富士通は、ビジネスや社会の未来ビジョンを提言する「Fujitsu Technology and Service Vision 2025」を策定し発行した。「Fujitsu Technology and Service Vision 2025」では、人とAIの協働によるクロスインダストリーのエコシステムを活用することで、企業がビジネスの成長を促進しながら、複雑な社会課題に対処し、環境、経済、ウェルビーイングにネットポジティブな価値を創造する方法を示す。
同社は90年にわたるイノベーションの歴史を基盤に、「デジタルサービスによってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる」という2030年までのビジョンを定め、マテリアリティの必要不可欠な貢献分野として「地球環境問題の解決」「デジタル社会の発展」「人々のウェルビーイング向上」に取り組んでいる。
今後、同社は変革のパートナーとして、テクノロジーからコンサルティング、サービス、モダナイゼーションまで、あらゆる領域で顧客の企業変革を支援していく。

背景
ビジネスや社会は現在、不安定な政治・経済情勢、地政学的リスク、気候変動などが複雑に絡み合う、かつてないほど不確実な状況に直面している。同時に、目覚ましい進化を遂げるAIは、ビジネスの生産性向上にとどまらない、産業革命以来の大変革をもたらす可能性を秘める一方、AIが生み出す偽情報やバイアスによる社会の混乱、電力消費量の増大といった側面も顕在化している。
「Fujitsu Technology and Service Vision 2025」の概要
1. ビジネスの未来:ネットポジティブを実現する新たな価値創造のエコシステム
同社が2025年2月に15か国800人のCxOを対象とした調査では、81%のビジネスリーダーが、自社単独のビジネスから、エコシステム型のビジネスに移行するだろうと回答。また、79%のビジネスリーダーが2030年までに全ての従業員がAIの支援を受けて業務を遂行するようになるだろうと回答した。
AIはデータにもとづいて新たなつながりやパターンを発見し、人の可能性も引き出す。この価値創造は多様なプレイヤーによって形成されるエコシステムを通じて拡大し、複雑な社会課題への対応を加速させる。たとえばモビリティの分野では、自動運転や共同配送・輸送により輸送効率を向上させ、経済や環境にプラスの価値を生み出す。このように人とAIが中核となって価値を創出し、クロスインダストリーのパートナーとの連携を通じてネットポジティブを実現する新しい価値創造エコシステムを「Regenerative ecosystems(再生型のエコシステム)」と呼び、複雑で困難な社会課題の解決に結びつけていく。

2. テクノロジービジョン:テクノロジーでビジネスや社会を変革
AIが急激な進化を遂げ、新たなブレイクスルーが次々と生み出されている。目標達成に向けて人とあらゆるデータや知識をつないだネットワークを作り、自律的に行動するAIエージェントは、ビジネスのあらゆる領域に組み込まれ、企業の戦略やビジネスプロセスを変化させている。また、業界を越えてさまざまな企業が相互に協力するマルチAIエージェントを介してつながり、エコシステムを構築することで、人・ビジネス・社会の以下の3つの変革を推進し、社会課題への対応が加速するとの考え。
人の可能性を解き放つ
目標に向かって自律的に活動するAIエージェントと協調して、人はより創造的な業務に取り組み、創造性や生産性を高めていく。
ビジネスをリ・デザインする
業務に特化したAIエージェントが連携して、ビジネス環境や市場変化に対応した戦略策定や製品・サービスを創出。
ネットポジティブに貢献する
マルチAIエージェントを介して、プレイヤーがエコシステム上でデータやAIを共有し、環境や社会への価値や新たなビジネスの創出を実現。
同社は、AIを中心とする5つの重点技術領域に自社の研究開発を集中し、人・ビジネス・社会における価値創造に貢献していく。
3. 変革のためのアクション:テクノロジーを活用して、クロスインダストリーの取り組みを加速
同社は顧客の変革を支援するパートナーとして、以下3つの領域において、AIをはじめとしたテクノロジーを活用する、クロスインダストリーの取り組みを「Fujitsu Uvance」を中心に支援する。
人とAIの協調で生産性を向上
AI導入の計画策定から導入・活用まで最適なテクノロジーやサービスを提供。
AIで組織内の意思決定を高度化
組織内に散在するデータを統合し、AIを組み込むことで企業の意思決定を高度化する「Decision intelligence」でAI駆動型企業への変革を実現
エコシステムで社会課題解決を促進
先進的なトラスト技術を用いて業界横断でのデータ連携実現に貢献。また、CO2削減策の効果を試算するなどの実践においてもリード。
さらに同社は、この3つの領域での価値創造に貢献するために、自社のコンサルティングビジネス、モダナイゼーションサービス、自社の経営基盤の強化に取り組み、エンド・ツー・エンドで顧客のビジネスの変革の支援に取り組んでいく。