フルリモートでも高い生産性とチーム学習を実現!Figma/FigJamを活用したペアデザイン・モブデザイン法とは

フルリモートでも高い生産性とチーム学習を実現!Figma/FigJamを活用したペアデザイン・モブデザイン法とは
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 FigmaやFigJamを活用するDMM.comが、その効果的な活用や実践法について解説する本連載。初回は、「Figmaを活用したペアデザイン・モブデザイン」についてです。

 こんにちは。DMM.com VPoE室のエクスペリエンスデザイナー・河西です。VPoE室のデザインチームは、DMMの多岐にわたるサービス/チームのプロトタイプ作成や情報設計のエキスパートとして活動しています。

 本記事ではコロナ禍を経て多くの組織が移行したフルリモート体制でも、高い生産性とチーム学習を実現するために実践している、Figma/FigJamを活用したペアデザイン・モブデザインについて紹介します。

デザイナーを取り巻く業務上の課題と解決策

 2018年ごろより、DMMではアジャイル開発やスクラム開発を導入するプロジェクトが急増し、開発チームに所属するデザイナーや企画職は、会議室のホワイトボードやワイドディスプレイを活用してチームとコミュニケーションを図っていました。

 しかし、コロナ禍によりこれらの手段を使うことが困難に。その結果、デザイナーがオンライン環境で十分にデザインプロセスを共有できないことから、その過程はブラックボックス化。それにより、次のような問題が発生しました。

  • デザインプロセスが見えづらいため、進捗や工数を把握しづらい
  • 提案されたデザインと企画意図に大きなギャップが生じる
  • コンポーネントの定義が適切でないため、開発が非効率的になる
  • デザイントークンの設計が不明確で、実装における不整合が生まれる

 デザイナーの成果はアウトプットベースで図られがちです。しかし、品質の高いUIデザインのためには、ユーザー体験のシナリオの壁打ち、実装を加味した設計の作り込みなど、迷いや悩みのポイントの共有も重要です。それが、円滑なプロダクト開発を支える、非常に価値の高い情報源となるからです。

 しかしリモートワーク環境ではこういった機会が大幅に減少し、プロジェクトの業務効率は低下。それだけでなく、プロダクトの共創によって影響や刺激を受ける場が失われ、成功や失敗の体験を共有することも難しくなり、技術やデザインの質の向上も阻害されました。

 私たちはこれらの課題を「チーム学習の効率化」と「プロジェクト業務の効率化」のふたつの軸に分類。ペアデザインやモブデザインなどの手法を用いることで、デザインプロセスの透明性を高め、チーム全体のコミュニケーションを改善することで、高品質なデザインワークと効率的なプロジェクト進行の実現に取り組んでいます。

ペアデザイン・モブデザインのプロセスを公開するメリット
ペアデザイン・モブデザインのプロセスを公開するメリット

「ペアデザイン」と「モブデザイン」とは

 これらの手法は基本的に、すでにエンジニア文化として定着している「ペアプログラミング/モブプログラミング」と同義です。

 ペアデザインは「チーム学習効率化」のため、2名のデザイナー同士やエンジニアが協業し、同一のデザインワークに取り組みます。それが、技術的な学びや品質の向上に寄与します。またスキルや経験に差が大きいチームでも継続的にこの取り組みを行うことで、優先度の高い業務を滞らせたり、学習コストをかけたりすることなく、ペアデザインを実施することができます。

 一方、3人以上が集まって行うモブデザインの目的は、「プロジェクト業務の効率化」です。デザイナーに限らずサービス責任者やエンジニアも含む開発メンバーが協力し、グループハンズオンでひとつのUIデザインやプロトタイプを完成させます。アウトプットを軸に意思決定のためのコミュニケーションが交差するため、悩みや課題点の共有を含めた透明性が高く、プロジェクトの生産性向上に寄与します。

 いずれの手法でも、生産性やMTGの質を高めるために、デザインを先導してハンズオンする「ドライバー」と、デザインを見ながら意見をする「ナビゲーター」というふたつの役割に分かれます。ドライバーとナビゲーターの役割は、数十分など一定の時間で交代すると効果的です。

 デザインワークに複数人で取り掛かることでブラックボックス化が解消されます。それにより、認識合わせのためにたくさんの会議を行ったり、進捗や課題共有のための煩雑なドキュメントを量産したりすることなく、スピーディーに「チーム学習の効率化」と「プロジェクト業務の効率化」の各課題に作用させることができます。

 これらの方法は、「成果」と「学習」の両方を同時に共有できることが大きなメリットです。またいずれの手法であってもデザイナーがひとりで考え込まずに、メンバーから意見や指摘を得られることで、経験の深さやチームの成熟度に依存せず気軽に導入できる点も特徴です。

モブデザインの様子
モブデザインの様子

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