ミルクレープ発祥でありながら、表現できていなかった「他ブランドとの差」
――まずはカサネオの特徴と、リブランディングを行ったきっかけからお聞かせください。
植田(カサネオ) カサネオは、弊社のシェフである関根俊成が1988年に世界で初めて開発した「ミルクレープ」の専門店です。向こうが透けるくらいの薄皮のクレープ生地をじっくり低温で焼き上げることで、焦げ目がなく美しい生地に仕上げています。またミルクレープにフォークを入れていただくと、生地が巻き込まれずにすっと進むことも大きな特徴です。

カサネオはブランドとして成長はしていたものの、新規出店に着手できるほどの認知は獲得できていない状態。また商品としての完成度が非常に高く“世界一のミルクレープ”だと自負しているのですが、それがお客さまに伝わりきっていないもどかしさも感じていました。
そこでデザインの力を使い、ブランドの魅力を多くの人にアピールするのが良いのではないかと考えたんです。実際にリブランディングに着手したのは、2023年10月のことでした。
――このリブランディングプロジェクトは、どのように進めたのでしょうか。
西澤(エイトブランディングデザイン) カサネオさんのミルクレープは、当時からめちゃくちゃおいしかったです。ですがその一方現在は、「ミルクレープ」自体にそれほど目新しさがあるわけではなく、競合も多い。そんななかで「ほかのブランドと何が違うのか」をはっきり提示できていないように感じました。「ミルクレープ発祥のブランド」であるのに、それを誰も知らなかった。そこで、商品にもテコ入れをする前提で、プロジェクトを進めていくことになりました。
植田 ロゴやパッケージの変更だけでなく、新商品の開発や、強みとなる要素は押しだしていきたいといったイメージは持っていました。実際にエイトブランディングデザインさんと一緒に、カサネオの特徴や戦略ストーリーを言語化したり、クリティカルコアを探ったりする作業に多くの時間を割きましたね。ほかのブランドが追従できないようなカサネオならではの強みを整理し、それを表現するためにはどのような商品が必要なのかといった視点で考えていきました。
――具体的にはどういった部分のリブランディグを行ったのですか?
西澤 まず事業戦略を整えなおすところからスタートしました。定番商品のミルクレープ「はじまり」は、ブランドのコアのためそのまま活かすことにした一方、そこから派生する商品展開も考え直しました。やはり今の時代には“映え”も必要ですし、単純なおいしさだけでなく、“味の変化”を楽しめることも重要になります。

またブランドを体現するために、パッケージ、ロゴ、ウェブサイトを刷新することはもちろん、カサネオの店頭が非常にシンプルだったこともあり、内装をデザインしていくこともひとつのカギでした。それに付随して重視したのが「催事」です。旗艦店が大阪の阪急百貨店うめだ本店にあるのですが、今後の店舗拡大も見据え、催事でどのようなお客様に商品を届けられるようにするべきかを再考。現在も検証を進めているところです。つまり、お客さまの目に届く部分はすべて、新たにデザインしました。

