「あらゆる接点で高品質なクリエイティブを提供できるか」がひとつのカギ
アドビの営業本部で各製品の営業戦略などを担当している西山氏は、「今日はクリエイティブ商材の話をしたい」と前置きし、最初にアドビのミッションや提供しているクラウドサービスについて説明した。
「アドビのミッションは『世界を動かすデジタル体験を』。我々はこれを、『優れた顧客体験を実現するための手段をユーザーさんに提供すること』ととらえ、日々体現しています。そのために、我々が提供するツールを通じて、顧客のデータの真の価値をひきだし、それをリッチな体験としてお客様に提供するということを行っています」
ではアドビが目指す「優れた顧客体験」を実現するためには何が必要なのか。西山氏はその前提として、「お客様が購入しているのは、商品そのものというより、商品を通じて得ることができる体験」という点に言及した。
「さまざまな製品やサービスが存在するなかで、競争優位性を導き出しているひとつのポイントは『顧客体験が優れているかどうか』です。サービスが使いやすいのか。UIがわかりやすいのか。最短距離で目的が達成できるのか……。そういった部分でお客様のロイヤリティは高まっていきます。
そのうえでアドビは、クリエイティブの品質を高めるということも重要なのではないかと考えています。提供する製品やサービスはもちろん、広告やメール、SNSなど、あらゆるお客様とのタッチポイントで高品質なクリエイティブを提供できるかということです。ですが、そういった部分まで行き届いていないというケースも実際は多いのではないでしょうか」
これからのクリエイターに求められること
ここで西山氏は、そんなクリエイティブの“質”を高めるために意識すべきポイントを3つあげた。
(1)コンテンツベロシティ――コンテンツをいかに素早く提供できるか
テクノロジーを駆使することで、きめ細やかなパーソナライゼーションを提供することができるようになった一方、たとえば100人いたら100通りのコンテンツを届けなければならず、数十年前に比べて制作するマーケティングコンテンツの数は飛躍的に増えていることを指摘。
「それにともないクリエイティブ制作の予算を100倍にできるかというと、それはなかなか勇気がいりますよね。そこでアドビはクリエイティブツールの使われかたを解析し、たとえば日々の繰り返し作業などを極力軽減させられるような機能をツールに織りこみ、ユーザーさんの作業効率を高めるということに取り組んでいます」(西山氏)
(2)共同作業
西山氏がふたつめにあげたのは、共同作業。制作しなければいけないコンテンツが膨大になると複数のチームで手分けする作業が不可欠になるが、それぞれのチームでクリエイティブに差がでないよう、質を担保する必要がある。そのためにも、共同作業で進めていくことが、クリエイティブの制作にとっても重要な要素になっているのだ。
(3)顧客体験のブレイクスルー
現在は、多くの人が持っているスマホでもARのようなコンテンツを使いこなすことができるようになった。ARを活用したサービスも登場するなど、商品を3Dでみるという体験がスタンダードになる世界もそう遠くはないと西山氏は予想している。
「そうなると、これからは大量にコンテンツを作るだけでなく、いままでなかったメディアに、いままでなかったコンテンツを生み出していくこともクリエイターには求められていくはずです」
Creative Cloudでは、新しいメディアやデバイスが登場すると、それに応じたアプリケーションの追加を行っている。そしてその進化を支えているのが、Adobe Senseiだ。西山氏はAdobe Senseiが寄与しているといういくつかの機能を紹介した。
Premier rushの自動タッキング機能では、BGMと会話が同じ映像内にあった際、会話の邪魔をしないよう、人が話しているときはBGMの音量を自動的に最適化して下げることができるようになった。Illustratorでは、たとえばロゴのような“同じ”オブジェクトが1ファイルに複数あるときにそれらを一度に編集できるだけでなく、“似たような”オブジェクトであってもまとめて編集することが可能になった。
それ以外でも、画像内の目、鼻、口、輪郭などの表情を自動検知し自在に操ることができるPhotoshopのゆがみフィルターの顔認識機能や、色の鮮やかさやピントの合い具合などの言語化しづらい検索要素をパラメータで直感的に操作できるAdobe Stockの機能なども、Adobe Senseiによって得られた知見が、機能として反映された一例である。