こんにちは。tacto株式会社のCo-Founder/Creative Directorの板倉です。前回の記事では、体験デザインや、体験デザインにおけるストーリーについてお届けしました。
前回の振り返り
- ファクトやコンテクストに根付いた強いコンセプトからストーリーが生まれ、そのストーリーが作り出す提供価値が、人の心と体を動かす要因となる。人が動くことで、それは体験になる。それらすべてをデザインすることが、体験デザインである。
- エンドユーザーにとっての「美しさ」とは、見た目(情緒的価値)と中身(機能的価値)、それを繋ぎ合わせるUXのすべてが機能しているデザインから生み出される包括的な「体験」にある。
- 「そのデザインにコンセプトは存在するのか」、「色、シェープ、タイポグラフィ、イメージ、グラフィックなどすべてのデザインの要素一つひとつにしっかりと意味があるのか。当たり前のことを当たり前にすることで、初めて「伝わるデザイン」が生まれる。
- 自分のデザインが伝えたいストーリーは何か。一回立ち止まって考えることが重要。
今回は、ストーリーを作り出し、人々の記憶に残るデザインにしていく方法をお届けしていきます。
記憶に残るデザインとは
記憶に残るデザインとは、どのようなデザインだと思いますか?
色やレイアウトがダイナミックでインパクトがすごいデザイン。余白が多く、真ん中にデザインがまとめられたすっきりとしたデザイン。心に残るようなコピーがメインで構成されたデザイン――。
好きなデザインや嫌いなデザインはもちろんですが、そのデザインがわかりやすいかどうかも、受け取る側の経験や文化、記憶などによって変化します。
それでは、記憶に残るデザインはどのように作れば良いのでしょうか。そのために大切なのは、しっかりとストーリーを意識したデザインを作ることだと思います。
- なぜそのデザインなのか?(Why)
- 誰のためのデザインなのか?(Who)
- 何のためのデザインなのか?(What)
- それは、どのようなデザインなのか?(How)
これらのWhy/Who/What/Howという考えかたは、その1つひとつが形を持つかもしれないし、ひとつでも効果を出すかもしれません。
ただし、それらが重なり連動性が生まれることで、きれいであったり、新しい意味を持ったりするようなシェイプに変化します。
Why/Who/What/Howを点ではなく面として捉えることで、デザインをより包括的に理解し構築することができます。このアプローチにより、考えかたに広さと深さが生まれ、ユーザーにより確実にデザインの本質が伝わります。結果として、そのデザインは記憶に深く刻まれるものへと昇華するのです。
ユーザーにどのように伝えるのか、つまり「ストーリーテリング」こそが、デザインがより遠く、広く届くために重要な要素です。