企業や行政と伴走し活動を支えるデザイン会社のコンセントは、消費者をだますウェブサイトやアプリのユーザーインターフェースである「ダークパターン」について、ECサイトやアプリでの購入経験者を対象に、見たりひっかかったりした経験やその際に取った行動、認知・理解度などの実態を調査し、「ダークパターンレポート2023」としてまとめた。
調査の実施背景
ダークパターンの問題を顕在化し、個人・企業・行政で取り組める社会に
ダークパターンとは「消費者の自主性や意思決定や選択を覆したり損なわせたりする選択アーキテクチャを、主にオンラインユーザーインターフェースに用いる商法」を指す。言い換えると、「企業にとって都合の良い行動を取らせるために、消費者をだますウェブサイトやアプリなどにおけるユーザーインターフェース(=利用者との接点)」のこと。
昨今、オンラインで商品を購入したりサービスを利用したりすることは、私たちの生活に欠かせないものとなっている。そのため、ウェブサイトやアプリを介して商品やサービスを提供する企業には、オンラインユーザーに対して安全・安心を担保する利用環境を提供することが求められる。しかしながら、消費者をだますこの「ダークパターン」がウェブサイトやアプリなどに使用されてしまっている場合があるのも事実。2023年4月に発表された東京工業大学のケイティー・シーボーン准教授の研究室の調査結果によると、調査対象とした国内主要アプリ200個のうち9割にダークパターンが使用されていたことが明らかになっている。
また、国外では法規制が強化されダークパターンの使用により企業が提訴されるケースも増えている一方、日本国内においては消費者庁をはじめとした行政機関で検討が始まっているものの、ダークパターンを直接的に取り締まる法律がない状況(2023年11月時点)。
今回コンセントでは、ダークパターン問題のさらなる顕在化と、消費者1人ひとりがダークパターンについて知り考えるきっかけとなることを目的に、ECサイトやアプリでの購入経験者を対象としてダークパターンの経験や認知・理解度などの現状について調査した。
ダークパターンは、消費者に直接的に何かを強制することもあれば、気がつかれないよう巧妙に心理を操ってくることもあるため、消費者の目からすべてのダークパターンを捉えることはできない。そうした構造的な制約が前提とはなるが、同調査では消費者の目にはダークパターンがどのように映っているかを明らかにしている。
同調査において使用したダークパターンの種類と調査方法
同調査ではOECD(経済協力開発機構)による分類をもとに、代表的なダークパターンについて7つの事象とイラストを例示して、それぞれについて見たことやひっかかったことがあるかについてたずねた。また「見たことや経験したことがある」と回答した人には、その際に取った行動についても質問している。
調査結果のハイライト1)約7割がダークパターンを見たことがある
ECサイトやアプリでの購入経験者の約7割が、例示したダークパターンのいずれかひとつでも見たことがあると回答。
調査結果のハイライト2)4割強がダークパターンにひっかかったことがある
例示したダークパターンのいずれかに1度でもひっかかったことがある人は4割強。「意図していなかった商品の選択」「小さな文字をよく読まずに商品を購入」「繰り返し表示されるポップアップにしかたなく『はい』を選択」といった経験があると回答。
ただ、ダークパターンそのものを知らないとダークパターンであることが認識できないことから、「ひっかかったことはない」と回答した人のなかには、そもそもダークパターンであることに気づいていない人が一定数いると考えられる。そのため、実際には結果数値以上の人がダークパターンにひっかかっていることが想定される。
調査結果のハイライト3)4割強が「ダークパターン」を聞いたことがある
回答者にダークパターンの概要について説明したあとに、これまで「ダークパターン」という言葉を聞いたことがあるか、理解していたかについて質問をしたところ、「具体的に理解している」と回答した人は16.6%。
「聞いたことはあるが、具体的なことは理解していない」(28.2%)と合わせると、ダークパターンという言葉を聞いたことがある人は44.8%と半数に迫った。
昨今、ダークパターンに関連した海外での摘発事例などが日本国内でも報道されたり、消費者庁をはじめとした行政機関でも取り締まりを強化したりしていることから、ダークパターンという言葉を耳にする機会が増えていることが考えられる。
調査結果のハイライト4)3割弱がダークパターンの規制強化について聞いたことがある
国内外でダークパターンの規制が強化されていることについて知っているかを聞いたところ、海外での規制・国内での規制ともに3割弱が「ニュースやウェブなどで見たり聞いたりしたことがある」と回答。7割強は「見たり聞いたりしたことはなく、まったく知らなかった」。
調査結果のハイライト5)ダークパターン対策、1位「自衛」、2位「国の取り締まり強化」、3位「ECなどの企業対応強化」
ダークパターンにだまされないために必要なことを聞いたところ、1位は「自分たち利用者がだまされないために気をつけること」(76.3%)で、2位は「国が取り締まりを強化する法律を整備すること」(71.8%)。さらに、7割強がネットショッピング等を運営する企業に対して「ダークパターンを使わないように取り組むこと」を求めており、3位となった。
「報道機関がニュース等で取り上げることで消費者が知る機会を増やすこと」も6割を超えた。ダークパターンはその存在を知らないと認識しづらいため、防止策の強化とともに認知を広げることも急がれる。
調査概要
- 調査時期:2023年8月
- 調査対象:ECサイトやアプリなど、インターネットを介した商品購入やサービスの利用、またはサブスクリプションサービス利用の経験のある、18歳から69歳までの国内在住の消費者799人
- 調査対象人数:799人
- 調査手法:インターネット調査