「手段としてのデザインを超えていきたい」 つだしんごさんがYouTubeの先に見据えるものとは

「手段としてのデザインを超えていきたい」 つだしんごさんがYouTubeの先に見据えるものとは
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2021/02/03 08:00

 2020年の大晦日、YouTubeでの更新を「かなり必死で本気」で始めたというデザイナーがいた。Twitterのフォロワー数は6.5万人以上。大学入学後、デザイン制作事業やDtoC事業などを行うトレモロ株式会社を創業。現在は複数社の専属デザイナーとしても活躍する、つだしんごさん(@shin_5_9)だ。「デザイナーとしては贅沢できるようになった」と自らを振り返るつださんが、なぜYouTubeでの投稿を始めたのか。ひとりのデザイナーとして、またイチ個人として、YouTubeの先に何を見据えているのか。YouTubeでの発信とその裏側にある思いについて話を聞いた。

多くの人にデザインのおもしろさを伝えたいと思う理由

――今回、YouTubeを始めようと思ったのはなぜですか?

YouTubeをやろうという構想は1年以上前から練っていたので、ようやく弱い自分に打ち勝つことができた、というのが正直なところです(笑)。なかなか踏ん切りがつかなかったいちばんの理由は、アンチコメント。Twitterで投稿をしていても、デザイナーとして仕事をしているなかではお会いすることのないような方の心ないコメントで傷つくことも多かったので、やはりとても怖かったんです。

そんな中、あるYouTuberの方とプライベートでお話したときに、とことん好きなものを追求する彼らの生きかたや価値観に感銘を受けました。YouTubeに対して純粋に興味が湧いたんですよね。それがスタートのひとつのきっかけにもなりました。

また、そもそもデザイナーとしてどうあるべきかを考えたときに、常に自分ができる最前線で挑戦し続けるべきだと思ったんです。デザイナーはただ美しいものを作るだけではなく、事業や創業者の思いを理解し、それを形にすることが仕事。となると、そういった創業者の考えや企業の理念に共感するためには、強い思いを持って事業と向き合っている人たちと、同じくらいの挑戦を僕もしていなければいけないし、そうでないとついていけなくなってしまう。単純に上辺を作るだけのデザイナーになってしまう気がして……。事業や創業者にとっていちばんの共感者であるためにも常になにかに挑戦していたい。それを体現するひとつの手段がYouTubeだと感じました。

つださんのYouTubeチャンネルのトップページ。
つださんのYouTubeチャンネルのトップページ。

現在YouTubeに投稿しているコンテンツは、僕ともうひとりのスタッフで作成しています。企画は僕が行い、カットやテロップ入れなどの編集作業は基本的にそのスタッフに任せています。新たにマイクや三脚などの機材も追加で揃えましたが、それ以外はデザイナーとしてすでに使っていたもので対応できていますね。

登録者数もまだまだ少ないのであまりえらそうなことは言えませんが、投稿内容で意識しているのは、YouTubeというプラットフォームで求められているコンテンツを作る、ということ。

僕は、デザイナー以外の日本にいるすべての人に「ちょっとデザインっておもしろそうだな」と思ってもらえるコンテンツを作りたいという思いが根底にあるのですが、デザイナーの僕がそうでない方の気持ちをゼロから理解することは難しい。そこで、まずはさまざまな種類のコンテンツを量産し発信することで、多くの方々にとって“おもしろい”コンテンツは何かを検証している段階です。

――つださんのお話から、「デザインのおもしろさを多くの人に伝えたい」という強い思いを感じます。その根源はどこにあるのでしょうか。

僕は小学生くらいの時から、人間関係があまり上手くいかなかったという記憶があります。思いを言語化したり、コミュニケーションをとるためのツールを僕が持っていなかったんですよね。そういった自分の引け目を埋めてくれたのが、僕の場合は「デザイン」だった。

言葉にならないような思いや痛み、苦しみを誰もが抱えているなかで、それを形にできるのが文章やデザインといった表現。僕自身、デザインという手段に救われたからこそ、もっと多くの人にデザインについて知ってほしいと考えるようになったのかもしれません。

たとえばコンビニに行っても、数百種類あるすべての商品に必ずデザインはありますし、どこに出かけてもなにを見てもデザインは存在しているはず。それだけデザインは、なにかを伝えるための大きな要素になっているんですよね。だからこそデザインを「デザイナーしかできないもの」というように高尚なものとして捉えるのではなく、スキーやサッカーを趣味で楽しむのと同じ感覚で身近なものとして感じてほしい。Twitterなどでも、そういった思いで発信をしています。

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