Z世代とVTuberの関係とは デジタルネイティブ世代の傾向を知る
Z世代とVTuberの関わりを知る前に、Z世代の価値観から整理していきましょう。
Z世代は「デジタルネイティブ」のなかでも、幼いころからスマートフォンに触れてきました。ネットにアクセスできるものが身近にある環境で育ってきたこともあり、スマホを持ったり、ネットに触れ始める年齢も引き下がっていることが特徴です。こうした背景から、ネット上のコンテンツに対して抵抗感が少ない価値観を持ち、トレンドに対する情報の扱いかたも20代後半以上の人たちの価値観と異なっています。
変化する流行の「起点」 コミュニティへ持ち込まれるコンテンツの違いとは
大人たちやY世代の流行の起点は、「アナログコミュニティに誰かが持ち込んだ新しいもの」であることが一般的でした。
たとえば、ゲームショップで新しいゲームを購入してそれをみんなで遊ぶ。 ファッションやアクセサリー、文具などもそうだったのではないでしょうか。誰かが購入したそれらを持ち込み、「どこで買ったの?自分も欲しい」という接点から流行がスタートする。周りの人はまだ知らないけれど、自分がおもしろい、良いと思ったから勧めたい。いわゆるイノベーター的な行動です。
アナログのアクションから始まった流行が、リアルのコミュニティで伝達していく流れが、これまでのトレンドの生まれかたでした。
しかしこれは、起点となる人が相応のリスクを負っている状態でもありました。自分の好きなコンテンツをオススメする行為は、自己開示にも近いアクションです。周りに受け入れられるかどうかは、当然ながら伝えてからでないとわかりません。
今回解説するZ世代やそれより若い世代における流行の生まれかたは「本人がイノベーター側である必要性が低い」という特徴があります。
これからのトレンドをつくる若い世代のコミュニティでは、「ネット上のコンテンツ」が話題の中心になることが多いです。端末とネット環境があれば誰でもアクセスできるため、早く見つけたのが自分なだけであって、見ようと思えばみんなが見れる、言い換えれば、自分が言い出す前に周りも知っている可能性もあるわけです。つまり、情報を早くキャッチアップした人がイノベーターでもあり、アーリーアダプターでもある状態から流行が始まるのです。
すると、コミュニティ内での広めかたも変わっていきます。「ネットで話題になっていたんだけど」「SNSで流行っているアレはもう見た?」というアプローチは、イノベーターの負うリスクが少なく、ネットから話題の後ろ盾をネットから得ているとも言えます。これはZ世代より上の年代の人にとっては、大きな「世代間ギャップ」です。
Z世代はもちろん、それよりも下の世代にもネットコンテンツが広まるのは、そうした安心感や強い後ろ盾の存在が一因でもあるのです。
その先駆けの流れをVTuberよりも早くつくっていったのは、ネット上で活躍していたゲーム実況者や歌い手、YouTuberやストリーマーなどのパフォーマーたちです。
みなが知っているという「安心感」と「抵抗感がない」という価値観は、市場に強い影響をもたらします。
たとえば、「ゲーム」や「アニメ」「マンガ」が好きなことは周りには隠しておきたい、といった傾向がZ世代の少し上の世代にはありました。 これがVTuberや歌い手、ゲーム実況者となればその抵抗感はもっと顕著になるでしょう。
しかし、2024年10月に開催された日本のゲームイベント「東京ゲームショウ」では、4日間の来場者が27万人を超え、出展団体・企業は過去最多となりました。日本の人口増加が停滞していくなかでこういった数字が記録されるのは、「世の中のゲームに対する抵抗感が少なくなってきた」ことの表れでしょう。ゲーム以外のエンタメコンテンツでも同じ傾向があります。
Z世代やデジタルネイティブな人たちにとって、VTuberコンテンツは一部の人が楽しんでいるものというより、ひとつのメジャーなエンタメジャンルなのです。
1980年代にみんなが観ていたテレビ番組や、多くの人が口ずさんでいた人気アイドルの楽曲など、時代ごとに流行っていたものがあったと思います。これが、いまの世代はネットで人気のコンテンツに置き換わっているだけ。みんなで共有して楽しめるからこそ、流行のコンテンツなのです。
Z世代よりも上の年代の人からすると「流行するのだろうか」と感じることもあると思いますが、そもそも世代や価値観の違いは受け入れなくてはいけません。いつの時代も、少し上の世代から見ると、若い世代は「変わっていった」世代だからです。