プロダクトデザイナーにおける「即効性」と「遅効性」の重要性

プロダクトデザイナーにおける「即効性」と「遅効性」の重要性
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2024/06/10 08:00

 本連載では、DMM.comにおいて「育成・採用・評価・露出等の課題解決に取り組み、活躍する人を増やすことにコミットする」をミッションとして活躍するVPoE室のメンバーの日ごろの取り組みについて紹介していきます。第6回では、デザイナーの大村さんが、「即効性」と「遅効性」について解説します。

 こんにちは。合同会社DMM.com VPoE室に所属している大村です。

 VPoE室では、育成・採用・評価・露出の4つの主要ミッションに注力し、これらの課題を解決することで、優れた人材が活躍できる環境創出を目指しています。具体的には、新しいメンバーのオンボーディングプロセスの最適化、定期的なパフォーマンスレビューの実施、社内外での露出機会の増加などを行っています。私自身はデザイン分野での活動を担当しており、日々の業務で「即効性」と「遅効性」の重要性を強く感じています。

 この考えかたはDMMに限らず、前職や個人事業主としての経験にも共通していたものです。今回はこれらの経験をもとに、デザイナーの「即効性」と「遅効性」について説明します。

「即効性」と「遅効性」とは

 「即効性」と「遅効性」は引用の意味合いが含まれています。

即効性は、すぐに効果が表れるといった意味で用いられる表現。遅効性は、効き目が遅れてあらわれること。すぐには効き目が出ず、時間が経ってから効いてくること。

参考: weblio.jp

 私が以前在籍していたCTO室から現在のVPoE室に至るまでの4年半以上、DMMのさまざまな部門で人材育成や環境整備に携わっていました。デザイナーとしての対応は事業フェーズによって異なるものの、そこで得た経験から学んだのは、「即効性」と「遅効性」の特性を考えることが重要であるということです。

 この考えかたはDMMに限らず、前職や個人事業主としての経験でも同様に重要でした。今回は、これらの経験をもとに、プロダクトデザイナーの「即効性」と「遅効性」について説明します。

チームにおける「即効性」と「遅効性」

 事業会社に所属している人であれば、チームで仕事する機会が多いと思います。そんなチームや組織のなかでは、専門的な知識にばらつきがあることは珍しくありません。そのため、ある特定のひとりに質問や相談、または判断が依存してしまう傾向があります。

 こういった課題をそれぞれの特性からアプローチしている例をお話します。

即効性

 私たちのチームでは、プロダクトマネジメントやUXライティングなどの専門的分野において、解決策に関する解像度がメンバーによってばらつきがあったため、それにまつわる輪読会を実施しました。輪読会を実施する上での個人的目標に据えたのは、私を含めたメンバーが、携わる業務における引き出しや観点を増やし、発展的な議論が行えることです。

 輪読会は、即座に実践可能な知識を提供すること、そして育成面では、思考を広げ以前よりも質の高い議論ができるようになることが期待されます。

 「即効」の要素としては、チーム内の知識のばらつきを減らし足元の業務を円滑に進めてもらうことでした。これはチームメンバー間でも迅速に効果が表れる活動です。

遅効性

 チームにおける即効性は矢印が「個人」に向いている傾向にある一方、チームにおける遅効性は「チームや組織」に矢印が向いていることが多いと考えています。

 書籍『チームトポロジー 価値あるソフトウェアをすばやく届ける適応型組織設計』に「ストリームアラインドチーム」というものが登場します。「価値のある単一の仕事のストリームに沿って働くチーム」を指すこのチームのデザイナーは、新機能要件の整理やUI設計、ステークホルダーの要望による頻繁な変更など、改善のデリバリーにほとんどの時間を使っていることが多いという特徴があります。

 さらに同書籍では、ほかのチームを支援し、技術的な障害を取り除く役割を担う「イネーブリングチーム」も存在します。そのチームは遅効性の知識定着により、ほかの組織に最新の技術やベストプラクティスを伝えることができ、チームや組織全体の技術力向上に寄与すると考えています。

副次的に生まれる価値

この輪読会は、普段の業務とは一味違うチームビルディングのようにもなり、業務外のコミュニケーション機会創出にもつながりました。これにより、フルリモートのチームで課題になりがちな「気軽に話しかけづらい」空気感を、少なからず緩和できたのではないかと感じています。単に「輪読会を実施しただけ」と捉えず、行ったことの即効的価値と遅効的価値を見出していくことも大切ではないでしょうか。

UI設計における「即効性」と「遅効性」

 まずUIを設計する際には、対象がウェブアプリケーションであるか、モバイルアプリケーションであるかを把握します。また、どのような開発環境であるかを知ることで、実現可能な設計が可能です。このような情報の共有は、デザイナーとモバイルエンジニア間でのコミュニケーションを円滑にし、開発現場での即効性を高めます。

即効性

 たとえば、Flutterを使用してモバイルアプリケーションを設計する場合、アイディエーションの段階ではUIの詳細は決まりませんが、FlutterにはListTileやPopupMenuButtonなどの多くのウィジェット(コンポーネントのようなもの)があります。これらを考慮することで、MVP(最小限の実行可能製品)に焦点を当てることができるでしょう。

遅効性

 さらに、サービスごとの小さなデザインシステムでは各コンポーネントにドキュメントを持たせる必要が減ります。たとえばFlutterのウィジェットは公式ドキュメントで詳細が公開されているため、社内ドキュメントの整備も減少し、新しいメンバーは公式ドキュメントを参照することですぐに業務に取り組むことができるでしょう。これにより、組織が拡大するにつれ、標準ウィジェットの利点を実感できるはずです。

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