マンガは「稼ぐ」ための手段だった
──もともとぬこー様ちゃんは、大学卒業後、スイミングスクールのコーチをされており、クリエイターではなかったんですよね?
ぬこー様ちゃん ゲームプログラマーになるため、情報学部がある大学に進学しました。ですが、卒業生があまり楽しく仕事に臨んでいないと知って、地元のスイミングスクールに就職したんです。8年間働きましたが、極端な薄給だったため、まったく貯金することができませんでした。事態を打開しようと試行錯誤を始めたのが「稼ぐ」ことの始まりでしたね。
中川(Minto) 最初は稼ぐためだったんですね。最近はクリエイターのバックグラウンドは多様化していますが、その中でもぬこー様ちゃんの経歴はユニークだと感じます。
ぬこー様ちゃん マンガ家は、散財のリスクがない仕事です。実は20代のころ、株式投資にのめり込んで手持ちの資金をゼロにしてしまい、これでは身が持たないと反省しました。そんなときに、僕ができる「稼ぐ」手段を考えたとき頭に浮かんだのが「マンガ」でした。小さいころからマンガやイラストを描くことが得意だったので、マンガで何かできないかを模索するようになったんです。
──とてもおもしろいですね。どんなことを始めたのですか?
ぬこー様ちゃん FX初心者のために、マンガでそのやりかたを解説しようと思いFXの証券口座開設のアフィリエイトサイトを作りました。僕自身が苦い経験をしたため、取り返そうという気持ちもありましたね。
アフィリエイトを試したあとは同人活動にも力を入れました。利益をあげることは難しかったのですが、その活動を通じて得た友人が代々木アニメーション学院(以下、代アニ)の講師だったことから、代アニ講師の仕事を紹介してもらうことができた。そのときにはすでに「マンガの仕事をしたい」と思っていたため、運が良かったですね。
──マンガ家としてはどのような活動から始めたのですか?
ぬこー様ちゃん 僕は、4コママンガを中心に描こうと決めました。4コママンガは決められた枠があり、その中で起承転結、いわばオチまで持っていかなければなりません。冬コミ(冬期開催のコミックマーケット)までの1ヵ月半で128ページ分の4コママンガを描くなど、とにかく短期間で徹底して描きました。それをTwitterで投稿し、読んだ方の反応をもらえるのも楽しかったですね。
中川(Minto) 自分の鍛錬の場として4コマを選んだんですね。それにしても1ヵ月半で128ページはすごすぎます。Twitterもかなり早い段階から活用していましたよね。
ぬこー様ちゃん そうですね。とくにTwitterは、投稿した直後にリプライなどで反応をもらえるのでありがたいです。感想や意見は、確実に僕の作品にも影響を与えていますので。
そんな風にマンガを描いていたら、「このメディアで描いてほしい」など少しずつ依頼をもらえるようになり、出版社から単行本を出せるようになるなど、マンガ家として生計を立てていける目処が立った。かなり忙しくなったため代アニの講師も辞め、専業のマンガ家として活動することにしました。
中川(Minto) スイミングスクールや代アニ講師なども作品として描いていますよね。意識して自身の経験を描くようにしているんですか?
ぬこー様ちゃん 「自分のマンガ家としての強みは何か?」を考えたとき、若手作家よりも人生経験が豊富なことではないかと気付きました。それならば、僕自身の人生経験をマンガにすればおもしろいコンテンツになるだろうと。それがきっかけで、日々身の回りで起きたことなどを「絵日記」として毎日Twitterで更新するようになったんです。