タイポグラフィの多様性と革新性──2025年の注目フォントとトレンド
Frontifyのウェビナーで語られたように、タイポグラフィはもはや静的な装飾ではなく、戦略的なコミュニケーションツールであり、ブランドアイデンティティの核心に関わる要素だ。デザインメディア「Creative Boom」が昨年発表した「2025年にデザイナーに人気の50フォント」には、その多様性と革新性が如実に反映されている。
ここでは、クラシックな書体からデジタルネイティブなフォントまで、さまざまなスタイルが紹介されており、今後のタイポグラフィ選定に役立つヒントが満載だ。その中から、注目のフォントを5つとトレンドを紹介する。
2025年注目のフォント5つ
1. TYPE BY Quadraat(Fred Smeijers作)
ルネサンスの優雅さと現代的な構造や形態のアイデアを融合させた多用途な書体。その文字形は、派手すぎず古臭くもない活気ある輪郭を持つ。カリグラフィのルーツとシャープなエッジを特徴とし、優雅で権威ある印象を与えるために最適。

2. Arnhem(Fred Smeijers作)
オランダ政府の毎日発行される新聞「Nederlandse Staatscourant」のために初めて作られた書体で、非常に機能的なデザイン。読みやすさと美しさを兼ね備え、可読性が高く新聞や雑誌での使用に適している。

3. RST Thermal(Reset作)
クラシックなタイポグラフィと現代的なデザインを融合させた可変フォントで、バランスとコントラストに焦点を当てている。ウェイトと光学サイズのふたつの軸を備えており、テキストやディスプレイの用途において多様な活用が可能。心地良いリズムを感じさせ、可読性を高め、親しみやすく楽しさを提供する体験をつくりだす。

4. Druk(Berton Hasebe作)
インパクトのある見出し用にデザインされた太く圧縮されたディスプレイ書体。ウィレム・サンドベルグやバーバラ・クルーガーといったアーティストや、とくに「Annonce Grotesk」などの歴史的な圧縮サンセリフからインスピレーションを得ている。クリーンに積み重ねるための平坦な表面と、視覚的なインパクトを高めるためのタイトな間隔が採用されている。

5. Romie(Margot Leveque作)
カリグラフィーに着想を得たディスプレイフォント。12種類のスタイルがあり、繊細でエレガントなセリフ体に現代的なひねりを加えたデザインは、エディトリアル用途に最適。世界300以上の言語に対応しており、2024年6月のアップデートでイタリック体がすべて追加された。

2025年のフォントトレンド
- クラシック回帰:セリフ体や手書き風のフォントが再評価されている。
- ネオレトロスタイル:1970〜90年代のビジュアルを現代風にアレンジしたフォントが人気。
- サンセリフの再解釈:シンプルながらも個性を持つサンセリフ体が注目されている。
- 可変フォントの活用:柔軟なデザインに対応できる可変フォントの採用が広がっている。
- インクルーシブデザイン:視認性と可読性を重視した、ユニバーサルデザイン対応のフォントに注目が集まっている。
これらの書体とトレンドは、ブランド戦略、エディトリアル、ウェブやアプリデザインなど、あらゆる分野で活用されていくだろう。
最後に
タイポグラフィは、ブランドの声であり、感情を伝えるメディアであり、記憶に残る体験をつくるためのデザイン言語だ。2025年、デザイナーにとってタイポグラフィは単なる選択肢ではなく、ブランドと人との関係性を形づくる“生きた存在”として、ますます重要性を増していくことになる。