[現地レポート]「Adobe MAX 2019」キーノートを振り返る、アドビが見据える“次”とは

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2019/11/27 08:00

 アドビはアメリカ時間の11月4日から数日間に渡り、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスにてクリエイティブイベント「Adobe MAX 2019」を開催。オープニングの基調講演では、同社が提供するサブスクプリプション型サービス「Adobe Creative Cloud」に関するソフトウェア群のアップデートについて説明した。なお、本稿内の話者のコメントは、筆者による意訳を含む。

ナラヤン氏「Creativityは誰にとっても重要で基礎的なスキル」

 同イベントには、62ヵ国以上の国と地域から15,000人以上のクリエーターが参加したという。基調講演では、アドビのシャンタヌ・ナラヤンCEOが登壇し、同社のミッションや全体のテーマとして掲げられた「Creativity For All」(すべての人に創る力を)について説明した。

「世界をデジタル体験で変えていきたい――という我々のミッションはシンプルかつパワフルです。我々はこのミッションとともに30年間以上突き進んできました。(中略)コミュニケーションを取りたいという生来の欲望に、デジタルの力が加わることによって、私たちはこれまでにないほど豊かなストーリーテリングが可能になります。これはアートや文化の基礎であり、教育などにおいても重要な事柄です。経済的な成長やブレークスルーも促します。デザイナーやエンジニア、学生や事業主といった立場を問わず、いまや“Creativity(創造性)”は誰にとっても重要で基礎的なスキルです」

Adobe Inc. 会長、社長兼CEO(最高経営責任者)シャンタヌ ナラヤン氏

Adobe Inc. 会長/社長兼CEO(最高経営責任者)シャンタヌ・ナラヤン氏

3つの軸で発表されたアップデートの内容

 続いて、Creative Cloud担当エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)であるスコット・ベルスキー氏が登壇。発表内容について、主に3つのテーマがあることを語った。

  1. Faster, More Powerful, More Reliable(より速くパワフルかつ高い信頼性)
  2. Create Anywhere, Anytime, with Anyone(時と場所を問わない創造とあらゆる人との協創)
  3. Explore New Frontiers(未踏のフロンティアへの挑戦)
Adobe Inc. Creative Cloud担当 エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)スコット・ベルスキー氏
Adobe Inc. Creative Cloud担当 エグゼクティブバイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)スコット・ベルスキー氏

 この3つのポイントに沿う形で各製品の担当プレゼンターによるデモンストレーションなどが行われた。

 1は、主に既存製品の機能強化を指している。同社のAI「Adobe Sensei」を活用して、単純作業を自動化するというアプローチなどはこれに当たる。

 たとえば、PC向けの「Adobe Photoshop」では、オブジェクトを自在に変形できる「ワープ」機能のアップデートが強化され、設置するアンカーの数をカスタマイズできるようになる。また、マウスのドラッグ操作で四角く囲むように選択すると、ほかのオブジェクトにかぶっていたとしても、その境界線が自動で判断されるという「オブジェクト選択」が追加された。

Photoshopのオブジェクト選択
Photoshopのオブジェクト選択

東京にて10月末に行われたAdobe MAX 2019記者説明会より、製品担当のアドビ・田中玲子さんによるPhotoshop デスクトップ版のオブジェクト選択ツールのデモ動画。

 また、「Adobe Illustrator」ではパスを容易に単純化する操作が、「Adobe InDesign」ではAdobe StockのライブラリからAIで構図や被写体が類似している素材を検索して簡単に置き換えられる機能などが、それぞれ追加された。

 動画編集アプリケーションに関するアップデートも、カテゴリーとしてはこの位置に属する。たとえば「Adobe Premiere Pro」では、映像の内容をAdobe Senseiが分析し、動画素材のアスペクト比をトリミングした際に被写体が常に画面内に入るようにパンやクロップを自動で調整する「オートリフレーム」機能が追加される。なお、関連した内容として「Adobe Premiere Rush」では動画共有アプリ「TikTok」への直接投稿に対応した。

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