AR広告の現状とは 3つの分類と8つの企業事例から考える[初回/後編]

AR広告の現状とは 3つの分類と8つの企業事例から考える[初回/後編]
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2020/06/25 08:00

 さまざまな技術が次々に登場するなか、注目を集めているテクノロジーのひとつが「AR」。本連載は、その中でもAR広告にフォーカス。効果的な活用法や制作の裏側などAR広告の基本をお届けします。解説していただくのは、ARスタートアップ「YONDE」の代表取締役・田坂洋一さんです。初回(後編)は、AR広告のいまを、各企業の事例から紹介します。

 こんにちは。YONDEの田坂です。今回からAR広告の現状についてお伝えしていきます。

 昨今のAR広告は、前回の記事で述べたAR技術の本質「大量のデータや分析内容を画像に変換して現実世界に重ね合わせる」というところには、まだ到達していません。現状は購買意欲の促進(コンバージョン率の向上) やソーシャルバズなど、話題づくりに重きをおいた広告がメインです。

 AR広告の表現方法として「動画を観ることができる」「キャラクターが現れる」「試着体験ができる」など多くのバリエーションがありますが、大きく以下の3つに分類できます。

  1. Web.AR広告
  2. Instagram×ARフィルター広告
  3. ネイティブアプリ×AR広告 

 それではひとつずつ見ていきましょう。

AR広告の分類(1)Web.AR広告

 Web.ARとは、文字通りブラウザ上でARを利用できるようにした技術のことです。その特性を活かした広告は、ユーザーをAR体験へと導き、ウェブサイトやウェブサービスに組み込むことができます。次に実際の使用例を挙げていきます。

ビールメーカーの事例

※出典元URL確認(坂田さんがご自身で撮影した場合はお申し付けください)

 これは「サッポロビール黒ラベル」新春キャンペーンのARを使用した例です。スマホのカメラで缶や広告に描いた「☆」を読み取ると、サッカー女子日本代表でキャプテンを務めた澤穂希さんらのメッセージが、現実の様子を背景に浮かびあがる仕組みになっています。連動してauの直営店「au SHIBUYA MODI」は、ARグラス「nreal light(エンリアルライト)」をかけて黒ラベルのシンボル「☆」を見ると、星がこちらに向かって飛び出し世界が切り替わるというリアルイベントを開催。話題性のあるプロモーションを展開しました。

カーメーカーの事例

上記動画出典元:MediaPost「Toyota Partners With 'Road and Track' For Supra Effort」

キャプチャ画像出典元:MediaPost「Toyota Partners With 'Road and Track' For Supra Effort」

洋雑誌『ROAD&TRACK』の付録ポスター(Toyota GR Supra)にARを使用。雑誌の付録ポスターに記載の2次元コードからアクセスできるようになっています。AR画面上で色の変更ができたり、エンジンの音を出せたり遊び心のある機能を盛り込んでおり、視聴時間などのエンゲージメントを高めることに成功しています。

コーヒーチェーンの事例

出典:スターバックス コーヒー ジャパン プレスリリース
出典:スターバックス コーヒー ジャパン プレスリリース

スターバックスコーヒーでは、店内にサクラが咲くキャンペーン「#スターバックスさくら2020」にARが使用されました。スマホのカメラで店内の二次元コードを読み込むとバーチャルのサクラが出現。ARコンテンツを使って桜の花びらが舞う『映える』写真が撮れる。並行して#ハッシュタグキャンペーンも実施。SNSで拡散を 促すプロモーション設計になっています。

 長らくウェブ広告は、画像・テキスト・GIFが主流でしたが、Web.AR広告であれば受け手にインタラクティブな「体験広告」を提供することができます。

 そしてコンテンツに「どんな経路で辿り着いたか」、「どれだけの人が見たか」など、ARを通して細かく分析することができます。マーケティングにも大いに役立ち、簡単にGoogleアナリティクスを使って解析できます。

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