なぜいまコーポレート・アイデンティティを活用すべきなのか
今回は「Designship2020」でもお話ししたコーポレート・アイデンティティの活用をテーマとしたい。コーポレート・アイデンティティは人によって活用法や捉えかたが異なる部分があると思うので、私なりに整理した内容でお話しできればと思う。
2020年は新型コロナという未知のウイルスに襲われ、多くの会社や個人が想像もしていなかった事態に直面した。かくいう私もそのひとりで、日々どのように対応していくべきかと頭を抱えている。
こんな状況こそ人々が協力しあい、助け合って、事態を乗り越えられたらいいのだが、そのために自分にできることはないだろうか、今必要なことは何だろうかと考えていた。そして、やはり自分はデザインの力を活かして何かをなすべきだという答えに行き着いたのだ。
ここでいうデザインの力とは、抽象を具体に落とす力、「なぜ」から問いを始めそれを答えに変えていく力、見えないものを形する力である。
それらの力を活かし前進させることができるもの。それがコーポレート・アイデンティティの活用だと私は考えた。会社の方向性を決め、そこにいる人々が何を考え、何を柱に進んでいくべきなのか。指針になるものを作り、それを事業や組織、コミュニケーションに活かすことができたら、全員がひとつになって前進できるはずだと。
ではまず、コーポレート・アイデンティティという言葉を調べてみよう。
コーポレート・アイデンティティとは
コーポレート・アイデンティティ(英: corporate identity 略称: CI)とは、企業文化を構築し特性や独自性を統一されたイメージやデザイン、またわかりやすいメッセージで発信し社会と共有することで存在価値を高めていく企業戦略のひとつ。
企業のあるべき姿を体系的に整理し、それに基づいて自社の文化や特性・独自性などをイメージ、デザイン、メッセージとして発信することで会社の存在価値を高めようとするビジネス手法である。
主に社会における企業イメージの構築を行うために計画・実行されるが、企業内部においても価値の共有による意識の向上、また品質や生産性、就職希望者の増加などの効果が期待できる。
この文章からもわかるように、コーポレート・アイデンティティ(以降、CI)には企業活動を前進させるさまざまな可能性がある。このポテンシャルを引き出し生かすことで、未来を引き寄せられるのではないかと思っている。
そもそもCIは、各企業が自社の理念や特性、見えかたや行動をひとつにまとめ、会社としての力を強めることで、より良い会社や社会を作る企業戦略のことを指す。CIには、いくつかの分解の仕方があるが、今回は社内での使いかたについて話そう。
まずおさえておきたいのは、CIは以下の3要素から構成されているということだ。
- MI マインド・アイデンティティ(理念の統一)
- VI ビジュアル・アイデンティティ(視覚の統一)
- BI ビヘイビア・アイデンティティ(行動の統一)
私は、社内でこれら3つを統一してから、社外へ向けての活動を進めるべきだと考えている。1つひとつ説明していこう。
1.MI マインド・アイデンティティ(理念の統一)
マインド・アイデンティティ(以降、MI)とは「理念の統一」つまり企業が目指す方向性や理想、社会への約束など、会社の根幹となる考え方。代表的な例としては企業理念、ミッション、ビジョンなどが挙げられる。
私自身、過去にCDOを経験した会社3社で、MIのフレームから具体的なミッションやコアバリューなどを作り直した際、MIはすべての起点となるためもっとも制作に時間をかけた。
代表やメンバーからだけではなく、社外からどんな会社として見えているかを考え、それらをキーワードとして抽出した。何度も壊しては作り上げていくこの作業は、非常に時間と労力がかかるものであったが、この作業を怠ってはならない。メンバーから社外にまで会社の指針をイメージさせ、かつ事業戦略や組織戦略、コミュニケーション戦略といったさまざまな戦略に落としていくため、非常に重要な要素である。