ブラウザ上で共同編集できるデザインプラットフォーム「Figma」を提供するFigma,Inc.は、製品、ウェブサイト、ヘルプセンターの日本語版を発表した。Figmaの製品が英語以外の言語にローカライズされるのは今回が初となる。
都内で開催された記者発表会で、アメリカ本社 Figma, Inc. の共同創業者でありCEOのDylan Field氏、アメリカ本社でChief Product Officer(プロダクト責任者)を務める山下祐樹氏、Chief Customer OfficerのAmanda Kleha氏、日本法人カントリーマネージャーの川延浩彰氏が登壇した。
発表会の冒頭、CEOのDylan Field氏は企業におけるデザインの重要性や、日本のローカライズなどについて次のように述べた。
「やりとりや買い物など、日常の大部分がオンラインに移行し、デジタルの画面が世界との交流手段になりました。その結果、デザインが企業の競争力を高める要素になった。多くの企業がデザインの良いものを作らないと立ち行かないことに気づき始めました。そんな中では、DXだけでは不十分。良いデザインを持つことが重要なのです。
2021年にはヨーロッパの本部をロンドンに、3月にはフランス、ドイツ、ここ日本でのオフィス開設を発表しました。日本でオフィスをオープンしたのは最近ですが、以前から非常に注目していました。日本には活気のあるデザインがあります。日本にはグッドデザインが溢れており、建築から消費財まで、自動販売機すら日本のデザインは素晴らしいです」
続いて登場したCPOの山下祐樹氏は、Figmaと昨年公開したふたつめのプロダクト「Figjam」のデモンストレーションを披露。Figmaでは「コラボ機能が魅力」であるが「デザイン制作の手作業を減らすことを大切にしている」としたうえで、Figjamについてはこのように語った。
「Figjamは、『デザインの工程はアイディアから始まる』という思想のもと生まれたプロダクトです。プロダクト開発においては、おもに企画、デザイン、開発の3工程に分かれています。企画フェーズではFigjamを用い、デザインはFigmaで行い、そのコンポーネントで開発を行いやすくするというように、Figmaは各プロセスに価値を付与することを目指しています」
Figmaは楽天やYahoo! Japan、LINE、富士通などの日本企業が利用。また5月にはデザインカンファレンス「Config」を使用するイベント「Tokyo Config Watch Party」に200名以上のコミュニティメンバーが集まるなど、Figma製品に対して熱い思いをもったユーザーコミュニティも存在する。
Figmaではマーケティングとカスタマーサポートを担当しているAmanda Creha氏は、Googleで製品マーケティング・マネージャー、Zendeskでセールス・マーケティング・マネージャーを務めた人物。発表会では、自身のFigma入社のきっかけともなった“コミュニティ”の魅力として次の2点を挙げた。
「ひとつは、メンバーの情熱です。日本ではコミュニティメンバーのひとりが本を執筆してくれたり、FigmaのUIを日本語に翻訳するプラグインを開発してくれたりしました。このコミュニティはクリエイティビティが素晴らしいです。そしてもうひとつは、リーチの広さ。ユーザーの8割がアメリカ外在住だからこそ、コミュニティイベント『Config』がグローバルなものとして開催されました」
続けて、Figmaコミュニティのためにデザインされたオリジナルの衣類やアクセサリーなどを購入できる「Figma Store」の日本上陸についても、先日パリで開催されたConfigの様子を交えてこのように紹介した。
「パリのイベントにおける最初の質問は、今後のロードマップや機能についてではなく、Figma Storeについてでした。当時はアメリカとイギリスのみの展開で、フランスではローンチしていなかったのですが『いつくるのか』と質問をもらったのです。そんなFigma Storeですが、本日から日本でも買い物することが可能になります」
また川延氏もコミュニティについては「継続的に投資し、意見を仰いでいきたい」としたうえで、「これまで成し遂げてきた成長には非常に満足していますが、今後も継続的に末永く、日本のマーケットで成長を続けられることを私自身とても楽しみにしています」と展望を語った。
Figmaはこの半年ほどでカントリーマネージャーの川延氏をはじめ、マーケティング、販売、サポートなど10名のスタッフを日本で採用。Figmaは2022年末までにアジアで最初の拠点である日本に20名のスタッフを配置し、既存顧客のサポートや新規顧客の獲得、デザイナーや開発者、マーケターなどのコミュニティを長期的に成長させていくことを目標としている。
最後に、CreatorZineではCEOのDylan Field氏へ個別取材を実施。ふたつの質問を投げかけた。
――日本のクリエイティブ市場やクリエイターにどのような印象を持っていますか?
素晴らしいです。日本の創造性には非常に敬意をもっています。写真家やウェブデザイナー、グラフィックデザイナーなど、いろいろなデザインが日本では機能していると思います。日本はアートをこよなく愛する人たちで、なにかをつくる『クラフトマンシップ』を持った人たちだと感じています。もちろんFigmaでも、アメリカの人たちもそういった精神を大切にしています。そのため日本人の皆さんがそのような状況にあることは私たちにとっても楽しいことですし、私自身にとってもDylanにとってもすごく嬉しいことです」
――日本における今後の展望についてお聞かせください。
もちろんすべての人が英語を話すわけではないことは理解していますし、たとえば企業の数名の方が英語ができて、Figmaを使ってくれる人などがいるかと思います。会社内でFigmaをほかのメンバーに広げようと思ったときに、それが英語だとさらに広げることが難しいケースがありました。
それが今回日本語にローカライズされることによって、組織全体でFigmaを使ってもらえることにもなるでしょう。FigmaとFigjamの両方を使っていただいて、より良くデザインを機能させることができるようになる、ということが私たちの目標です。