NFTのアート・イラストを販売する前に必要な3つの準備
NFTのアート・イラストを販売するためには、情報・カネ・モノの3つの準備が必要だ。順に見ていこう
【情報】そもそもNFTとは?何が画期的なのか?
まずNFTとは何かという「情報」を得る=知るところから始めよう。そもそもNFTとは何か、何が画期的なのかをご存じだろうか。まずはNFTの特徴を押さえておこう。
NFTとは?
NFT(Non-Fungible Token)とは、非代替性トークンのことだ。これまで簡単に複製ができてしまったデジタルアート・イラスト作品の所有者を仮想通貨やブロックチェーン、スマートコントラクトなどのデジタル技術を使って、記録に残しておくことができる。つまり、NFTで取引されたデジタルアート・イラストは、唯一無二の作品で、つねに所有者が明確なことに加え、転売されても作者に利益が入るようにできるという点で画期的なのだ。
従来の場合、作品に初めて買い手がつくと、作者とその作品を取り扱っていた美術商やアートディーラーに売上が入る。しかし、その作品が転売される際には、一般的に作者に売上は入らない。NFTにはスマートコントラクトという機能があり、転売時には販売価格の10%を作者が得るとしておけば、ブロックチェーンが存在し続ける限り、転売の度に自動的に売上が作者に入ってくるのだ。
NFTのメリットとデメリット
NFTには、その特徴からくるメリットやデメリットがある。
メリット
- アーティスト・クリエイターとしての知名度や実績が影響しにくい(無名でも売れる)
- 作品の発送作業が不要
- 保管場所を確保する必要もない
たとえアーティスト・クリエイターとして無名でも、作品を気に入ってもらえさえすれば、買い手がつく。VRアーティストであるせきぐちあいみ氏の作品が1300万円で落札されたことや、一般の小学生の夏休みの課題に380万円という高値がついたことがニュースになった。
その一方で、まだ新しい技術が用いられていることからくるデメリットもある。
デメリット
- 著作権や使用権などは買えないとされている
- 法整備中
- NFTでの売買を始めるための準備
NFTでは、所有権を買うことができても著作権や使用権などは買えないとされている。新しい技術の上に成り立っている世界なので、どのように解釈すべきなのか、従来の法律が追いついていないのが現状だ。これから法整備が進んでどのようなルールが設けられるのか、または撤廃されるのかは誰にもわからない。そして、NFTでの売買を始めるための準備も、デジタルに苦手意識のある人にとっては、決して低いハードルとはいえないだろう。
【カネ】NFTのアート・イラスト販売に不可欠な仮想通貨
NFTのメリットとデメリットを見たところで、次にNFTの売買に欠かせない「カネ」=仮想通貨の準備を紹介する。これがないとNFT作品の売買は始まらない。準備に必要なステップは5つだ。
- 仮想通貨の口座開設と購入
- ウォレットの作成
- 仮想通貨をウォレットに移す
- NFTマーケットプレイスとウォレットを連携させる
- NFTマーケットプレイスに出品
仮想通貨の口座開設と購入
NFTのアート・イラストを販売したいなら、仮想通貨の口座開設が不可欠だ。NFTは仮想通貨で取引される。仮想通貨には、ビットコインなどのよく知られているものもあるが、NFTの場合はよく使われているイーサリアム(Ethereum)というプラットフォームを選ぼう。仮想通貨の名前はイーサ(ETH)だ。
販売する側なのになぜ口座を開設しなければならないかというと、ガス代と呼ばれるネットワークの維持費を支払う必要があるためだ。イーサリアムの利用登録時(一度のみ)とNFT購入時(都度)などに発生する。ガス代は相場によって変動するが、イーサリアムが拡大しつつあることから、高くなる傾向にある。
口座開設は、仮想通貨の取引所で行う。大手のコインチェック(Coincheck)がおすすめだ。口座開設が終わったら、銀行口座から仮想通貨の口座に送金しておこう。口座への着金を確認したら、仮想通貨を購入する。
ウォレットの作成
ウォレットとは、仮想通貨の管理に必要とされるWeb上の機能だ。仮想通貨の送金や受取に欠かせない。現金を入れておく財布のようなものと理解しておこう。ウォレットは、メタマスク(MetaMask)がおすすめだ。Chromeの拡張機能を使って、簡単に有効にできる。
仮想通貨をウォレットに移す
ウォレットを作成したら、購入しておいた仮想通貨を送金しよう。仮想通貨はまだコインチェックの口座にあるため、コインチェックからメタマスクに送金処理をする必要がある。ウォレットに仮想通貨を送金したら、NFTのための資金準備は完了だ。
NFTマーケットプレイスとウォレットを連携させる
次に、NFTマーケットプレイスのアカウントを登録しよう。現在、世界最大級のNFTマーケットプレイスといえばオープンシー(OpenSea)だ。日本国内のマーケットプレイスもあるが、デジタルアート・イラストに言葉の壁はないため、自分の作品が世界に通用するかをぜひ試してみてほしい。思いのほか高値がつく可能性もある。
オープンシーのアカウント登録を終えたら、仮想通貨を保管しているウォレットと連携させよう。NFTの売買で使うウォレットとしてオープンシーにひもづけておかなければならない。オープンシーの手数料は、トランザクション(ネットワーク上の処理)ごとに2.5%が徴収される。オープンシーとウォレットの連携が終わると、ウォレット経由でオープンシーにログインできるようになる。
NFTマーケットプレイスに出品
ここまで来たら、いよいよ出品だ。自分のデジタルアート・イラストをオープンシーにアップロードする準備が整ったことになる。
【モノ】アップロードできるNFT作品の仕様と販売設定
NFTのアート・イラスト販売に必要な準備の最後は「モノ」=作品だ。まずは、マイコレクション(My Collection)を作成してプロフィールを入力しよう。データの仕様やアップロード時に必要な入力項目は次のとおりだ。
データの仕様
- 作品タイプ:画像、動画、音楽、3Dモデル
- ファイルタイプ:JPG、PNG、GIF、SVG、MP4、WEBM、MP3、WAV、OGG、GLB、GLTF
- ファイルサイズ上限:100MB
アップロード時に必要な入力項目
- 作品:作品名(Name)、作品の説明(Description)、ブロックチェーン(Blockchain)など
- 販売方法:定価、オークション、バンドル
作品の情報や販売方法は後から変更できる。ガス代が高いと感じるなら、ポリゴン(Polygon)というガス代のかからないマーケットプレイスを選ぶことも可能だ。ただし、利用者や作品が少ないことに加えて、オークションの機能が使えないなどの制限がある。
なお、NFTの売買や譲渡で生じた利益には所得税がかかるが、その目的によって事業所得か雑所得か判断が分かれる。詳しくは、国税庁のホームページまたは最寄りの税務署へ。