はマーケティングおよび制作のワークフローにおいてブランドイメージに沿ったコンテンツのスケーラブルな展開が可能になる。コンテンツサプライチェーン(効果的な顧客体験を促進するコンテンツを制作・配信するプロセス)の最適化により、企業は顧客ロイヤルティの強化につながるパーソナライゼーションへの取り組みを拡大し、ビジネスを成長させることができる。
アドビのデジタルエクスペリエンスビジネス担当シニア バイス プレジデントであるアミット アフジャ(Amit Ahuja)氏は、次のように述べている。「顧客体験の専門家の3分の2近くが、今後2年間でコンテンツ需要が5倍に増加すると予想しており、この需要が減速する兆しはありません。Adobe GenStudioは、これまで数時間から数日かかっていた作業を数分に短縮し、品質やブランディングの一貫性を維持したままスピードを提供します」
Adobe GenStudioは、コンテンツの企画から制作、配信までのプロセスを包括的にカバーする。担当者はデジタルアセット管理システムであるAdobe Experience Manager Assetsの操作環境を離れることなく、Adobe ExpressとAdobe Fireflyを使って商用利用にも安心なデジタルコンテンツを即座に生成し、編集することができる。
また、部門をまたぐシームレスなコラボレーションを実現するため、Adobe Workfront、Frame.io 、Adobe Creative Cloud、Adobe Experience Managerのワークフローの統合およびコンテンツの再利用により、ビジネス要件に影響を与えずに、品質やブランドの一貫性を損なうことなく手間と時間、高額なコストのかかるプロセスを加速し、最適化する。
さらに、Adobe Analyticsでコンテンツパフォーマンスのインサイトを得ることで、担当者は、どのコンテンツが反響を呼んでいるかをリアルタイムで理解し、改善を繰り返すことができる。アドビはAdobe GenStudioを活用した自社のコンテンツサプライチェーンを加速し、デジタルマーケティングと顧客エンゲージメントを強化し、ソーシャルメディアキャンペーンの制作時間を3分の1に短縮した。
Adobe GenStudioがもたらす生成AIの力
Adobe GenStudioは生成AIの力をユニークな形で利用可能にする。ネイティブに統合されたAdobe Fireflyは、商用的にも安心なコンテンツ生成を実現。企業はあらゆるチャネルにおいて企画からコンテンツ配信までを迅速に行い、優れた顧客体験を提供することができる。Adobe GenStudioには下記が含まれる。
- 安心な商用利用: Adobe Fireflyを活用することで、商用利用を想定した安心なコンテンツ生成が可能になる。
- カスタムモデル: アドビは顧客と協力し、独自のアセットやブランド固有のコンテンツを使用してモデルをカスタマイズできるよう支援する。
- 拡張性:ワークフローと自動化を強化するために、さまざまなプラットフォームからFirefly APIへのアクセス可能にする。
- 統合ワークフロー: AIが生成したコンテンツの編集、コラボレーション、アクティベーションをシームレスに実現する。
- コンテンツのインサイト: 各チャネルにおけるコンテンツのパフォーマンスについて詳細かつ迅速な分析を提供する。
Adobe Fireflyモデルのカスタマイズと新しい自動化機能
コーポレートカラーからマスコットキャラクターまで、ブランドアイデンティティは企業にとって最も価値のある資産のひとつ。アドビは、企業がブランド独自のスタイル、キャラクター、オブジェクトを使用して、アドビのクリエイティブな生成AIモデルファミリーであるAdobe Fireflyをカスタマイズし、自社のニーズに合わせられるようにする一連の新機能を発表する。
たとえば、10~20枚の画像があれば、Adobe Fireflyモデルを即座にカスタマイズし、組織内の誰もが商用的にも安心でブランドイメージに沿ったコンテンツを生成できるようになる。さらに、厳格なガバナンスとセキュリティ管理により、ブランドのコンテンツ、データ、ワークフローの社外への流出を防ぐ。
また、カスタマイズしたAdobe FireflyモデルをAdobe Creative Cloudのワークフローに完全に統合し、制作を自動化できるようにするAPIをベースとした自動化機能も発表。この統合により、企業はコンテンツサプライチェーンの最適化と飛躍的なスピードアップができるだけでなく、Adobe Experience Cloudと連携して顧客データを活用することにより、パーソナライズされた顧客体験を大規模に展開することができる。たとえば、特定の地域やマーケティングチャネルを対象としたキャンペーンを実施する際、もっとも費用対効果の高い方法で、ブランドイメージに沿ったコンテンツを迅速に制作することができるようになる。
Adobe GenStudioを自社のデジタルマーケティングに活用
アドビは、Adobe GenStudioを自社のデジタルマーケティングやAdobe MAXのようなイベント制作に活用し、コンテンツサプライチェーンを加速している。たとえば、Adobe Photoshopの生成塗りつぶしを使用して、InstagramやTikTokなどのソーシャルメディアキャンペーン用コンテンツの制作時間を33%短縮すると同時に、Adobe Fireflyで生成した画像と生成塗りつぶしにより、アドビのソーシャルメディアにおけるコンテンツ量を倍増している。アドビは、生成AIをEメールマーケティングにも活用しており、さまざまな画像バリエーションをAdobe Fireflyで自動的に生成してA/Bテストにかけることにより、平均クリック率を12%向上させた。Adobe MAXでは、最大のハイライトとなるメインステージでの基調講演で使われる画像や映像の構想や強化にAdobe Photoshopの生成塗りつぶしが活用されている。