「職場でAIを活用している人材の割合」など日本は最下位 ランスタッド社調査から見えた、4つのAI対策

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2025/01/16 08:00

AIの活用・学習機会には「世代間ギャップ」も

 同レポートでは、「世代間ギャップ」についても取り上げられた。大まかには、経験豊富な世代の人材は、若い世代と比べてAIの活用やスキルアップの機会を得られていないと感じている。一方で、彼らはAIの自らへの影響を懸念することも少なかった。

 具体的には、「仕事でAIを使う機会を与えられている」と答えた団塊世代の割合は23%。これに対して、X世代では31%、ミレニアル世代では45%、Z世代では47%と、世代が若くなるほどその割合は高かった。AIスキルアップのトレーニングを受けたことがある人の割合も、団塊の世代は22%であるのに対し、Z世代では45%にのぼった。

 しかし、先述のように、団塊の世代はAIが自分の仕事に与える影響についてあまり心配をしていない。「AIが自分の仕事に与える影響について懸念がある」と回答した人の割合は、団塊の世代が26%だったのに対し、X世代は29%、ミレニアル世代は36%、Z世代は40%だった。

 くわえて高齢の労働者は、職場におけるAIの利点について楽観的でないこともわかった。「テクノロジーによって仕事がしやすくなるかどうか」の問いに、そう考えていると答えたZ世代が63%だったのに対し、団塊の世代は34%だった。

 この世代間ギャップは、団塊の世代がキャリアの終盤に差し掛かっていることも一因かもしれない。それでも、こうしたギャップを埋める方法を見つけることは、労働力の高齢化に直面している市場において、今後ますます重要になるだろう。

 ランスタッド社のCEOであるサンダー・ヴァント・ノールデンデ氏は、次のように述べている。「人材不足は世界的に深刻な課題であり、技能、資源、機会への公平なアクセスは、これに対処するための基礎でなければならない。AIへの需要は前例のないスピードで伸び続けており、AIが生み出す公平性の格差も拡大している。このことをしっかりと認識し、積極的な対策を講じない限り、未来の仕事に備える人材プールはあまりにも少なくなり、業種を超えた不足を生むことになるだろう」。

企業がとるべき4つのAI対策

 本調査を受けてランスタッド社は、「人材不足が深刻化する中、あらゆる層の可能性を引き出せる組織であることは、企業が持続的な成長を遂げるうえで重要なポイントとなっている」と述べたうえで、AI導入において公平性を高めるために取るべき対策として以下の4点を挙げている。下記を参考にしてみてはいかがだろうか。

1.スキリングの再考

AIテクノロジーは急速に進歩しているため、従来の学習と開発へのアプローチでは追いつかない可能性がある。組織は、こうした技術の進歩が人にとって怖いものと感じられる可能性があることを忘れてはならない。主だった層を代表するロールモデルやインフルエンサーを組織内で紹介することはポジティブなインパクトをもたらす。

2.個別のアプローチ

人々が、必要、あるいは望む速度でAIのスキルを身につけられない理由は多岐にわたる。人々がテクノロジーにアクセスし、利用することを妨げている壁を理解することは極めて重要である

3.協調的な取り組み

さまざまな層が直面する障壁は、教育へのアクセスや与えられる機会の数、あるいは昇進を妨げる「偏見」と結びついている場合もある。組織、教育機関、そして社会全体が協力し合うことで、グループ間のスキル格差を縮められる。早期教育プログラム、メンターシップ・イニシアチブ、スキリングに投資することで、より包括的な労働人口を生み出すことができる

4.バイアスの管理

バイアスはAIの最大のリスクのひとつである。テクノロジーそのものに内在するうえ、人材がさまざまなツールを利用し、そのアウトプットを信頼する過程の中にもバイアスは内在している。組織は、どのようにAIを適用していくのかについて批判的な姿勢で捉える必要がある。参加型のフォーラムなど、導入段階で質問できる場を設けることで、従業員がAIを使用するための準備を整え、同時にAIを使用するための人的監督を行うことができるようになる。