拡大する「音声生成AI」市場 イギリスでは電話詐欺師に対抗するおばあちゃんAI「Daisy」が登場

拡大する「音声生成AI」市場 イギリスでは電話詐欺師に対抗するおばあちゃんAI「Daisy」が登場
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2024/12/16 08:00

 クリエイティブやテクノロジー領域を中心に、海外で話題になっているトピックをお届けする本連載。今回は、イギリスで開発された電話詐欺師に対抗するおばあちゃんAI「Daisy」についてです。

 2024年11月、イギリスの大手通信会社O2は、詐欺師からの電話にリアルタイムに応答し、できる限り長く通話を引き延ばして顧客を守る、おばあちゃんのようなAI「Daisy」を開発し披露した。

最長40分、詐欺師を電話に縛りつけることに成功

 Daisyは、先端技術と実際の詐欺対策のためのコンテンツをもとにトレーニングされ、詐欺師に「リアルな人間」だと思わせるレベルのリアリティを実現。詐欺師たちが「完璧なターゲット」を見つけたと思い込む一方、実際には彼らの行為を逆手にとるものだ。

 これにあわせてO2は、Daisyが詐欺師たちの卑劣な手口を暴露する動画も制作し公開。これには、イギリスのリアリティ番組「ラブアイランド」の元出演者で詐欺被害者でもあるエイミー・ハート氏が出演している。

 エイミー氏は以前、彼女自身の結婚式当日の朝、銀行を名乗る詐欺師からの電話に騙され、ものの数分で5,000ポンド(約95万円)以上を失うという被害を受けたことがある。同氏は、「詐欺師がどれほど巧妙で卑劣であるかを知っています。そのため、O2とAIのDaisyと協力して、詐欺師を撃退する取り組みに参加しました」と語っている。

 O2の「詐欺師関係担当責任者」としてのDaisyの使命は、詐欺師たちとの会話を引き延ばし、彼らの時間を浪費させることで一般消費者を守ること。また、詐欺被害が深刻化するイギリスにおいて、消費者の警戒意識を向上させることも目的としている。

 このAIは、YouTuberとして著名な詐欺対策者、ジム・ブラウニング氏の協力を得てトレーニングされた。詐欺師とのリアルタイムな会話を完全に自律的に行い、実際、数多くの詐欺師を最長40分もの間、電話に縛りつけることに成功した。

イギリス国民の71%が「詐欺師に仕返ししたいが泣き寝入り」

 このDaisyは、O2が以前行った調査結果を受けて開始された「Swerve the Scammers(詐欺師をかわそう)」キャンペーンの一環として開発されたもの。

 同調査によると、イギリス国民の71%が、自分や家族を騙そうとした詐欺師に対して仕返しをしたいと考えているものの、実際にはそうしない理由として、53%の人が「自分の時間を無駄にしたくない」と回答。しかし、同国における詐欺被害は深刻化しており、67%の人が詐欺の標的になることを懸念し、22%が毎週1回以上、詐欺の試みに遭遇していることが明らかになった。

 Daisyはそうした悪質な詐欺師に対し、家族の話を延々としたり、編み物への情熱を語ったり、虚偽の銀行口座情報を提供するなどして、詐欺師を混乱させ、現実の被害者への攻撃を食い止めている。

 さらに、動画で詐欺師たちが利用する一般的な手口を暴露することで、顧客が自分自身をより良く守る手助けもしている。

AIを活用した詐欺防止対策と成果

 O2は、詐欺防止への取り組みとして、AIを活用した迷惑電話検知やスパムテキストのブロック技術を導入している。その成果として、2023年だけでも8,900万件のテキストをブロックするなど、顧客の安全確保に向けた努力を続けている。

 日々巧妙に進化する詐欺師の手法に対抗するため、同社は怪しい電話やメッセージをスパムレポーティングサービス「7726」に報告することで、詐欺の阻止に協力するよう国民に呼びかけている。
さらに、詐欺に関するアドバイスや注意点をまとめたウェブページ「Swerve the Scammers」も新たに開設した。

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