米国UXデザインエージェンシー・btraxがグローバルD2Cブランドの支援サービスを開始 その背景とは

米国UXデザインエージェンシー・btraxがグローバルD2Cブランドの支援サービスを開始 その背景とは
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2020/06/19 08:00

 編集部が注目のクリエイティブ関連サービスを紹介していく本コーナー。今回は、btraxが開始したD2Cブランド向けグローバル支援サービス「Global Brand Experience」をピックアップ。本サービスの担当者でBrand Experience Designerの満汐国明さんにお答えいただきました。

――まずは御社の事業概要について教えてください。

btraxは感動する体験を通じ、新しい価値を創造するグローバルUXデザインエージェンシーです。サンフランシスコと東京、ふたつの拠点を持ち、サンフランシスコでは15年以上にわたりローカルコミュニティーともつながってきました。新たなサービスや事業開発の支援、ユーザー体験を軸にした市場展開を行い、グローバルにビジネス展開をするためのサポートをしています。

これまでにマーケットエントリーやUXデザイン、コンサルティングなど、300以上のプロジェクトに携わっています。身近でありながらも新しいと感じるブランド体験を創造し、現代のカルチャーを認識しながら、新しいストーリーを提案することを目指しています。

――2020年5月にリリースされたグローバルD2Cブランドの支援サービス「Global Brand Experience」にはどういった特徴があるのでしょうか。

グローバル市場におけるブランド立ちあげからブランドローンチ、ブランドのグロースまでをサポート、そして、リサーチ・分析、ブランディング、サービスデザイン、プロモーションマーケティングの4つを軸に、記憶に残る体験、意味のある消費、ユーザーの幸福を作り出し、ブランドビジネスを支えるためのサービスです。

 また、本サービスの主なポイントは下記の5つです。

  1. UXデザイナーとファッションデザイナーを含めたチーム編成で、ユーザー中心にデジタルとリアルの体験を提供できる。
  2. 日本とアメリカの2拠点にオフィスを持つデザインエージェンシーのため、言語・文化的背景を理解したグローバル規模でのブランドローカライゼーション、UXデザインの提供が可能。
  3. アメリカ市場のローカルトレンドや、ユーザーニーズに対応したブランド構築と体験設計ができる。
  4. ブランディングやマーケティングだけではなく、物流や生産面でもパートナー企業を紹介することが可能。
  5. ブランディングやマーケティング、運営方法などブランドによって異なる部分に対し、既存の型に当てはめないカスタマイズができる。

――なぜGlobal Brand Experienceサービスを立ちあげたのですか?

世界の消費動向をみてみると、サステナブルな消費への移行、無意味な消費の見直し、日本国内マーケットの縮小、小売からECへのデジタルシフトなどの存在が非常に大きくなってきていると、btraxでは感じています。そして、これらの変化は、素早く複雑で、どんどん予測のしづらいものになっている。とくに本社のあるサンフランシスコを中心に、アメリカ西海岸およびニューヨークの若者の間では、ブランドの信念と提供される体験への注目が高まり、D2Cモデルの躍進が続いています。

そんな中btraxは創業から15年以上、サンフランシスコを中心にデザイン思考やテクノロジーなど新しい分野にも挑戦し、日米グローバルビジネスのコンサルティングを行ってきました。

btraxとして、日本のブランドがもつ品質の良さを、正しい体験とブランディングを通じて世界中の消費者に届けていきたいとの思いから、自分たちの強みを活かしながら昨今のブランドに必要な部分を支援するために、Global Brand Experienceを立ちあげることにしました。

現在の情勢の中で、サービス担当者としてとくにGlobal Brand Experienceによるブランド拡大の余地があると感じるのがファッション業界です。

私は元々東京コレクションブランドやイタリアブランドでファッションデザイナーとして経験を積んだのですが、その中でもファッションウィークを中心とした卸しでのグローバル展開に限界を感じていました。

売れるかもわからないまま、海外の展示会に参加し、その売れ行きに関わらず3シーズンは出展せざるを得ない。また、売上が伸びたとしても、海外小売店の商品代金回収が難しい側面もあり、憧れの舞台だからこそ赤字でもやる、というブランドが多いのが現状。でもそれは今の時代、ファッションブランドとしてやるべきこと、必要なことなのかと感じ、ファッションのシステム自体をデザインできるような人材になろうと思ったことも、このサービスリリースの根底にはあります。

これからは、プロダクトだけ、ECサイトだけではなく、デジタルとリアル両方の視点を持ったブランドづくり、運営をしていかなければなりません。

ファッションという業界においては、得意としている世界観を作り出す視点とD2Cブランドのユーザー中心でニーズや課題を解決していく視点、このふたつを兼ね備えたグローバルブランドを目指すことが、ブランドとしてのひとつのありかたではないかと思っています。

――本サービスの開発にあたり、苦労した点はありますか?

基本的にはbtraxがいままでやってきたことに私のファッション業界で培った経験や世界観を作るために必要なブランドの要素などを上乗せするような流れでした。

とはいえ、btraxが考えるデジタルやD2C、Global Brand Experienceそのものの必要性や魅力を、言葉やビジュアルでどう見せていくか、また、とくに日本のファッション業界では「デジタルによるブランドづくり」に馴染みがないブランドも多いので、そういった部分をいかに設計するかについては何度も議論しました。

左:BX designer Kuni Michishio氏/右:btrax CEO Brandon Hill氏
左:BX designer Kuni Michishio氏/右:btrax CEO Brandon Hill氏

また同じデザイナーでも、社内のUXデザイナーとファッションデザイナーをバックグランドにもつ私とでは、ブランドや商品、サービスへの考えかたが異なる部分も多く、それをすり合わせるのにも苦労しました。お互いの良さを最大限引き出すためにはどうすべきか。クライアントのグローバルにおけるブランド価値をどのように作ればいいのかなども、話し合いを重ねました。

――最後に、Global Brand Experienceの今後の展望について教えてください。

日本からこの分野では世界でいちばんと言われるようなグローバルブランドを作っていきたいです。そしてそのためにも、スピード感とクオリティーを保てるよう、このサービス自体も随時アップデートしていきます。日本から世界一流のブランドをどんどん作り上げていくべく、さまざまな取り組みを行っていきたいと考えています。