米国時間の5月7日、アメリカ・サンフランシスコのMoscone Centerにて、ブラウザ上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」を提供するFigma, Inc.が主催するグローバル年次カンファレンス「Config 2025」が開幕した。

今回で8回目となるFigmaによる年次のカンファレンス「Config」では、世界中のコミュニティからデザイナー、開発者などおよそ8,500人がサンフランシスコの会場に集まった。取り上げるのは、「デザイン」「プロダクトマネジメント」「開発・コード」などのテーマだ。
登壇者にはMetaのCTOであるAndrew “Boz” Bosworth氏、映画のグラフィックデザイナーAnnie Atkins氏、ドラマ『セヴェランス』のプロダクションデザイナーJeremy Hindle氏などが名前を連ねており、またNFLのプロダクトデザインおよびUXリサーチ責任者であるLauren Manning氏、AtlassianのSVP兼デザイン部門責任者Charlie Sutton氏をはじめ、登壇者の多くはFigmaコミュニティからの公募によって選ばれている。
招待制のエグゼクティブ向けトラック「Leadership Collective」では、AnthropicのチーフプロダクトオフィサーMike Krieger氏、DuolingoのチーフエンジニアリングオフィサーNatalie Glance氏などが登壇する。
カンファレンス1日目のオープニングセッションでは、Figmaの共同創業者/CEOのDylan Field氏が登場。Figma Design、Dev Mode、FigJam、Figma slidesに続き、本イベントで4つの新製品を発表することがアナウンスされた。
その4つとは、デザイナーが動的なウェブサイトを構築・公開できる「Figma Sites」、文章による説明や既存のデザインを、AIを活用したプロンプト・トゥ・コードツールによって動作するプロトタイプやアプリに変換する「Figma Make」、Figma Designに搭載されたツール群で、ベクター編集やイラスト制作機能の強化でより豊かなビジュアル表現を可能にする「Figma Draw」。そして、ブランドやマーケティングチームが、ブランドの一貫性を損なうことなく、大量のビジュアルアセットを制作できる「Figma Buzz」だ。

これらの新製品が発表されると、会場からはひときわ大きな歓声があがった。
Did you catch them all? Here’s everything we announced at #Config2025
— Figma (@figma) May 7, 2025
→ Figma Sites
→ CMS in Figma Sites (coming soon)
→ Grid
→ Figma Make
→ Figma Draw
→ Figma Buzz pic.twitter.com/3IyMcwmvkC
Dylan氏はこのイベントで「新機能や新サービスをたくさん紹介しますが、それと同じくらい注力しているのは、皆さんが期待する『品質』と『パフォーマンス』を維持し続けること。なぜなら、最終的に私たちが望んでいるのは、皆さんの注意がFigmaそのものに向くことではないからです」と話し、以下のように続けた。
「Figmaが創業当初から大切にしている原則のひとつが『Figmaがユーザーの邪魔をしないこと』です。私たちは、皆さんが最高の仕事をできるように、そしてFigmaがその妨げにならないようにすることを目指しています。
とくに今の時代、デザインの役割はかつてないほど広がりを見せています。デザインは、単なる工程の一部ではなく、プロセスそのものになりつつあります。デザインとは、ただピクセルを操作することではありません。好奇心を原動力に、問いを立て直し、細部にこだわり、感覚を追い求め、限界を押し広げていくことです。
AIによってソフトウェアを作ることがこれまで以上に簡単になった今だからこそ、デザインはますます本質的で力強い存在になっています。そんななか製品を際立たせ、人に愛されるものにするのは、クラフトマンシップであり、品質であり、明確な視点なのです」

編集部ではこの発表を受け、Figma Japan カントリーマネージャーの川延浩彰さんに個別取材を実施。日本のユーザーに向け、注目してほしいポイントなどについて話を聞いた。
――今回、4つの新製品が発表されましたが、その背景や意図についてお聞かせください。
Figma全体を俯瞰してみると「プロダクト開発をするうえでの最適なプラットフォーム」として捉えていただくのがわかりやすいのではないかと思っています。アイディア出し、デザイン、開発、シップ(Ship=届ける)といった流れがプロダクト開発にあったとき、今回リリースされたFigma Sitesではシップの部分をカバーすることができるようになりました。これにより、プロダクト開発のライフサイクルをかなり広く網羅できるようになったと思っています。
基本的な発想として、私たちFigmaはユーザーさんの声を大事にしています。FigJamができたのも、Figma上でかなり多くのユーザーさんがアイディア出しを行っていたものの、Figmaはそれに最適化されていなかったため、それならアイディア出しに特化したプロダクトを開発したほうが喜ばれるのではないかという背景からです。つまり、ユーザーさんが示してくれた行動から誕生したプロダクトなんですよね。
今回Figma Drawについて発表をしたLaurenも「ずっと私が欲しかった」と話していましたが、ユーザーが本当に欲しいと思っているものが何なのかといった声やフィードバックを生かしていくことも、非常に大切にしています。
今回発表した新製品はすべてベータ版ですので、だからこそたくさん触っていただき、日本の皆さんからもフィードバックをいただきたいです。
――日本のユーザーに向けて、4つの製品の注目ポイントを教えてください。
Figma Makeのようなソリューションはひとつのトレンドでもあると思いますし、デザインと開発のギャップを生める良いソリューションですのでぜひ試していただきたいです。またFigma Sitesはパブリッシュまで一気通貫で行うことが可能ですので、日本のユーザーさんにもかなり使用していただけるのではないかと思っています。またFigma Buzzによって、ビジュアルアセットの作成などがFigma内で完結できるようになったことに意味がありますし、どのようなインパクトがでるのかも楽しみです。
もちろん全般的にAIの強化にも力を入れていますので、日本でどういうふうに使っていただけるのかも気になります。AIについては意見を聞かれることも多いのですが、濃淡はあるにせよ日本もAIの重要性は増す一方なはず。そういった意味で、日本のユーザーさんにも喜んでいただけるのではないでしょうか。
――これからFigma Japanとして取り組んでいきたいことなど展望をお聞かせください。
2022年7月にCEOのDylanやCPOの山下が来日して行ったローンチイベントでは、ローカライズやFigma Storeの日本での展開開始など、大きなアナウンスを行いました。ですが並行して僕らがずっとやってきていたのは、日本のチームの強化。まだまだやらなければならないことはたくさんありますが、現在は営業の体制も構築することができ、日本の大企業でも導入いただいているケースがとても増えています。これは2022年にはなかったことです。

Figmaはもともとコミュニティグロースで伸びてきていましたが、直近では日本企業でも広く使われるようになりました。しかしながら、まだまだそのポテンシャルはこんなものではないと確信しています。今後さらにFigmaは成長していくはず。ぜひ、ご期待いただければと思います。