いまサービスデザインに求められるデザイナーの役割とは――ハナユメのコロナ禍における取り組みから考える

いまサービスデザインに求められるデザイナーの役割とは――ハナユメのコロナ禍における取り組みから考える
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 長期化するコロナ禍により多くのカップルが結婚式の延期・キャンセルを余儀なくされている。一生の思い出であり、人生の新たな門出となる結婚式は、「感謝」を人に伝える大切な文化。結婚式を挙げたくても挙げられないカップルやコロナ禍の影響を受けた結婚式場などに寄り添いサポートしていきたいと語るのは、結婚式場情報サイト「ハナユメ」を運営するエイチームブライズのデザイナーである大矢真理子さんだ。ウィズコロナ時代における結婚式をサポートするために取り組んだこと、サービスデザインにおいてデザイナーに求められる役割について話を聞いた。

ブランドの成長を加速させる ハナユメのデザイナーが担う3つの役割とは

 こんにちは。株式会社エイチームブライズで、結婚式場情報サイト「ハナユメ」のデザイナーをしている大矢真理子です。

 ハナユメとは、結婚式場のプランや実例などさまざまな情報を比較して、式場の見学予約ができるウェブサービスです。ウエディングアドバイザーと相談できるウエディングデスクを全国12ヵ所に展開しており、「一組でも多くのカップルに“理想の結婚式”のきっかけを」の実現を目指しています。

 なかでも私は、マーケティング戦略グループ ブランド戦略チームのデザイナーとして、ハナユメに関わるグラフィックデザイン全般を担当しています。主な役割は下記の3つです。

1.ブランド戦略に関わる企画やデザイン

雑誌・看板・ポスター広告のクリエイティブ、ウエディングデスクで使用する接客チラシやツールなどの販促物、VIガイドラインのデザイン制作を担当しています。

2020年以降は、コロナ禍での結婚式に対する不安を低減しサポートする「Withコロナ企画」を実施。結婚式場における感染症対策紹介ページ、カップルへの応援動画、オンラインで配布可能な入籍記念オリジナルカード、結婚式の延期・中止の案内状テンプレート、オリジナルマスクケースなどの企画や制作に携わりました。サービスの想いを「ビジュアル」を通して届けつつ、不安を感じるカップルに徹底的に寄り添う気持ちと姿勢を大切にしながら企画を考え、デザインを進めていきます。

2.ファンマーケティング

お客さまの声に耳を傾け、「今わたしたちが求められていることはなにか」を知り、ブランド戦略に落とし込みます。一生の思い出である結婚式を最高の体験にすべく、プレ花嫁をはじめ結婚式の準備を始めるお客さまに、InstagramなどのSNSでコミュニケーションを図ります。

ブランドイメージを醸成させるための世界観を構築するため、ユーザーが求めているアイテムや結婚式のトレンド情報を定期的に発信し、サービスのファンになってもらうことが目的です。サービスの認知や好感度の向上、ひいてはお客様満足度の向上につなげていきます。

3.メインビジュアルの制作

サイトデザインやファーストビュー、バナー、ブライダルイベントなどで使用するブースの装飾など、ハナユメとお客さまの最初の接点となるメインビジュアル全般のデザインと制作を担当します。

いまとくに期待されていると考えているのは、高い独自性を築くためのブランド構築。ハナユメブランドの成長を加速させるため、業界問わず広い視点でコンセプトやデザインに注目して、良いところは取り入れるようにしています。

結婚式の当たり前が変わる今、ハナユメとして提供できる価値とは

 前職は制作会社につとめていたのですがデザイン制作だけでなく、企画の段階から携わりたいと考え事業会社に転職したのですが、最初はそのギャップに苦労しました。企画を考えるためには、ブランドが持つ使命や役割、社会への提供価値、存在意義などを正しく理解し、共感しなければ、それらを体現する企画やクリエイティブをつくることはできません。

株式会社エイチームブライズ デザイナー 大矢真理子さん
株式会社エイチームブライズ デザイナー 大矢真理子さん

 前職では、クライアントである広告代理店からクリエイティブの指示があったこともあり、私自身がブランドを体現するクリエイティブを企画して制作するという経験はありませんでした。当時を振り返ると、まだまだサービスの本質的な理解が及んでいなかったと思います。

 このコロナ禍によって、今までの「結婚式の当たり前」が変わりました。結婚式を予定していたカップルの多くが延期やキャンセルを余儀なくされたり、多くのカップルが不安を抱え、結婚式をしたくてもできない現実に直面することとなりました。

 そのような情勢もあり、コロナ禍において「結婚式を挙げる価値とは何か」を改めて考える機会も増え、社内でもそうした議論が活発になりましたし、私自身も真剣に向き合うきっかけになりました。私たちが運営するサービスは社会にどのような価値を提供できるのか。ひとりのデザイナーとして、どのようにブランドの世界観をつくり、クリエイティブとして伝えていくのか――。サービスの提供価値について、以前よりも深く考えるようになったと感じています。

 そんな今だからこそとくに大切にしたいと考えているのが、お客様へ寄り添う気持ちと姿勢です。

 ハナユメのクライアントである結婚式場もコロナ禍の影響を受けて苦しんでいるのと同時に、お客さまであるカップルも、結婚式を挙げたくても挙げられない。誰もが不安を感じているいま、エージェントである私たちができることは、結婚式場が徹底したコロナ対策を講じているなかで、感染リスクを減らした形で挙式が挙げられることを、世の中に広く伝えることだと考えました。

 そしてカップルには、コロナ禍における挙式の不安やリスクを軽減させるべく、店舗やオンライン・SNSの活用といった不安を解消するためのコミュニケーションなど、さまざまなサポートを実施しています。

 カップルや結婚式場、すべてのお客さまに寄り添い続けることで、「一組でも多くのカップルに“理想の結婚式“のきっかけ」をつくることがブランドとしての使命ですし、デザイナーである私は、こうしたブランドの想いを、クリエイティブやコピーライティングなどでお客さまに伝えていくことだと考えています。

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