生成AIで実現したかったのは「CRAZYの可視化」
――まず、「CRAZY創造部」とはどのような部門なのかを教えてください。
七森(クラシエ) クラシエには、「しるし」という指針があります。これには「人を想いつづける」「こころを晴れにする」など、社員の行動規範や判断の基準が書かれているのですが、そのなかの社員のありたい状態を表す項目に「私たちの明日 CRAZY KRACIE」と記されています。ここに込められているのは、社員1人ひとりが昨日までの常識を超えていこうという思いです。
このビジョンを社内で浸透させるために、社長の岩倉直轄の組織として「CRAZY創造部」が生まれたのは2018年のことです。CRAZY創造部には現在6人が所属していますが、ほかの部と兼務しているメンバーも多い。私はトイレタリー部門の代表として部に加わりましたが、経営企画室と国際事業本部準備室にも籍を置いています。
そんなCRAZY創造部は「世界中にあるクレイジーな人やアイデアをかき集めて、掛け合わせて創造することで、世界を夢中にする挑戦者集団である」というパーパスのもと、インドへ行って新規事業を探すなど、新しい価値を生むための活動を行っています。
黄(クラシエ) そのため、社内風土改革に携わるものであれば何でも私たちの業務範囲になります。風土カルチャー改革のためにできることを起案し、社長に承認をもらえればチャレンジできる。
その一例が、現在も継続して取り組んでいる「ナナメンター」です。「斜め」の関係性を軸にしたメンタリングシステムで、他部署のメンバー同士をマッチングし半年間メンタリングしてもらう施策です。こうした交流によって、部署の枠に捉われないような発想を促しています。
――今回公開した「CRAZY KRACIEアンバサダー図鑑」は、どのような経緯で生まれたのでしょうか。
七森(クラシエ) そもそもCRAZY KRACIEアンバサダーは、CRAZY創造部だけが「CRAZY KRACIE」を発信するのではなく、各部署でもビジョンのエバンジェリストを立てたかったため、挙手制で募集しました。現在では32名がCRAZY KRACIEアンバサダーとして活動しています。
そして、それぞれ職場で「CRAZY」な事例を掘り起こしていたところ、それぞれがCRAZY KRACIEを意識して取り組んできたことや、その根っこにある考えが違っていた。そこで、CRAZY KRACIEとして取り組んできたことを図鑑のようにまとめたデジタルコンテンツを作ろうと考え、以前から伴走してもらっていた電通・電通デジタルさんにお声掛けしました。
石田(電通デジタル) 相談をいただいたあとに考えたのは、CRAZY KRACIEの目的である「新しい価値を作る」と「1人ひとりが異なる」部分をどのように表現するかということです。
私はCRAZY創造部が立ち上がる2018年ごろからクラシエさんと一緒に風土改革に取り組んできました。ですが長年関わるなかで、良いCRAZYさを持っている方がたくさんいるのに、内面だからからこそなかなか言葉では伝わらないことにもどかしさを感じていました。そこで、言語化が難しい内面のCRAZYさをビジュアルで表現する、言い換えれば「CRAZYを可視化する」といったコンセプトが生まれました。そして浮かんだのが、「アンバサダーの方の写真と生成AIをかけあわせ、内面をビジュアル化してみよう」というアイディアです。
七森(クラシエ) ちょうどそのころ、新たにDX推進部ができたこともあり、新しい技術を積極的に取り入れるカルチャーが生まれつつありました。世の中をみても「生成AI」が話題になっていたこともあり、CRAZY創造部としてはこうした新しい領域にも積極的に関わりたいと考えていたんです。
石田(電通デジタル) そのため私はアートディレクターという立場で、企画やデザイン、使用するAIの選定をはじめとしたAIまわりのディレクションなどをチームとともに担当しました。生成AIについては、昨今問題になることも多い炎上リスクを排除したかったため、著作権の問題をクリアした画像のみで学習をしているAdobe Fireflyを選択。さらに、生成されたものの類似性などは目視で確認・検証するプロセスも入れたり、Adobe Fireflyで生成されたことを制作物に明示したりと、万全な状況を整えるようにしました。