はじめまして。株式会社D2C R クリエイティブプランナーの上野です。
これまでの連載ではTwitterやTikTokなど、媒体に焦点を当ててクリエイティブを考えていきました。第3回となる今回の切り口はターゲットです。若年層をターゲットとするとき、どのようなクリエイティブが効果的かについてお話していきます。
若年層の傾向とは
若年層にどんなクリエイティブを当てるべきかをお話する前に、まずは若者の思考や行動の傾向について見ていきましょう。
流行の最先端かつ若年層の実態を掴みやすいTikTokの調査資料『TikTokユーザー白書第3弾』や外部メディアを参考に3つピックアップしました。
- 動画コンテンツは倍速や、“ながら”で視聴するのが当たり前/コスパ思考が強い
- 飾ったものよりも、カジュアルなコンテンツのほうが受け入れられる
- 興味範囲が広く好奇心が強い/自分が知らない未知の分野のコンテンツにも関心がある
これらの結果をみていると、商品やコンテンツなど何かのジャッジにはシビアで、毎日大量の情報に触れている傾向があるように思います。
そのような若年層向けのクリエイティブはどのようなものが効果的なのでしょうか。スルーされず、しっかり反応してもらうためのクリエイティブについて、ふたつのヒントをベースにお話していきます。
若年層ターゲット攻略のカギ
クオリティよりも“共感”がキーワード
まず、若年層をターゲットとしたときに効果改善に有効な手段は、クリエイティブのクオリティを追求していくだけとは限りません。とくに重視すべきポイントは“共感”できるかどうかです。
ここで言う「クオリティの高さ」は、デザインが作りこまれていたり、動画であれば文字の動きが細かくつけられていたり、プロのクリエイターが制作したものであることがひと目でわかるようなクリエイティブのことです。
一方で、クオリティはそこまで高くなくても、共感度の高いクリエイティブをつくることは可能です。
共感を強める手法としてもっともわかりやすいのが、UGC風の演出です。一般ユーザーによってつくられたコンテンツを意味するUGC(User Generated Content)。なぜそういった演出が必要なのかというと、若年層はとくに、ひとつのコンテンツを見るかどうかの判断が非常に早く、カロリーを使うことを好まない傾向がうかがえるため、開始序盤で「見ても良さそう」と思ってもらうことが非常に重要だからです。
たとえばInstagramのストーリーズやTikTokで見かける縦長動画をイメージし、自分で撮影したような写真に自分が体験したような口調をテキストにすると、UGC風の演出ができると思います。
一方で、クオリティが高い右側のクリエイティブは、現実では作り得ないドリンクの見せかたで目をひきますが、左側のクリエイティブよりも共感はしにくいのではないでしょうか。
もうひとつクリエイティブの例を用意しました。次の画像は、コスメの動画広告を想定したものです。
「本当にこんな仕上がりなのかな?」「使ってみないとわからない」と思われるコスメに対し、豪華な演出を入れずに自分の素肌で発色を見せたり、美容系YouTuberのようにメイクの方法を伝える動画を入れることで、共感を生みやすくする狙いです。
TikTokユーザー白書第3弾のなかでも、「紹介された商品やサービスを購入したくなるのはどんな動画ですか?」という質問において「飾った非日常な動画」と答えた人が19.4%に対して、「飾らず日常的な動画」という回答は80.6%にのぼりました。
このようにデザインや写真のレタッチ・エフェクトなどを作りこんだクリエイティブよりも、ユーザーが作ったようなシンプルで共感しやすいクリエイティブの方が、効果が良いケースは多くあります。
また、媒体の中でも相性の良い面と、それに合わせたUGC風デザインをかけ合わせることができればなお効果的です。配信面に馴染むクリエイティブを制作するためにも、やはり日頃からSNSで投稿の流行はチェックしておくことは必要でしょう。
たとえば最近TikTokで多く見かけるようになったAI音声のナレーション付きのUGCは、2020年には見られなかった投稿だと思います(TikTokコンテンツをそのままInstagramのリールに流用する傾向もあるので、Instagramでも一般的になるかもしれません)。SNSの流行は非常に速いスピードで移り変わっていくので、根気強くこまめに追っていくことが大切です。