「自分の心と向き合うこと」 不確かな時代に必要なマインドセットとアートの関係とは

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2021/03/18 08:00

 本連載のテーマは「ビジネス×アート」。コンサルティング会社に勤務するかたわら、アートの作品制作に関するワークショップへの参加、イベント運営などを積極的に行う奥田さんとともに、アートとの関わりを探ります。前回に続き第10回では、変化に対応するためのマインドセットについて考えていきます。

 第8回、第9回では、それぞれ変化へ対応する力について考えた。COVID-19が完全に終息しないなか、未来は新しい方向に動いている。その変化に対し、創造と破壊を繰り返すアーティストのように向き合い、行動することで道が切り開かれるのだろう。今回は、そのアクションのためのマインドに焦点をあてていきたい。

失った自分の時間をアートで取り戻す

 COVID-19によりDXが加速し、これまで以上にリモートワークが普及している。場所に縛られない働きかたも選びやすくなり、効率的に仕事ができるようになってきている。仕事において、物理的な距離感が関係のないシーンでは、オンラインでつながっていれば仕事は成立する。

 一方で、どこでもつながっている状況は窮屈な側面もある。一日中、休む間もなくオンラインミーティングやZoom商談をしている人もいるだろう。勤怠管理のため、テレワーク時は出社時よりもより細かい報告やコミュニケーションが求められるシーンも多いかもしれない。

 つながっているのは、働く時間だけではない。いまやエンターテイメントは、隙間時間の奪い合いとなっている。NetflixやAmazon Primeのような動画サービスは、ついつい観てしまうし、ClubhouseやVoicyのような音声メディアは、作業用BGMのような感覚で聞いていたりもする。

 クリエイターやビジネスパーソンは、外からの時間で埋められていて、無意識のうちに自分の時間を失っているようにも思う。自分のミッション、目標を設定する時間、それを振り返る時間をどれだけ確保できているだろうか。目標設定や振り返りは、自分のアクションを良い方向に導くために必要なことである。

 そのため、「不安になる」、「自信がなくなる」、「嫉妬心を抱く」などの気持ちは、自分を見失い、周囲に惑わさせている可能性が高い。努力と結果が比例しないと感じるのも、このケースが多いだろう。

 これを克服するために大切なのは、まず自分の気持ちがどこに向いているのかを自身で把握することだ。マインドフルネスやアンガーマネジメントなどの手法は、意識を自分に向けることから始まるのである。

 デッサンや作品を制作するプロセスは、私にとって自分の時間を確保する大切な時間だ。制作の過程で、その対象物を自分自身がどのように感じているのかを自分の心に問い、内省するということを繰り返している。

 作品制作やデッサンのハードルが高かったとしたら、美術館や展示会でアート作品を鑑賞することをおすすめしたい。どの作品に自分は魅了され、その作品を通して自分自身は何を感じているのか――。そういった視点で、アートと触れ合う時間の中で、作品と自身との対話を楽しんでほしい。

負けない心をつくるための複数の選択肢

 美しい作品は人の心を癒してくれる。創造性の高い作品は新しい活力を与えてくれる。しかしもしかしたら、アートはきっかけを与えてくれるだけで、心を癒すのは自分自身で、次に進む活力を生み出しているのも自分なのかもしれない。

2017年に著者がドバイで撮影したもの。
2017年に著者がドバイで撮影したもの。

 人の心はロボットではない。常に平穏であることはありえない。楽しい時もあれば、悲しく、苦しい時もある。当然ながら仕事やビジネスのなかでも、精神的な負担の波は存在する。その波を上手く乗り切れるかどうかが、仕事における幸福度を左右するようにも思う。

 その中でも嫉妬心は根が深い。昨年2020年から大ヒットしている漫画『鬼滅の刃』。ここで登場する鬼の多くは、人間のころに過剰な妬みを抱き、その嫉妬心に飲み込まれて鬼になってしまった。

 ビジネスでも、上司、同僚、部下との人間関係において、嫉妬や妬みは少なからず存在する。それを糧に飛躍する人もいれば、足の引っ張り合いになることもある。後者のように心が鬼に毒されぬよう、人間としてのマインドを保つ必要があるだろう。

 そのために必要なのは前述したとおり、意識を自分に向けて、自身と向き合うこと。そこで重要になるのは、複数の心の声を自覚することではないだろうか。そして、その声を状況に応じて、柔軟に聞き分ける――。

 ひとつの選択肢しかない場合には、その選択肢がなくなった途端に自分のマインドが保てなくなる。しかし複数の選択肢をもっていれば、前向きなリスクテイクができるケースも増えるはずだ。

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