VTuberはエンタメで終わらない──社会とつながる“語り手”としての可能性

VTuberはエンタメで終わらない──社会とつながる“語り手”としての可能性
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 本連載では、新たなマーケティング施策として注目されている「VTuber」を活用した取り組みにフォーカス。VTuberマーケティングやキャスティング、事業企画などを支援しているuyetの代表プロデューサー金井洸樹さんによる連載の第2弾では、VTuberのクリエイターとしての側面に注目し、その可能性を探ります。第4回は「エンタメの枠を超えたVTuberの可能性」についてです。

 現在、VTuberという存在はエンタメコンテンツの一部として定着しています。配信プラットフォームの普及やファンコミュニティの盛り上がりを背景に、にぎやかな文化が形成され、数多くのクリエイターが集まる場となっています。

 しかし、私はこの業界に足を踏み入れた当初から、VTuberにはエンタメの枠を超える可能性があると強く感じてきました。自身の外見や属性にしばられず、純粋に「コンテンツの魅力」で評価される世界。VTuberは、その可能性を体現できると思っています。

エンタメにとどまらない、VTuberのふたつの価値

 私自身、最初からVTuberを“エンタメコンテンツをつくる手段”として捉えていたわけではありませんでした。むしろ、VTuberという構造そのものに惹かれていたのです。自分の得意なことや考えかた、専門性といった「コンテンツの魅力」にフォーカスできること、また外見や年齢などの要素をリセットし、より本質的な部分で他者とつながれる可能性がある点です。

 もちろん現実的にはVTuber市場の中心はエンタメにあるため、活動の見せかたとしては「エンタメ的に振る舞う」必要がある場面も多いのは事実です。ただ本質的にVTuberは、人や社会と深くつながるためのインターフェースになり得る存在だと思っています。

 VTuberは、キャラクターでありながら「話すことができる」点も特徴のひとつです。たとえば、歴史に興味がなくても史実をもとにしたアニメなら楽しめるというように、VTuberもキャラクターが語ることで、興味のないことにも自然と耳を傾けてしまうのです。

 つまりVTuberは、楽しさを通じて「難しいことや知らないことを“翻訳”する存在」とも言えるかもしれません。

 そんなVTuberですが、ふたつのエンタメにとどまらない本質的な価値があると私は考えています。

1.人の魅力を再定義するツールであること

外見や立場にとらわれず、「コンテンツ」だけで評価される機会を生み出してくれます。

2.興味や関心を持ちにくいジャンルの入口になれること

キャラクターを通して語られることで、難しそうに見える分野にも自然と関心を抱いてもらえる可能性があります。

 こうした役割を持てるVTuberは、まさに社会との新たな接点を生み出す存在であり、単なるエンタメの枠にとどまらない大きな可能性を秘めていると感じています。