皆さん、はじめまして。VTuberやIPコンテンツを通して、VTuber領域の事業を複数手掛けるVTuber領域特化型の事業会社uyet(ユエット)の代表プロデューサー 金井洸樹です。トレンド、技術、コンテンツの移り変わりが激しいバーチャル業界の最前線で、自社事業をはじめ、企業さまや自治体さまのVTuber活用を促進するため、VTuberマーケティング・キャスティング・事業企画などを支援しています。
「VTuberを活用したマーケティング企画」については、新しいマーケティング施策として注目している方もいると思います。今回は、VTuberの活躍が「業界」と呼ばれるようになるまでの成り立ちをマーケティング面からひもときます。VTuberが多くの人々の心を掴む背景、業界のまだ発掘されていない可能性などについて、uyetの事例を交えながら、これからの時代に求められるプロモーションのありかたを紹介します。
VTuber業界のなりたちとは
VTuber業界が一般的に注目を浴び始めたのはおよそ2~3年ほど前。きっかけは「にじさんじ」を運営するANYCOLOR株式会社が2022年に初めて上場、翌年の2023年に「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社が上場したことが背景にあります。
国内大手のVTuberプロダクションを運営する企業2社の上場も影響し、「VTuberはとても人気があるらしい」と大手企業などから注目されるようになりました。
一方、「バーチャルYouTuber(VTuber)」という言葉が誕生したのは2016年ごろ。3Dモデルを使用し、「AIがYouTuberをしている」というコンセプトで活動を始めたキズナアイさんが先駆けと言われています。名前を知っている方も多いのではないでしょうか。しかし、当時は業界自体に人気があったわけではありませんでした。
2018年からはファンと一緒にコンテンツをつくる形が主流に
2018年ごろからにじさんじやホロライブを中心に、2Dイラスト形態のモデルを使ったIP活用を前提にしたライブ配信・動画投稿活動が主流となり始めました。
リアルタイムの生配信や、SNSでの視聴者・ファンとのコミュニケーションを通して、配信者と視聴者が一緒にコンテンツをつくっていくスタイルが、2018~2019年の間で増えていったのです。
さらに、2020年に始まったコロナ禍によって生活スタイルの変化に大きな影響があったことも関連があるでしょう。巣ごもり需要が高まり、ライブ配信・動画コンテンツの視聴時間が一気に延びていきました。そこから2年後に上場企業が現れ、ようやく存在感が出てきた業界とも言えます。
この当時の大手企業の事例としては、2018年に日清食品さんがVTuberをCM起用したことが有名です。このころからゲーム・デバイス系のエンタメ業界からは大きく注目されており、2019年には一般的なインフルエンサーよりも高いマーケティング効果が期待されていました。
生きたIPとも言える「VTuber」 さまざまな成長過程が人の心を掴む
VTuber人気を「推し活(特定の個人やキャラクターなどを支援・応援する活動)」と、同じように考えている方も多いかもしれませんが、本当の人気を支えているのは、そこではないと僕たちは考えています。
架空のキャラクターIPとは異なり、VTuberは1人ひとりが今を生きている身近な存在です。VTuberとしての成長や自身のありかたまで含めて、生で感じとれる機会がたくさんある血の通った生きたIPです。どんな交友関係があり、裏でどのようなことに力を入れているのか。どんな成長過程を歩んできたのか――。そういった部分を、VTuberとともにファンが体験できるコンテンツになっているのです。
例えるなら、高校野球やプロ野球などで新人のころから応援していたあの選手がメジャーリーグへ。インディーズのころからか応援していたバンドがアリーナでライブができるほど有名になった――。リスナーは人が織りなすそういった成長や変化に、高い頻度で接しています。その人とファンが培ってきたコミュニケーションの積み重ね、その成長過程やともに過ごした過去の思い出が生み出す熱量の高さが、VTuber業界をここまで盛り上げ、世間から注目された本当の理由だと思うのです。
だからこそ、 VTuberを活用した企画1人ひとりのVTuberの成長過程を理解しないまま、企画を展開しても、おそらく完全にハマることはないでしょう。「ファンがお財布を開きやすい業界」「キャラクターを絡めればなんでも良い」という捉えかたをしてしまっていたら、ぜひ認識をアップデートしてほしいと切に思っています。
タレントとファンの間で培われた熱量の高さや、ライブ配信コンテンツの集客力・販促の影響力は、必ずマーケティング面からも注目される業界になる。僕らはVTuberの生配信プロモーションの可能性からも、そう予想していました。