新しいVTuberの時代へ──進化するビジネスモデルとそのこれから

新しいVTuberの時代へ──進化するビジネスモデルとそのこれから
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 本連載では、新たなマーケティング施策として注目されている「VTuber」を活用した取り組みにフォーカス。VTuberマーケティングやキャスティング、事業企画などを支援しているuyetの代表プロデューサー金井洸樹さんによる連載の第2弾では、VTuberのクリエイターとしての側面に注目し、その可能性を探ります。第3回はVTuberのビジネスモデルについてです。

 VTuberという存在が登場してからおよそ9年。最初に注目を集めたキズナアイの登場から、にじさんじ、ホロライブといった大規模グループの活躍によって、VTuber業界は広がりを見せています。

 それにともない、この9年でVTuberを取り巻くビジネスの形も変化してきました。かつては「YouTuberと同じように動画を投稿して広告収益を得る」ことが中心でしたが、現在ではライブ配信、グッズ販売、イベント、企業タイアップなど、収益化の方法は多岐にわたります。

 そんななか、VTuberのビジネスモデルは今後どのように変わっていくのでしょうか。これまでの流れを振り返りながら、これからの可能性も考えてみたいと思います。

VTuberのはじまりは動画投稿から

 言葉として「VTuber」が広まり始めたのは、キズナアイの登場がきっかけでした。当時は「バーチャルYouTuber」という言葉どおり、YouTuberの進化系のような位置づけで受け止められており、広告収入や企業タイアップがビジネスの中心でした。

 ただ、動画投稿は手間も時間もかかるうえ、再生数が伸びなければ収益にはつながりにくいといった課題もありました。「バーチャルYouTuber」として新しい表現に挑戦するクリエイターたちは、「すぐに稼げる」よりも、「おもしろいコンテンツをつくりたい」との思いで活動していた時代だったと言えるかもしれません。

 また、活動の場はYouTubeに限らず、ニコニコ動画など複数のプラットフォームで行われていました。当時の評価基準は再生数。まだVTuberは「挑戦枠」といった側面が強かった時期でした。

VTuberを変えたのは「ライブ配信文化」

 そういった流れのなかで大きな転換点となったのが、にじさんじやホロライブの登場です。彼らは、動画ではなくライブ配信を活動の中心に据え、リアルタイムでファンと交流する文化を広めていきました。

 ライブ配信の普及により確立されたのが、「スーパーチャット(投げ銭)文化」です。配信では、これまでの動画制作よりも手の込んだ編集が不要になり、制作コストが大幅にカットされました。さまざまなコンテンツでユーザーの可処分時間を奪い合っていると考えると、制作スピードが早く常時展開されている状況は、コンテンツの普及において非常に効果的だったと言えるでしょう。

新たなマネタイズの構造

この時期のマネタイズは「投げ銭」「プロモーション」「グッズ」という流れで発展していきました。ライブ配信者がIP化することで、投げ銭だけでなくIPそのものに価値が生まれ、グッズ売上も向上していったのです。

また、ライブ配信は視聴者との接触時間が長くなる分推しへの愛着が深まりやすく、それが「スーパーチャット(投げ銭)」やファンコミュニティの活性化にもつながっていきました。

コロナ禍が加速させた「ファンコミュニティ」の変化

コロナ禍で人々の可処分時間が増えたことも、コミュニティ活性化の流れを加速させました。コンテンツが常に流れてくる状態が生まれたことで、DiscordやX(旧Twitter)で盛り上がるための環境が整っていったのです。

それにあわせてファンコミュニティにも大きな変化が訪れ、「いつでも誰かが配信していて、何かしらの話題が生まれている」といったVTuberの日常が、SNSや切り抜き動画を通じて広がっていきました。二次創作が盛り上がっていることはクリエイターにとっても嬉しいものであったため、さらなる盛り上がりが生まれ、好循環につながったのです。

今のVTuberビジネスはどうなっている?

 現在のVTuberビジネスは、おもに4つの柱で成り立っています。

  1. スーパーチャットや配信の投げ銭
  2. グッズやマーチャンダイジング(公式・ライセンス)
  3. ライブイベントやコラボ企画
  4. 企業とのタイアップや広告案件

 これらを組み合わせることで、VTuberが複数の収益源を持つことが可能です。さらに最近では、YouTubeだけでなくTwitchやTikTokなど、活動するプラットフォームの幅も広がっており、発信スタイルも多様化しています。