どうも!今月で37歳になりました、カモシダせぶん(@kamo_books)です。昔、X(当時はTwitter)で誕生日に投稿した文面で反応をもらえたことに味をしめた私。それ以来、毎年誕生日に同じ投稿をし、いいねとフォロワーを獲得するといったズルい使いかたをしています。ある意味で、もっともクリエイトから遠い行為と言えるかもしれません。たとえ滑ったとしても、新しいものを創り続けることこそがクリエイターの心だと思うのです。
さて、今回のテーマは「作品に知性と奥行きを与える『科学』」。創作物に科学を取りいれた作品は数多くありますよね。今までわからなかったことを解明した、あるいは解明しようという姿勢そのものが「科学」であり、たとえ受け取る側にその知識が少なかったとしても嫌悪感は生まれづらく、むしろ凄みや尊敬の念を抱く対象になるものも多いように思います。
僕自身、高校時代の3年間は理系のクラスに所属し、科学に憧れながら挫折した経験もありますが、文系であっても「科学」には興味が湧くという人も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回はあえてど真ん中のSF小説や科学ノンフィクションではなく、大筋のテーマに「科学をプラス」することで、小説としての格がグンと上がっている小説を2冊紹介します。そういった構造のほうが、最初は取っつきやすいですよね。
「わからないことの神秘性」によるドキドキ感が魅力な『小説』
1冊目は本屋大賞にもノミネートされた長編小説。その名もずばり『小説』(講談社/野﨑まど 著)。

内海と外崎という読書が好きなふたりの少年。話は、彼らの小学生時代から始まります。学校の近くに住んでいる謎の小説家、髭先生の家に彼らは好奇心で忍び込んだりといった子ども時代を経てふたりは大人になり、やがて小説を読むこと、書くことに向きあっていきます。
これだけだとものすごく“純文学”なストーリーに感じる人もいると思います。たしかにこの小説のキモはそういった純文学に近いメッセージではあるのですが、実は途中でとても“科学”なキーワードと展開になっていきます。それによってこの小説の視点が非常にマクロな方向へ移動させられ、そう思って読み進めていくとまた主人公ふたりが生きる人生という、ミクロな視点に戻される――。何度も描かれるこの揺さぶりが、読み進める快感につながっています。わかりやすく「心も揺さぶられている」わけです。またこの本に登場する科学にまつわるワードが適度に難解なため、「わからないことによる神秘性」も合わさって、なんだかすごいものを読んでいるぞ…!というドキドキ感も味わうことができます。
「科学」というアイコンがプラスされたことで、エンタメ性が高くなり、作者の伝えたかったメッセージや問いがズバーン!と心に入ってきました。『かがくのちからってすげー!(ポケモンの名物モブキャラの言葉より)』。とにかくクリエイターの方に刺さる1冊だと思うので是非ご覧ください。