ライカ、「ライカM11-P」発売 撮影から公開までの過程で写真の真正性をシームレスに担保できる機能搭載

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2023/10/30 06:30

 ライカカメラ社(以下、ライカ)のM型カメラは1954年の登場以来、出来事の真っ只中で状況をリアルかつ鮮明に捉えるルポルタージュに最適なカメラとして名を馳せてきた。直感的な操作性を誇り、目立たずに撮影できる独自の撮影スタイルは、紛争地帯で活動するフォトジャーナリストからとくに高く評価されてきた。

 そして現在、デジタル技術が普及した結果、写真を含むさまざまなコンテンツに対してあとから手を加えることが容易にできるようになった。加工や偽造されたデジタルコンテンツが出回ったことで、その信憑性に疑問の目が向けられることも起きるようになり、コンテンツがオリジナルであることを証明することの難しさも浮き彫りになった。これは今日写真による報道の根底を揺るがす重大な問題となっている。

 ライカはこの問題へもパイオニア精神とともに取り組み、M型カメラの新製品「ライカM11-P」を発売する。デジタル画像の真正性を保護するために、撮影時にコンテンツクレデンシャルを添付してメタデータを保存するカメラ。コンテンツクレデンシャルは、業界標準としてさまざまな種類のコンテンツに対して広く採用されており、オンライン上でコンテンツの信頼性と透明性を高める基盤として活用されている。写真家が撮影した作品には大きな価値があり、その信頼性を担保するためには来歴情報の記録が効果的であると同社は考えている。そうしたライカの意向が、今回「ライカM11-P」に搭載したこの機能に反映されている。

 「ライカM11-P」には、コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)が提供するオープンソース規格にもとづく機能として、画像に安全なメタデータを付与する機能が搭載されている。この機能により、画像データの生成と編集の透明性をさらに高めることが可能になる。撮影者の氏名や撮影日、使用したカメラの機種のほか、どのような編集が行われたかの履歴などを安全な方法で記録できるため、画像の出所と来歴を把握できるようになる。また、CAI準拠の証明書に裏付けされたデジタル署名も画像に付与する。画像の真正性は、CAIが提供する無償のオープンソースのツールや、ウェブサイト「Verify」でいつでも確認できる。

 この機能で採用している技術はカメラ内の特殊なハードウェアを通じて画像の真正性を証明できるようにするもので、ドイツ連邦印刷局発行のデジタル証明書を保存するための特殊なチップセットも含まれている。この機能により、画像の来歴を確実に証明できる仕組みを実現した。ライカはこのように、アドビ社主導のもとでメディア企業やテクノロジー企業、NGO、学術機関など世界中の約2,000の企業・団体が参画してコンテンツクレデンシャルの採用と普及を目指すCAIと協働しながら、デジタルコンテンツの保護において新たな基準を打ち立てようと取り組んでいる。

 ライカの社主であり監査役会議長でもあるアンドレアス・カウフマン博士は次のように語っている。「ライカのカメラはこれまで常に、歴史に残る重要な瞬間を世界中で目撃・記録してきました。ところが、写真の世界にデジタル化の波が到来した結果、ビジュアルコンテンツの真正性を確認することは益々困難になり、どのようにしてそれを確認するかが一層重要になっています。そこで今回、画像の真正性を示すことができる技術をカメラに取り入れ、デジタルコンテンツの信頼性をここでもう一度高めるとともに、世界で起きる重大な出来事を記録するツールとしてのライカのカメラの信頼度を改めて向上させていくことにしました」

 アドビ社のコンテンツ認証イニシアチブのアドボカシー&教育部門責任者であるサンティアゴ・ライオン氏は次のように語る。

「ライカがフラッグシップ機である『ライカM11-P』に世界初の試みとしてコンテンツクレデンシャル機能を取り入れたことは、非常に喜ばしいことだと思います。これはCAIにとっても、フォトジャーナリズムの未来にとってもきわめて大きなマイルストーンです。これを契機にフォトジャーナリストやクリエイターに対して、デジタル著作権の主張、虚偽の情報の拡散防止、作品に対する真正性の担保と信頼性の確保の面で、非常に効果的な新しい手段を提供できるようになるでしょう。それと同時に、コンテンツクレデンシャルのさらなる普及にも期待が持てます」

 「ライカM11-P」が搭載したこの機能は「Leica Content Credentials(ライカコンテンツクレデンシャル)」と呼ばれる。この機能はメニューから設定することができ、オンにすると液晶モニター上に「Content Credential」のロゴが表示され、撮影するたびに信頼性を確保する署名が特殊なアルゴリズムによって画像に付与されるようになる。

 また、撮影したカメラの機種、メーカー、画像の撮影情報も付与できる。これらの情報はあとから改変できない一方で、CAIが無償で提供するオープンソースのツールでいつでも確認できるため、画像の真正性を担保する証明として利用可能。画像が撮影時のオリジナルなのか、編集されたものなのかを把握できるほか、どのような編集が行われたかの履歴も確認できる。このようにして、撮影者は撮影から公開までのすべての過程において写真の真正性を示すことが可能となる。