最初のハードルは「データアナリストの人たちへ声をかけること」 まずは話せる関係に
――――デザインとデータというそれぞれの領域について、どのような印象を持っていましたか?
清水 たとえばあるサイトのボタンが1,000回クリックされたときに、そのクリック数が多いからといって純粋に喜んでいいのかという疑問がずっとありました。
その500回は喜んで押したかもしれないけれど、その半分は面倒くさくなってしょうがなく押したとか、どこを押すべきかわからなくていちばん大きいボタンを押したとか、そういうネガティブな理由だったかもしれないなと感じていて。
1,000回押された次の日は2,000回というように数は増えていったとしても、それをクリックしたとき、ユーザーはどういうシチュエーションで、どんな気持ちで、どういう体験がそこにあったのかは数字でわからないことも多い。
ひとりのユーザーの気持ちになって、このサイトにきて、何が起きて、どういう気持ちになって離れていくかといった一連の物語を想像することにデザイナーは長けていますが、逆にその流れを分割して、数字で細かく見ていくのはデータアナリストが得意とする部分。だからこそ両者が一緒に解釈をしていけたら、もっと奥深いデザインができるのではないかと思っていました。
西村 この数字を上げてほしいという依頼がきたら、それを分析して数字をよくするとか、ここのクリックを多くしたいといった部分的な最適化は、データの得意分野ですが、そのブランドやサービスの世界観を意識しながら改善することは苦手。そこにデザインの力を借りたいと感じていました。
――ではデザインとデータの領域を融合させていきたいと考えたときに、何が大変でしたか?
清水 まず私にとってハードルだったのは、データアナリストの人たちへ声をかけてみるということ。データの分野は私からすると、忙しい専門家の人たちがたくさん集まって、デザイナーである自分とは違う言葉を話してるように見えていましたし、その中に入っていてわからないことを聞くというのはかなり勇気が必要でした。
それが変わるきっかけになったのは、ヤフーに在籍していた時に行われたデータアナリスト/サイエンティスト向けのチームビルディング合宿です。一緒に過ごす中でのちょっとした会話をきっかけに、まずはデータアナリストの人たちとわからないことが聞ける関係になれたのは大きかったと思います。
あと、合宿の中で、私はグラフィックレコーディングのワークショップをして、自分が考えていることや人が伝えたいことをどうやって絵にするかを解説したのですが、もちろんデータアナリストの多くの人たちは最初から上手には描けない。ですがそれが、お互いの弱みと強みをさらけ出す場のようになったのもよかったですね。
西村 清水さんのスキルってとくに、データアナリストからすると何がすごいのかわからなかったりするので、実際にその解説をもとに自分で描いてみることで、「なるほど、清水さんのスキルってすごい」と感じることができました。
清水 その講義のあとに「いまこういうことに悩んでいるんだけど、デザイン的にどう思う?」と相談してもらえたことも印象に残っています。最初はお互いに警戒モードな部分もあったと思いますが(笑)、それ以降、社内でも話しやすくなりましたね。