大日本印刷(以下、DNP)は、三重県桑名市と、「誰ひとり取り残さない、デジタル社会の実現」に向けた連携協定を締結した。両者はこの協定にもとづき、「電子申請手続きの総合窓口」「各種相談業務」「市民交流の場」をインターネット上の仮想空間・メタバースで提供する「メタバース役所」の実証事業を2024年2月26日(月)に開始する。
取り組みの背景
桑名市は、効率的・効果的に行政を運営する「スマート自治体」への転換に向けて、オンライン申請の拡充やAI(人工知能)、RPA(Robotic Process Automation)の積極的な業務活用、メタバースを使った花火大会、婚活イベントなどを行っている。また、DNPは、リアルとバーチャルの空間を融合する「XR(Extended Reality)」の技術を活かし、新しい体験と経済圏を創出する「XRコミュニケーション事業」を2021年から展開している。
今回、両者は、市民の利便性向上や職員の業務効率の向上を目的に、仮想空間・メタバースで電子申請手続きの総合案内・各種相談・交流会が行える「メタバース役所」を構築して、その効果を検証する実証事業を行う。
同協定の内容
DNPが持つ「バーチャル空間の構築・運営のノウハウ」「さまざまな企業・自治体の業務プロセスを改善するBPO(Business Process Outsourcing)・BPR(Business Process Re-engineering)の知見」「安全・安心を担保する認証やセキュリティ技術」を活かし、次の取り組みを通じて、桑名市の「誰ひとり取り残さない、デジタル社会の実現」に貢献していく。
- リアルとバーチャルを掛け合わせた地域への新しい取り組み
- メタバース・AR・MRなどのXR技術を含む各種テクノロジーを活用した自治体DXの推進と市民サービスの向上
実証事業の概要とおもな取り組み
桑名市の総合窓口を模した「メタバース役所」では、市民が直接市役所などに行くことなく、自宅や遠隔地から電子申請手続きの問い合わせや各種相談、市民交流会などができる。
この仕組みを活用して、行政が発信する情報やオンライン申請手続きの活用を促進し、移動手段や時間の制約を取り除くことで相談や交流会への参加をさらに促進することを目的とした実証事業を2月26日(月)~3月29日(金)におこなう。
電子申請手続きの総合窓口
各種申請手続きの電子化をさらに推進するため、今回、「メタバース役所」内に電子申請手続きの総合窓口を設置し、画面上で実際の申請画面を見ながら音声で記入方法や操作方法を案内することで、市民が迷うことなく電子申請を完結できるように支援する。
各種相談業務
桑名市では、「生活」「育児」「教育」「介護」「母子・父子のひとり親」「年金」「税務」など、さまざまな分野の相談を対面や電話でおこなっている。「メタバース役所」では、物理的・心理的・身体的な制約を受けずに、こうした相談したい市民と相談員のふたりだけで会話できる機密性が保たれた空間を提供。メタバース内で自身の分身となるキャラクター(アバター)を利用することで匿名性が確保されるため、市民がより相談しやすくなるようにして、課題の早期発見や解決につなげていく狙い。
市民交流の場
多くの自治体では、市民同士や市民と行政とのコミュニティー形成の一環で交流会などを開催しているが、リアルな交流会は物理的な場所の確保や設営準備などの負荷が高く、実施の時間や回数が限られるなどの制約があった。メタバースでの交流会は、これらの制約を受けずに、市民がどこにいても、また市役所の開庁時間以外にも、参加可能にすることで、より多くの市民の参加が期待できる。心理的なハードルを下げて、参加しやすくなることで活発な交流を促し、市政への参画にもつなげる。
今後、DNPは同実証事業を通じて桑名市のDXを支援するとともに、さまざまな地域でも同様のサービスを展開することで、各地域の課題解決を支援していく。また、XR技術を活用した自治体業務の支援や住民向けサービスなどのラインアップ拡充や高度化を推進していく。