――まずはご経歴から教えてください。
スタートアップに特化した弁護士事務所で働いた後、モバイルゲーム事業やライブエクスペリエンス事業を手掛ける株式会社アカツキで、おもにIPO業務を担当していました。 その後、一度あらゆるものを手放してゼロになるため、地元である岡山県に帰郷。1年ほどの充電期間を経て、地方創生事業を行政と一緒に取り組んだり、地方の教育事業立ち上げなどを行い、2021年1月にCiroci inc.を設立しました。
――Ciroci inc.にはどういった特徴があるのでしょうか。
Ciroci inc.は、独立アーティスト/クリエイター向け、バックオフィスパートナー会社です。いままでの芸能事務所やYoutuberの事務所などと比較すると、バックオフィス部分を担う会社になります。
そのため、すでにどこかと契約している場合でも問題ありません。創作活動の方向性もクリエイター/アーティスト自身で決めることができます。
所属関係の場合には事務所利益との対立にもなりうるのですが、横の関係にすることで、独立アーティスト/クリエイターが本来実現したいことを一緒に実現していくビジネスパートナーとなります。
――なぜCiroci inc.を立ち上げたのですか?その経緯や思いについて教えてください。
僕が本当に苦しかったとき、多くの「作品」が救ってくれました。それは、人によっては大したことないと言い捨てられてしまうものかもしれませんし、社会的な価値はないのかもしれません。ですが当時の僕には、その「作品」は絶対に必要なものでした。僕を社会の枠組みの外へと連れ出してくれたり、世界の広さを思い出させてくれる――。そんな「作品」を創るクリエイター/アーティストの方々は、世の中へ作品を出す前、かつどうなるかわからない段階で、創作をされているように感じます。
そういったクリエイター/アーティストのみなさんが、炎上や交渉のもつれ、権利の齟齬などで、本来なら生まれるはずだった「もう1作品」がこの世界からなくなってしまうのは本当に悲しい。そしてこれは僕個人の気持ちとしてだけではなく、この世界が少しだけつまらなくなることと同義だと感じています。
だからこそ、生まれるはずだった「もう1作品」をちゃんと一緒に創っていきたい。そんな思いでCiroci inc.を設立しました。
立ち上げたもうひとつの理由は、クリエイターやアーティストが独立するという時代の流れです。最近、大手芸能事務所やYoutuber事務所からの独立など、クリエイター/アーティストが個人ないし小規模なチームで活動することが増えています。
クリエイター/アーティストが、独立後すぐに本来の創作活動に注力するためには、創作活動以外の法務、税務、労務、経理などのバックオフィス機能でのパートナーも必要です。そこで、そういったバックオフィス機能に特化し、それらをワンストップで提供するバックオフィスパートナー企業として、Ciroci inc.を設立しました。なお、弁護士や税理士など外部パートナーが必要な業務については適宜連携していきます。
――Ciroci inc.を立ち上げた所感や周りからの反響はいかがでしたか?
多くの反響をいただき驚いています。漫画家さんや音楽クリエイターさん、Youtuberさんなどいろいろな方からご連絡をいただきました。
また、以前一緒に切磋琢磨していた仲間から「一緒にやりたい」と声をかけてもらい、自分の想定を超えた力強いチームができました。なにか活動するなら一緒にやりたいと思っていたメンバーに集まってもらっているので、自信を持ってCiroci inc.の業務に取り組んできたいと思っています。
――Ciroci inc.をこれからどのような企業に成長させていきたいですか?
芸能事務所やYoutuber事務所など、自身が所属している団体から独立する際に必要なことをすべて行う「独立支援」が現在のおもなユースケースです。独立されるクリエイターさんは、基本的に法人化するべきサイズであることが多いため、法人の設立、決算体制の構築、契約交渉などを行います。クリエイターさんがCEOの会社をつくり、COO、CFO業務を巻き取るようなイメージです。
クリエイターのみなさんが生まれるはずの「もう1作品」を生み出すことで、この世界はどんどん豊かになると信じています。もし、「Ciroci inc.があったからこの作品が生まれたよ」と言ってもらえたら、それほど嬉しいことはありません。