「僕らは変換のプロ」 映像制作会社でディレクターが担うべき役割とは

「僕らは変換のプロ」 映像制作会社でディレクターが担うべき役割とは
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2019/11/19 08:00

 まだ、ビジネスとしての「映像」に今ほどの注目が集まっていなかった2011年4月。完全オーダーメイドを特徴とする映像制作会社「エレファントストーン」は誕生した。現在、およそ30名弱が所属する同社において、社員第一号として入社して以来、常に会社をリードし続けている人物がディレクターの嶺隼樹さんだ。エレファントストーンの生い立ちを振り返りながら、映像に求められていることやディレクターとしての役割について、嶺さんに話を聞いた。

フリーランスから会社所属の映像ディレクターへ

――まず、嶺さんのご経歴から教えていただけますか?

もともと大学の映画サークルで自主映画を作っていて、20代の最初までは漠然と映画監督になりたいと思っていました。そのため、卒業した後のおよそ2年くらいは、フリーランスとして映像に携わっていたのですが、その頃に一度制作した大きな自主映画も思っていたような結果が得られず……。それを機に、映像ディレクターの道に進もうと思い、映画館などでアルバイトもしながらでしたが、フリーランスとして仕事を始めました。

エレファントストーンはというと、2011年に現在の代表・鶴目がひとりで設立しました。映像制作会社というと、ディレクターやプロデューサーが独立して起業することも多いかと思うのですが、鶴目は広告代理店の営業職出身でした。創業から約3ヵ月たったころ、鶴目と僕が人の紹介で出会い、何かちょっと一緒にやりましょうか、という感じになりました。

最初は僕も社員ではなく、フリーランスのまま関わっていたのですが、1年経ったころにディレクターとして入社しました。第1号正社員です。

それから少し社員も増えて2012年には5人になっていたのですが、そのまま4年間は増えず減らず。代表の鶴目のほかに取締役として経営を担う社員がもうひとり、残り3人がクリエイティブ職です。僕ともうひとりがディレクターで、あとひとりが編集専門のエディター。この比率は、クリエイティブ組織の中ではとても特徴的な形だったと思います。

株式会社エレファントストーンディレクター 嶺隼樹さん
株式会社エレファントストーンディレクター 嶺隼樹さん

――嶺さんにとって、企業で働くという経験は初めてだったかと思いますが戸惑いはありませんでしたか?

ほかの制作会社に所属したことがなかったので、すべてがイチからのスタートでしたし、やることなすことすべてが新鮮でした。

単純に仕事をとってくることにも感動があるんですよ。すでにある企業に入社する場合には、基本的には営業やクリエイティブの仕組みができあがっていると思います。今の僕らはそうです。ですが創業当初だと、自然に仕事が降ってくるなんてことはまずありません。自分自身のディレクターとしての技量がまだまだ足りないことを痛感しながらも、仕事をとらなきゃ食っていけない。

苦労したこともたくさんありましたが、だからこそどんな仕事でもすごく嬉しかったですし、ちょっとずつ予算規模が大きくなっていき、初めて100万円の大台にのったときのことは今でも鮮明に覚えています。

クライアントワークではなかなか挑戦できない映像に挑戦したり、クリエイティビティを高めるために、エレファントストーン完全オリジナルの映像を制作してい配信しているアウターブランディングサイト「bacter」。立候補制で企画がとおると、予算内で自由に映像制作を行うことができる。「日頃のクライアントワークにも、そのクリエイティビティが発揮されるんですよ」と嶺さん。

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