文化・技術・表現の最前線──2025年に注目すべき、20人のグローバルグラフィックデザイナーたち

文化・技術・表現の最前線──2025年に注目すべき、20人のグローバルグラフィックデザイナーたち
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2025/07/18 08:00

 クリエイティブやテクノロジー領域を中心に、海外で話題のトピックをお届けする本連載。今回は、「グローバルに活躍するグラフィックデザイナー」を取りあげます。

 グラフィックデザインの世界では、文化、技術、社会的テーマが交差しながら、ますます表現の多様性が広がっている。近年はAIツールの台頭により、業界は「概念的思考」「文化的洞察」「感情的な共鳴」といった、人間ならではの創造性に注目せざるを得ない状況だ。こうした背景のなか、独自の視点とビジュアルで世界中に影響を与えているデザイナーたちがいる。

 この記事では、イギリスのクリエイティブメディア「Creative Boom」によって紹介された「The 20 Graphic Designers Inspiring Us the Most in 2025」にもとづき、2025年に注目すべきグラフィックデザイナー20人を、おもな活動分野ごとに分けて紹介する。多くのデザイナーが複数のジャンルで活動しているが、今回はそれぞれの代表的な活動領域を基準にもとづいて分類を行った。

グラフィックデザイン/ブランディング領域

Temi Coker(ナイジェリア/アメリカ)

テキサスを拠点とするナイジェリア系アメリカ人のビジュアルアーティスト/グラフィックデザイナー。写真・グラフィック・3Dを融合したアフロセントリックな作風で、ナイジェリア文化を鮮やかかつ洗練された表現で讃えている。自身が共同創設した「コーカー・スタジオ」では、文化的ストーリーテリングを重視するブランドと協業。Adobe Creative Resident出身で、色彩・パターン・質感を駆使した表現に定評がある。

Natasha Jen(台湾/アメリカ)

Pentagram New Yorkのパートナーであり、ナショナル・デザイン・アワードに6回ノミネートされた実績を持つ、台湾出身のグラフィックデザイナー。ブランディングやエディトリアルの領域において、コンセプト重視かつ挑戦的なアプローチで評価されており、文化機関やラグジュアリーブランドなど幅広い分野で活躍。また、デザイン思考へ批評的視点を持っていることでも知られ、より直感的かつ柔軟な創造プロセスの重要性を提唱している。

Ingrid Picanyol(スペイン)

バルセロナを拠点とするグラフィックデザイナーで、カタルーニャの文化と創造性を反映した作品を展開。彼女は「水平思考、気まぐれ、譫妄」を自身のデザインに宿し、文化機関や出版、ファッションなど多様な分野で活動。代表作であるレストラン「マスベル」のビジュアルアイデンティティでは、伝統と地域性を尊重しながらも、現代的な視覚言語を創出している。

Wale Osunla(イギリス)

ウェール・オスンラ(発音は「ワレイ」)は、グレーター・ロンドンを拠点とするグラフィックデザイナー。テクスチャや動きを取り入れた遊び心あるデザインが特徴で、スタジオ・モロスの一員としてRiot Gamesや英国映画協会などのプロジェクトに参加。若手クリエイターの育成にも情熱を注ぎ、各地で講演を行っている。代表作にはElevenfiftyfiveのリブランディングなどがあり、色彩感覚の豊かさでも知られる。

Martyna Wędzicka-Obuchowicz(ポーランド)

マルティナ・ヴェンジツカ=オブホヴィッツは、ポーランドのグダニスクを拠点とする実験的グラフィックデザイナーであり、アーティスト、スクリーンプリント作家、AGIメンバーとしての顔をもつ。グリッチスタイルやオフィススキャナー技術を活用した表現を探求し、教育や講演活動も活発に行う。Squarespaceとの提携プロジェクトでは、ネオンカラーと大胆な形状を駆使し、強い視覚的インパクトと統一感を併せ持つデザインを提案した。

Alex Center(アメリカ)

アレックス・センターはブルックリンを拠点とするブランドデザイナーで、戦略的デザイン会社「CENTER」の創設者。ブランディングを文化的介入と捉え、トム・ホランドのノンアルコールビールやコカ・コーラ社の複数ブランドなどで実績を重ねる。現在はAppleやNew Balanceなどとも協業し、文化的関連性を軸に商業的成功へと導くブランドづくりを手がけている。

Connor Campbell(イギリス)

コナー・キャンベルはロンドン拠点のモーションデザイナーで、グラフィックデザインから転身後、自身のスタジオを設立。NikeやMTV、Amazonなどのクライアントと協業しており、ブランディングにおいてモーションを初期段階から組み込む重要性を提唱している。少数精鋭のチームで運営され、大規模プロジェクトでは外部クリエイターと連携する柔軟な体制をとっている。

Jessica Walsh(アメリカ)

ジェシカ・ウォルシュは、ニューヨークを拠点とするスタジオ「&Walsh」の創設者であり、感情を重視したグラフィックデザインとストーリーテリングを融合することで知られる国際的なデザインリーダー。AppleやNetflixなど大手ブランドとのコラボのほか、「40 Days of Dating」や女性支援プログラム「Ladies, Wine & Design」など社会的活動も積極的に展開。近年は書体ファウンドリー「Type Of Feeling」も設立し、表現領域をさらに拡張している。

Paul Watmough-Halim(ドイツ)

ポール・ワトモフ=ハリムは、ドイツ・ハンブルクを拠点とするHyperfocus Brand Design Studioの共同創設者兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター。大胆で共感性に富んだブランド体験の創造に定評があり、インタラクティブデザインとの連携にも情熱を注ぐ。D&ADやADCなど国際的イベントでも講演を行い、数々のデザインメディアで紹介されている。

Carla Palette(ドイツ)

カーラ・パレットはベルリンを拠点とするブランドデザイナー兼アートディレクターで、鮮烈な色彩と挑発的な表現が特徴。人を喜ばせるためのデザインを「退屈で不誠実」と捉え、強い個性と誠実さにもとづくビジュアルを創出している。美容、ファッション、食品など多様な業界のブランドと協業し、家具ブランド「Tresi」では誠実なアイデンティティを視覚化した。