「脳よだれ展2023」が開幕 博報堂グループのクリエイティブAI「脳よだれくん」で鑑賞体験をアップデート

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2023/09/06 13:00

 博報堂プロダクツのフォトグラファー22名と博報堂のアートディレクター22名がタッグを組み、企画・制作した写真展「脳よだれ展2023」の開催に際し、メディア向けオープニングイベントを実施。開催概要や見どころの解説をはじめ、制作に参加した4名のクリエイターによるトークセッションが行われた。

 「脳よだれ展 -Photo Exhibition Brain Drool-」とは、博報堂プロダクツのフォトグラファーと博報堂のアートディレクターが1対1でペアを組み、自由に作品をつくる「本能に訴えかける写真展」。VOICES展(2015)、脳よだれ展(2016、2018)から数えて4回目となる今回は、新たにふたつの挑戦がなされている。

 ひとつめは「アフターコロナにおける人の本能を揺さぶるビジュアルへの挑戦」だ。

「DXやデジタライズ化が進み、高度化、効率化が圧倒的なスピードで進んできました。なかなか人に会えなかったり、直接話をすることができない状況が続き不安を感じるなか、生活者に届くクリエイティブでいかに心を動かすか模索してきました。今の時代だからこそ、ビジュアルクリエイティブが生活者の心を震えさせることができるのか。22個の作品の挑戦をぜひ目で見て、感じたことや湧き上がってきた感覚を楽しんでもらえたらと思っています」(株式会社博報堂プロダクツ 取締役常務執行役員 兼 フォトクリエイティブ事業本部長 高橋秀行さん)

 ふたつめとしては「AIという別知性と対峙するクリエイティブの挑戦」が挙げられた。博報堂グループのクリエイティブAI「脳よだれくん」は、博報堂グループのさまざまなフォトグラファーやアートディレクターの知性や感性が導入されたもので、鑑賞体験をアップデートする点が特徴である。

 来場者は22個の展示作品をみたあとに、5メートルのスクリーン前に到着する。そこにはiPadも設置されており、自身のスマホに保存してある写真を読み込ませると、スクリーンに映し出された脳よだれくんが、その写真に対してどのような「脳よだれ」の反応をするかが示される仕組みだ。

写真を読み込ませたときの「脳よだれくん」(左)/写真を読み込んだことで「脳よだれくん」が脳よだれを噴出させる様子(右)
写真を読み込ませたときの「脳よだれくん」(左)/写真を読み込んだことで「脳よだれくん」が脳よだれを噴出させる様子(右)

 具体的な評価の方法について、博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部で本部長をつとめる秋田功さんは次のように説明した。

「『脳よだれ』自体は、写真に対する人間の本能的な反応を表している造語として位置づけているため、数列や文字によるAIの評価ではなく、キャラクターの表情や、人間にはなかなか理解できないような本能的な擬音語を用いて評価します。またこのAIにはさまざまな感情が表現できるよう、50の感性項目を学ばせています。それを5段階に分け、脳よだれの噴出量として示すことで、作品に対して評価を行っています」

 今後についても同氏は「クリエイティブAIを発展させた技術開発に力を入れていこうと思っているので、注目してほしい」と意気込みを述べた。

株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 本部長 秋田功さん
株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 本部長 秋田功さん

 イベントの後半では博報堂と博報堂プロダクツのクリエイター2名ずつが登壇し、トークセッションを実施。「これからのクリエイティブにおけるAI活用」のトピックでは、クリエイターらが次のようにそれぞれの見解を語った。

「グループ内でもセキュアに活用できる環境が整ってきており、クリエイティブからエンジニアまで多くのメンバーがAIに触れる場をつくれたことはとても大事だと思っています。みんなどんどん使いこなせるようにもなってきていますね。

株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 熊谷周太さん
株式会社博報堂プロダクツ デジタルプロモーション事業本部 熊谷周太さん

技術の進歩も早いですが、ここからAIとクリエイターがが共存したりしていくような流れが始まっていると感じています。今まで人間だけではたどりつけなかったところまで拡張させたり、人間がフルパフォーマンスを発揮するためのサポートなどさまざまな活用の仕方があると思いますが、多様な業務プロセスやクリエイティブの企画など、それぞれの使いかたがされ始めている。新しい流れが生まれてきていることを実感しています」(博報堂プロダクツ 熊谷周太さん)

「AIで簡単に画づくりができるようになり精度も上がってきていますが、個人的には脅威というよりも、人間だけではでてこないようなアイディアや画づくりにとってプラスに働くのであれば使っていけば良いと考えています。画像生成に関しては、私もどんどん取り入れていきたいですね。

株式会社博報堂 アートディレクター 小畑茜さん
株式会社博報堂 アートディレクター 小畑茜さん

また今はクリエイターのインプットを学ばせていますが、私で言えばZ世代や外国の方といった文化が違う方の視点をインプットできれば、そのクリエイティブに触れたときにどのように感じるかを考える時にもAIを活用できるのではないかと思いました。それができれば、新しい表現のアイディアにつながるかもしれません」(博報堂 小畑茜さん)

 なお、本展示会は9月13日(水)までSpiral Garden(東京・表参道)にて行われる。