Claudeを開発するAnthropicのCPOが登壇 社内での活用や開発プロセスから考える、AIの現在地

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2025/05/28 08:00

 AIがさまざまな形で仕事や生活を変えている。デザインや開発ではどのようにAIを活用できるのか。Figmaが5月7日~8日にアメリカ・サンフランシスコにて開催した年次イベント「Figma Config 2025」で、「Claude」を開発するAnthropicのCPO、Mike Krieger氏がFigmaのバイスプレジデント プロダクト担当のPaige Costello氏と対談する形で、Anthropic内での活用と自身の考えを明かした。

AIの受け入れには透明性を 恐れを除去し結果にフォーカス

 人は新しいものに向き合うと、身構える人もいれば受け入れる人もいる。その「新しいもの」は現在、AIだろう。

 生成AIを生業とするAnthropicの場合、受け入れに間違いはないが、Krieger氏の話からは模索の様子が見てとれる。

 Krieger氏によると、Anthropicは社員向けに「Ask Claude」というSlackチャネルを用意している。社内ドキュメントやそのほかのチャンネルをクロールしており、何でも質問できるチャネルだ。最初は休暇のルールや社内用語の意味など、内部検索ツールに尋ねるような質問が多かったという。しかし、いろいろと使っていくうちに、従業員はAsk Claudeが会社全体、それに会社に関する知識グラフ全体を知っていることを理解するように。すると使いかたが変わってきた。「たとえばパフォーマンスレビューの時期になると、Ask Claudeを使って自己評価を書くようになった」とKrieger氏。「自分について知っている内容にもとづき、この半期の成果をまとめてください」などと依頼するようになったと語る。

 このような経験からKrieger氏は、人々はAIが特定の用途に使えるものなのか、問題はないのかを試行錯誤している状態にあると述べる。それに対し、組織で重要なのは「AIの利用にまつわる恥ずかしさや恐れを取り除くこと」だと言う。「恐れや恥ずかしさではなく、大切なのは結果が良かったかどうか、そして適切にプロンプトを与えたかどうか」とKrieger氏。

 受け入れを奨励するためには、AIの適切な使用方法を実際に示すことが有用とKrieger氏は考えている。

「ひとりが理解して良い方法で使うよりも、100人がAIをいろいろなアプローチで使うほうがおもしろいものを得ることができます」

 そのためには、「規範設定が重要になる」とCostello氏は付け加えた。

Anthropic流、AI主導の製品開発プロセス

 実際の業務でのAI活用も紹介された。まずは採用プロセス。Krieger氏によると、同社では、採用過程で仮想の目標を与え、実際にGoogle SheetsでClaudeを使って解決するという演習をしている。目的はプロンプトの質を評価するためではない。「モデルと連携して考えることができるかを評価している」のだ。

 製品開発プロセスでは、仕様の作成、アイディアのブレストなど「AIはほぼすべての段階で重要な役割を果たしている」という。たとえば、デザインとデザインの間の相互作用、どのように表示されるのかなどで利用しているそうだ。

「デザイナーのなかには、Figma上のデザインのスクリーンショットを撮ってClaudeに入れ、Claudeに批評してもらうという進めかたをしているメンバーもいます」

(左)Figma VP Product Paige Costello氏/(右)Anthropic CPO Mike Krieger氏
(左)Figma VP Product Paige Costello氏/(右)Anthropic CPO Mike Krieger氏

 出荷前に行うセキュリティレビュー、侵入テストでもAIが用いられている。「Claudeを第一段階のセキュリティ専門家」として活用しているのである。「レビューの時間が数週間から数日に短縮されました。セキュリティ担当者に渡す際に、(Claudeを第一段階として入れたために)領域を特定した状態で渡すことができる」とKrieger氏、効率化が進んでいるようだ。

 このように社内でAIを活用することは、生産性や効率などチームにメリットを及ぼしているだけではなく、Anthropicのモデルの改善にも寄与している。Krieger氏はそれを「製品の改善とモデルの改善、両方を同時に行っているようなものだ」と表現。Anthropicの社員は自分たちを“Ants”(Anthropicの最初のアルファベットだが、アリの意味もある)と呼ぶが、自社技術を使って改善に貢献していることから“Ants fooding”(アリにエサを与える)と呼んでいるのだそうだ。

 AIが活用されるようになったことで、いくつか変化も生まれ始めている。

 そのひとつとして、非エンジニアが内部ツールを構築するようになった。「Claude Code」を使って簡単に構築できることから、各自が自分の作業やビジネス上の問題解決を図るようになったという。

 具体例として、グロースマーケティング担当者がFigmaで広告のバリエーションを作成するにあたって、Claude Codeを使ってFigmaプラグインを作成したことを紹介。「コードを一行も書いたことがないグロースマーケティングマネージャーが、一日で作成」してしまったのだ。また、コードを書く前にデザイナーがClaudeを使ってプロトタイプを構築するようになったケースもあわせて言及された。

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