人々の「健康寿命を伸ばす」テクノロジー
世界で見ても人々の寿命が延びるなか、今年のCESでは、病気をリアルタイムに分析する製品が多く展示された。CTAの未来学者ブライアン・コミスキー氏も、「バイオテクノロジー、デジタルヘルス、ウェルネステクノロジーが、人びとの長寿と健康な生活を支えている」と述べている。
たとえば、AI Docは子宮頸がんの診断を、Prevenotics-G Proは胃がんのスクリーニングを提供。また、Point Biotechのように、人間だけでなく犬など動物の悪性リンパ腫を監視し、早期に発見することを助けるためのプラットフォームも登場。いずれも今年、「CES Innovation Awards」を受賞した。
女性の健康分野では、アイルランド発のスタートアップIdentifyHer開発のウェアラブルデバイス「Peri」が、更年期症状の検査を提供。これにより、「逆方向の思春期」とも呼ばれるライフステージを迎える人々がサポートされる。
また、高齢者をターゲットとした「エイジテック」も、昨年に引き続き注目されていることを受け、今年は専用のエリアが登場。Ageless Innovationが3月に発売を予定しているエイジインクルーシブゲームや、Rendeverの没入型VR「Alcove Sanctuary」、そして、「CES Innovation Awards」を受賞したケアロボット「Lemmy」など、老化にともなう課題解決を目指す技術が紹介された。
大手ブランドではロレアルが、視覚障がいや上肢障がいを持つ人々に向け、ボタンを押すことなく香水を噴霧できる「My Aura」を発表した。
ロボットと物理AIがあらゆるものを「自動化」
ありとあらゆる業界に押し寄せているのが「自動化」の波だ。
その筆頭である自動車業界に関しては、NVIDIAのCEO Jensen Huang(ジェンスン・フアン)氏がWaymoやTeslaを成功例に挙げ、「自動運転車はついに到来した」と言及。John Deereは、農業、建設、商業造園向けの新しい自動車両を複数展示した。
Glidanceは、視覚障害者を支援する「Glide」を紹介。これは、センシブルな案内技術を備えた移動補助デバイスで、ユーザーを道案内するもの。現在ベータテスト中で、2026年に予約販売が開始される予定だ。
Roborockの最新掃除機「Saros Z70」も、搭載する独自のStarSight Autonomous System 2.0で、精密なナビゲーションとマッピングを実現。ロボットアームでモノを拾い上げる機能も備えている。
こうしたロボットを支えているのが「物理AI」だ。先述したNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、「AIの次のフロンティアは物理AI」であると述べ、基調講演では物理世界を理解する基盤モデル「Nvidia Cosmos」を発表。それをロボティクスや産業用AIに応用する目論見を明らかにした。
ジェンスン・フアン氏は、とくに物理AIの恩恵を受けるであろう「ヒューマノイドロボット」への期待を強調し、「一般ロボティクス産業における、ChatGPTの登場のような瞬間がすぐそこまで来ている」と述べた。