ブランディング専門会社であるインターブランドは、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2023」(以下、BGB 2023)を発表した。同ランキングは、グローバルに事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化するもので、レポートの発表は2000年から今年で24回目。
今年のランキングでは、世界のTop 100ブランドの多くが成長を鈍化させていることが明らかに。Top 100にランクインしたブランドの価値総額の成長率は、2022年の対前年比16%増に対し、今年は同5.7%増と、昨年の目覚しい成長から急激に鈍化し、ブランド価値総額は3兆3,000億ドル(2022年は3兆1,000億ドル)となった。
このほかのポイントは、次のとおり。
成長率トップ
Airbnbのブランド価値は対前年比21.8%増加し、今年もっとも高い成長率を示したブランドに。また昨年ランキングに入ったばかりにもかかわらず、昨年の54位から46位へと躍進している。このブランドの目覚しい価値の増加は、ブランドへの力強い投資と堅実な財務見通しによるものであり、2022年の売上高は2021年に比べて40%増加し、2023年は2022年に比べてさらに13%の増加が見込まれている。
自動車ブランドとラグジュアリーブランドが急成長
自動車ブランド全体のブランド価値は対前年比で9%増加。BMWが初めてトップ10に入り(10位)、Porsche(47位)、Hyundai(32位)、Ferrari(70位)はいずれも2ケタ成長を果たし、もっとも成長を示した上位5つのブランドのうちの3つを自動車ブランドが占めている。
Teslaは今年のランキングで12位の座を維持したが、成長率は自動車ブランドの中でもっとも鈍化し、ブランド価値の成長率は、BMW とMercedes-Benzがそれぞれ10.4%と9.5%だったのに対し、4.0%にとどまった。
ラグジュアリーブランドは今年、ブランド価値を6.5%増加させ、再びトップクラスとなりました。これはラグジュアリーブランドの回復力と、カテゴリーを超越し、レストランやホテル、ポップアップ店などでプレミアム体験を生み出した成果と言える。Hermès(23位)、Dior(76位)は、今年、ブランド価値をそれぞれ10.2% 、8.4%増加させ、ラグジュアリーブランドでもっとも伸びた2ブランドとなった。
日本ブランドに関する分析
Toyota:6位、645億ドル(前年比+8%)
Vision「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える」、Mission「幸せを量産する」、Vαlue「トヨタウェイ」を掲げているToyotaは、昨年同様第6位となり、20年連続で自動車ブランドの最高位を獲得。品質報告書において常に高い評価を得ており、NPOのコンシューマー・レポートでは、2022年末に実施した調査において、Toyota、Lexus、BMWが米国でもっとも信頼できる自動車ブランドと評価された。また英国における「What Car?」 の信頼性調査では、2022年に英国でもっとも信頼できる自動車ブランドとして評価された。2022年4月、EV車戦略の道筋を表明、本格的にEV車を生産し始めた。
Honda:27位、244億ドル(+7%)
Hondaは、2023年4月にグローバルブランドスローガンの再定義を行い、「The Power of Dreams」に「How we move you.」を付加。さらに「Create(創造)」「Transcend(解放)」「Augment(拡張)」の提供価値を明確化し、社員1人ひとりの夢の実現が、お客様や社会全体の夢の実現につなげていくことを宣言した。今後、その具体的な取り組みが期待される。また、2030年ビジョン「すべての人に“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する ー世界中の1人ひとりの『移動』と『暮らし』の進化をリードするー」を達成するため、Sony、GSユアサ、世界最大の半導体メーカーTSMCなどのブランドと協力関係を拡大し、中核部品のサプライチェーンをコントロールするとともに、グローバルなEV市場での存在感向上を目指している。
Sony:36位、191億ドル(+12%)
Sonyは、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」をパーパスに掲げ、エレクトロニクスとエンタテインメントの世界的リーディングカンパニーとしてのブランドの地位を築いている。国内メーカー初のQD-OLEDパネルを搭載した、圧倒的な映像美を実現するフラッグシップ4K有機ELテレビ「ブラビア XR-65A90J」発表し、複数の主要映画フランチャイズに携わるソニー・ピクチャーズは、「スパイダーマン」や「ゴーストバスターズ」の新作を2023年公開予定。また、金融領域でもクリエティブセンターによるリブランディングを開始。ソニーらしいパーパスの実現に着実に取り組んでいる。
Nissan:63位、127億ドル(+4%)
Nissanは、長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」と事業構造改革計画「Nissan NEXT」を展開。2022年9月には、随所に和のモチーフが散りばめられた軽EV車「サクラ」が3万台を突破し、日本における「電気自動車(EV)元年」の訪れを感じさせた。そして、2023年3月には、電動化戦略をさらに加速する修正を発表。クルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現するとともに、「GT-R」や「フェアレディZ」のような、運転の楽しさも提供し続けていくことで、Nissanらしさを構築している。
Nintendo:71位、105億ドル(-2%)
2023年5月世界同時発売したNintendo Switch向けソフト『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の世界累計販売本数が、発売後3日間で1,000万本(うち国内販売本数224万本)を突破し、史上もっとも売れたゲームのひとつとに。さらに、Spotifyのような「Year Wrapped」機能を初めて導入し、ゲームプレイや統計データ、キャラクターとのインタラクションを振り返ることができるようにしました。また、スーパーマリオブラザーズの新作映画によって、NintendoはSwich向けにマリオの新作ゲームをリリースした。このような活動によりNitendoは常に世界で輝けるブランドとして存在に。しかし、財務の将来見通が少し弱く、今年はマイナス成長となった。
Panasonic:90位、67億ドル(+6%)
2022年4月、Panasonicは「幸せの、チカラに。」という新しいグループスローガンを掲げ、創業者松下幸之助の理念に基づき、物と心の両面が豊かな理想社会を築くことを目指している。この取り組みの一環として、「Panasonic GREEN IMPACT」という環境ビジョンを通じて、具体的な環境への貢献目標やシナリオを提示。また、2023年5月に発売された新しい「LUMIX S5IIX」カメラは、ソーシャルメディアユーザーにとって理想的なカメラとして評価されている。この動画ツールは、人々の日常の喜びや挑戦を共有する手段として注目され、他者との経験に共感し合い、絆を深め、心豊かな生活をサポートする革新的な技術を提供している。
Canon:100位、60億ドル(+3%)
Canonは、2021年に中長期経営計画「グローバル優良企業グループ構想フェーズ VI」として、4つの産業別グループ(プリンティング、イメージング、メディカル、インダストリアル)に組織を再編成し、戦略的大転換として変革を推進している。また、Canonは、国際的なデザイン賞iFデザイン賞を29年連続受賞し、米国特許取得件数においては、世界企業として5位、日本企業としては1位を9年連続獲得し、「ものづくりを極める」Canonの高い技術力を維持している。