「職場でAIを活用している人材の割合」など日本は最下位 ランスタッド社調査から見えた、4つのAI対策

「職場でAIを活用している人材の割合」など日本は最下位 ランスタッド社調査から見えた、4つのAI対策
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2025/01/16 08:00

 クリエイティブやテクノロジー領域を中心に、海外で話題のトピックをお届けする本連載。今回は、「AIが労働市場におよぼす影響についてグローバル調査したレポート」を紐解きます。

 人材サービスを提供するランスタッド社は昨年12月、AIが労働市場におよぼす影響についてグローバル調査したレポート「人材不足の意味を知る~AIと公平性」を公開した。約300万件の求人情報と世界12,000人以上の労働者について調査・分析した本レポートの結果、日本の職場におけるAI活用やAIスキルの学習機会が調査対象国15ヵ国中最下位で、遅れをとっていることが浮き彫りになった。

出典:ランスタッド社のレポート「人材不足の意味を知る~AIと公平性」
出典:ランスタッド社のレポート「人材不足の意味を知る~AIと公平性」

AI人材の求人は1年で5倍以上に

 IMF(国際通貨基金)による2024年1月の発表によると、世界の雇用のほぼ40%がAIの影響を受けている。淘汰される仕事もある一方、AIが拡大、あるいは新たに生み出す仕事もあり、労働者のAIスキルの需要を高めている。

 世界経済フォーラムが2023年4月に発表した「雇用の未来レポート」でも、調査対象となった企業の75%が今後を含めてAIを活用するという結果がでており、さらにAIと機械学習の専門職が2027年までに急成長する職種のトップになると予測されるなど、AIの導入が期待されている。

 実際、ランスタッド社の調査によると、AIのスキルを持つ人材を求める求人情報は急増しており、2023年から2024年の間に5倍以上の伸びを示した。 

「AI活用・スキルアップ機会」で、日本は最下位

 そうしたなか今回のレポートでは、「職場でAIを活用している人材の割合」「AIのスキルアップ機会を提供された人材の割合」において、調査国15ヵ国中で日本は最下位となった。

 職場でAIを活用している各国の人材の割合は、首位が同率でブラジル(69%)とインド(69%)、トップ5はそれに、アルゼンチン(56%)、英国(45%)、オーストラリア(43%)が続き、最下位の日本は19%にすぎなかった。

 多くの国が人材不足の課題に直面するなか、すべての人に技能向上の機会を提供することは世界中の組織にとって生命線となりうる。労働者に公平かつ公正な研修と能力開発へのアクセスを提供することで、企業はスキルギャップを埋めることができるためだ。

 しかし、雇用主によるAIのスキルアップ機会を提供された人材の割合は、首位がインド(男性67%、女性73%)、トップ5はそれに、ブラジル(同56%、54%)、アルゼンチン(同41%、40%)、イタリア(同44%、35%)、ベルギー(同29%、31%)が続き、日本はここでも最下位(同24%、21%)に。なお、日本は「職場でAIを活用するために必要なスキルを提供してくれていると考えている人材の割合」においても最下位だった。

AIスキルアップの機会提供に男女差

 日本にかぎらず全世界的には男女間、そして世代間でAIスキルアップの機会に格差が表れていることが判明した。

 世界の男性の71%が「自分はAIのスキルを持っている」と答えた一方で、そのように回答した女性はわずか29%と、42ポイントもの開きがあった。これは、雇用主がAIスキルのジェンダーギャップを埋めるためにさらなる努力をする必要があることを示唆している。

 しかし、AIスキルアップの機会を提供された人材の割合は、男性が38%なのに対して女性は33%。さらに、受けたトレーニングがAIスキルを役立てるのに十分だったと答えた割合も、男性が35%であるのに対し女性が30%と、ここでもギャップがあった。

 一方、国別に見てみるとこの限りではない。たとえば、インドでは男性67%に対して女性73%と、女性のほうがAI活用やスキルアップの機会を多く与えられている。インドも日本と同じく生産年齢人口の減少に直面する国のひとつだが、多くの成熟市場に比べれば停滞の深刻度ははるかに低い。前述したとおり、仕事でのAI活用が全体的に進んでいることと相まって、人材不足の課題を是正するための準備が他国より進んでいるのかもしれない。