3つを満たせる真ん中を狙う アプリ開発でデザイナーが担うべき役割とは
2014年に新卒でヤフーに入社した細見さんが最初に携わったのは、Android向けのランチャーアプリ。AndroidはiOSと異なり、ホーム画面や壁紙を着せ替えることができ、そのデザインを担っていた。3年めからは、現職でもあるYahoo! JAPANアプリで、UI/UX面を担当している。これらの経歴からもわかるように、入社以降、一貫してアプリのUI/UX設計に従事してきた細見さんに、アプリ開発におけるデザイナーの役割についてまずは聞いてみた。
「ここ最近自分の役割として考えているのは、ユーザーリサーチやデータ分析をふまえたユーザーの体験設計と、UIで事業を可視化する部分のふたつです。後者でとくに心がけているのは、ビジネス・開発・デザインの3つすべてを満たせる“真ん中”を狙うということ。ウェブサイトの開発だと、自分でUIを設計し、デザインをし、実装をするところまでひとりでできるのですが、アプリだとそうはいきません。エンジニアと一緒にプロジェクトを進めることが必要です。だからこそアプリにおいて、『開発にも実現性があること』は欠かせない要素のひとつです。その視点を踏まえながら、ビジネス的な指標も達成することができ、かつ、ユーザーが使いやすいデザインを作る。難しい部分も多いのですが、その3つをいかにバランスよく実現するかということを、デザイナーは考えていかなければいけないと思っています」
そう語る細見さんが、プロジェクトに取りかかるときの思考をたどってみよう。最初の段階では、あまりエンジニアリングの実現性を考えることはせず、まずはビジネスにおける目的や数字の目標をふまえ、それに向かって進むためのユーザー体験とUIデザインを考えていくのだという。インタラクション面では実装が難しいがもっとも理想的な「ドリーム案」から、いちばん工数は少ないが高い効果が見込めそうな「MVP案」など、開発の工数などもふまえながら複数の案を出す。
「ユーザーが心地良いか、親指から届きやすいかなど、デザイナーとして守るべき部分を残しながらいくつかデザインを提示し、チームで決めていきます。私がいつも最初にメンバーにオススメするのはドリーム案。アプリ全体でのバランスや工数を考えると、あまり採用されることはないんですけどね(笑)」