アドビ、Adobe MAX 2019でPhotoshop iPad版の正式リリースやARツール「Adobe Aero」を紹介

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2019/11/05 09:50

 アメリカのカリフォルニア州サンノゼに本社をおくAdobe(以下、アドビ)はクリエイティブカンファレンス「Adobe MAX」において、さまざまなデバイスとメディアに広く対応し、速度とパワーが強化されたCreative Cloud製品群を発表した。

 Adobe Photoshop iPad版、Microsoft Surfaceに対応したAdobe Frescoを正式にリリースするとともに、Adobe Illustrator iPad版ならびにPhotoshop Cameraを発表しプレビューを行った。また、拡張現実(AR)コンテンツを創り出す新しいツール、Adobe Aeroの紹介も行った。

 アドビはLightroom、Premiere Pro、After Effects、InDesign、Adobe XDなどのメジャーアップデートの提供も開始。Creative Cloudの最新リリースでは、Adobe Senseiを活用し、Premiere Proのオートリフレーム、Photoshopのオブジェクト選択、Photoshop Cameraの自動トーン補正、Frescoのライブブラシなどの新機能が追加されたことも発表した。アドビは引き続きクリエイターがより迅速にかつインテリジェントに制作に取り組める環境を提供していく。

 今回発表された新製品は下記のとおり。

Adobe Photoshop iPad版

Adobe MAX 2018でプレビュー公開され、今回誰でも入手可能となったAdobe Photoshop iPad版は画像の合成と修正ワークフローというコアな機能をタブレットに提供。PSDデータとの完全互換性を持ち、タッチ操作のユーザインターフェイス、クラウドドキュメントへのアクセス、そして多数のレイヤーを持った作品の創作のためのパワーを装備。Photoshop iPad版は、タブレット向けに特化して開発された。

Adobe Fresco Windows版

今年9月にiPad向けに提供開始されたAdobe Frescoの、Microsoft Windows版の提供を開始。当初の対応機器は、Microsoft Surface Pro XとWacom MobileStudio Proとなる。ピクセルブラシ、ベクターブラシと新たなライブブラシを組み合わせることで、自然でさまざまな手法のドローイングとペインティングの体験を各種タブレットに提供。Adobe Senseiによるライブブラシで描かれる水彩と油彩は、スクリーン上で現実の絵の具で描かれているかのように混ざり合う。Frescoでは、気に入ったPhotoshopブラシを同期できるため、アプリ間で作業の連携をスムーズに行うことが可能となる。

Adobe Illustrator iPad版(プレビュー)

アドビは、デスクトップで体験できる精密性と多様性をタッチ操作対応のアプリとして再設計した未来のIllustratorのプレビューを行った。より直感的なインターフェイスを持つiPad向けバージョンでは、ユーザーが各種デバイスで同じファイルを扱うことができ、Adobe Stock、Adobe FontsとCreative Cloudライブラリへのシームレスなアクセスも提供する。

Adobe Photoshop Camera

今回初めてプレビュー公開されたPhotoshop Cameraは、新しいモバイルカメラアプリで、Photoshopが提供している性能をパソコンだけでなく、モバイル機器上で利用できるようになる。Photoshop Cameraを使えば独創的で高品質な画像を簡単に作成し、ソーシャルメディアでシェアすることが可能。特徴的な点は、Adobe Senseiが自動的に写真のクオリティを高めること。Photoshop Cameraには、ビリー アイリッシュ(Billie Eilish)氏をはじめとするアーティストとインフルエンサーが選定した数多くのレンズとエフェクトのライブラリが搭載されている。

 また、今回発表された製品の新機能は下記のとおり。

Lightroom

写真編集を学ぶことができ、世界中のプロのフォトグラファーからインスピレーションを得ることができる、ガイド付きチュートリアルが新たにデスクトップ版に搭載。また新たに追加されたパノラマ写真のエッジの塗りつぶし機能は、Content-Aware Fill(コンテンツに応じた塗りつぶし)技術を使用して境界線周囲の余白を自動的に塗りつぶすことが可能になる。本機能は、Windows版とMac版に搭載される。

Premiere Pro

新たに搭載されたオートリフレームは、Adobe Senseiを活用した新機能で、ビデオの内容を分析し必要な被写体が常に画面内に入るようにパンやクロップを行う。

After Effects

スムーズなキャッシュプレビューの再生、複数のマルチチャネルEXRファイル操作の高速化、コンテンツに応じた塗りつぶしの高速化(メモリ使用量も従来から半減)などの性能向上を施した。

InDesign

デジタル・印刷のデザインワークフロー双方で、新たにSVGの読み込みに対応。また、カスタマイズ可能なバリアブルフォントの利用が可能となった。バリアブルフォントではデザイナーが書体のウェイト、幅、傾き、オプティカルサイズを調整でき、アセットリンクにAdobe Experience Manager(AEM)のアセットとInDesignの直接リンクを可能とする機能も追加。

Adobe XDでライブ共同編集とドキュメント履歴が可能に

ベータ機能としてリリースされていたライブ共同編集が実装された。ライブ共同編集では、複数のユーザーがひとつのドキュメントで同時に作業することができ、デザインチームやプロジェクト関係者はリアルタイムでの共同作業が可能となる。ドキュメント履歴機能の追加により、チームの誰でもが保存されたドキュメントの各バージョンのリストを見ることができ、過去のバージョンを閲覧し、どのバージョンについても新しいウィンドウで開いて変更箇所を確認することができる。

生まれ変わったCreative Cloudデスクトップアプリ

アドビは、より直感的にアドビのアプリにアクセス、アップデート、検索、学習することを可能にする、生まれ変わったCreative Cloudデスクトップアプリをリリース。この新しいバージョンには、すべてのCreative Cloud上のアセットやファイルが検索できるネイティブのサーチエンジンやチュートリアルへのアクセスが含まれている。さらにAdobe Fonts、Adobe StockやBehanceなどのサービスへの新たなアクセス方法を提供するとともに、フルスクリーンのCreative Cloudライブラリ管理画面も追加した。

効率性と共同作業を念頭に改良されたCreative Cloudライブラリ

Creative Cloudライブラリは、クリエイティブのための素材を簡単な操作で読み込み、整理し、共有するためのツールである。現在、Adobe XDとも完全に連携し、Illustratorなどほかのツールで作成したアセットをXDで直接活用することができる。またMicrosoft WordとPowerPointからもアクセスできるようになったため、ブランドアイデンティティを保った文書やプレゼンテーションの作成も可能となる。さらにアドビでは、新規のユーザーがインスピレーションを得たり、活用法に慣れるために、ライブラリのプリセットにあたるライブラリパックを開発した。

未踏のフロンティアへの挑戦

アドビは、ARや3D、音声操作などの新しいメディア向けのコンテンツを簡単に制作できる直感的なツールを開発してきた。そしてアドビは今回、Adobe Aeroの提供を開始した。Aeroのユーザーは、PhotoshopやDimensionのようなツールを使って、3D環境の中に出現する拡張現実の体験を生み出すことができる。アドビはまた、最近アドビに加わった素材とテクスチャの3Dデザインの業界標準ともいえるSubstance Suiteもアドビ製品群に統合していく。Substanceに関する詳細な追加情報は来年発表予定。

価格と提供時期

アップデートされたCreative Cloudのデスクトップ向けソフトウェアは、メンバーシッププランを使っている個人、学生、チーム、教育機関、政府機関と企業を含む、すべてのCreative Cloudの契約者に提供されている。

Adobe Photoshop iPad版は、Photoshopが含まれるすべてのCreative Cloudメンバーが利用可能で、Apple App Storeからも購入可能。Adobe Frescoは、月額 1,080円(App Store価格)の単体プランか、Creative Cloudの各プランで購入可能。一部機能制限のある無償版(追加課金あり)も提供されている。iPad向けAdobe Illustratorは2020年に提供予定。Adobe Aeroは無償のiOSアプリとして提供されている。