ゲーミフィケーションの一歩先、「ゲームフルデザイン」の考えかた
セガ エックスディーの伊藤氏は、「長年、人が夢中になる体験を作ってきました。これをゲーム以外の産業にも活用する方法として『ゲームフルデザイン(※解説記事)』の考えかたを紹介します」とセッションを始めた。
ゲーム会社セガのグループである同社は、エンタテインメントが持っている「人を動かす力」を活用し、課題解決に役立てる事業を行っている。
伊藤氏は、昨今のビジネスの市場状況を「情報が増えていくにつれて機能的価値がコモディティ化している」と説明。合理性や利便性よりも、「好きだから買う」「何となく買う」といった感情の価値が非常に重要になってきていると指摘した。
また、DXの推進が叫ばれるようになって久しいが、その言葉は「効率化」や「競争力の向上」といった文脈で用いられることが多い。しかしそんなDXツールも、実際に使われなければ意味はない。「ツールを使う人の体験の変革」が重要なのだ。伊藤氏は「機能的価値である『使いやすさ』だけでなく、『使いたくなる』体験にまで踏み込んだアプローチが必要」だと語る。
そういったユーザーの「やりたい」という欲求を刺激するのが「ゲーミフィケーション」の手法だ。
「ゲーミフィケーション」は、2010年ごろから使われるようになった言葉だ。ビジネスにおいても、ランキングや報酬の付与といったゲーム的な要素を入れることで、ユーザーのアクションを促す手法として注目されてきた。しかし伊藤氏いわく「ゲームはランキングがあるから“おもしろい”わけではない。ゲームには本質的に、のめり込んでしまう要素がある」のだ。

そこでセガ エックスディーが提唱するのが「ゲームフルデザイン」の考えかた。従来のゲーミフィケーションは、ランキングや報酬といったゲームの仕組みをいち手法として取り入れるだけのものだった。しかし伊藤氏は、人の欲求や行動の仕組みを捉え、人を夢中にさせるゲームの力を体験設計として活用できると指摘。これを「ゲームフルデザイン」と呼んでいる。