2000年代後半の社会的に大きな影響を与えたできごと
2000年代後半、マーケティング界隈における象徴的なできごとと言えば、モバイル端末(スマートフォンやタブレット)とソーシャルメディアの普及・浸透です。2008年には日本でもiPhoneが発売され、日本語版のTwitter・Facebookもリリースされました。
それらのできごとは、私たちの生活における「接続性」を飛躍的に向上させ、世界中の人々があらゆる障壁なしに関係を築けるようになりました。ソーシャルメディアは社会的な一体感を少しずつ醸成していき、人々にコミュニティへの帰属意識を与えました。
膨大な情報の「集合知」により変化する消費者の購買活動
このような接続性が増したことによって、市場の姿も大きく変化していきました。消費者は、SNSをはじめとしたさまざまなプラットフォームに自らの経験やレビューを投稿することで、商品やサービスの感想を広く伝えたり、それらの情報を簡単に得たりすることが可能となりました。たとえば、店頭にいながらモバイル端末を利用して価格比較をしたり、レビューを見て商品やサービスの評判をチェックするなど、膨大な情報の「集合知」を利用し、好みに近い購買決定がよりスムーズにできるようになったのです。
消費者同士は、常時接続しながら積極的に情報を共有し合うようになっていき、かつて広告やマーケティングキャンペーン、専門家の意見に影響を受けていた消費者のほとんどは、企業の発信する情報よりもFファクター(friends=友達、families=家族、Facebook fans=フェイスブックのつながり、Twitter Followers=ツイッターのフォロワー)の話を重視し、ソーシャルメディアにおける見知らぬ人々のアドバイスを信頼するようになったのです。
企業マーケティングで目指すべきは「消費者を“推奨”段階まで導くこと」に
高い接続性を得たデジタル時代の消費者は、販売のチャネルにはこだわりを持たず、オンラインとオフラインをシームレスに行き来できる経験を期待するようになりました。この動きを背景に、企業側の姿勢にもアップデートが必要となりました。
具体的には、消費者のカスタマージャーニーおよび、何通りにも想定されるタッチポイントについて細部まで理解し、あらゆるプロセスで消費者を惹きつける必要があること。さらに、認知から購入までのプロセスはもちろん、購入後も含め「推奨行動」を起こしてもらえる動きが重要であること。それは「いち消費者」から、「商品やサービスなどの魅力を他者に伝えてくれる伝道者」になってもらうための関係づくりを行うことを意味します。
商品やサービスを使用する場面ではもちろん、アフターフォローを通じて消費者と長期的なエンゲージメントを築き、それらを利用する経験全体が良質で忘れがたいものになるよう、努力を重ねる。そのようなブランドの姿勢にロイヤリティを感じた顧客がファンとなり、自発的に感動を他者へ伝えていく。こういった推奨行動を自らしてもらえるような消費者との関係づくりこそが、企業のマーケティング活動で行っていくべきこととなりました。