“SUPER STUDIOらしさ”のビジュアル化
リニューアル後の採用サイトでは、コーポレートサイト同様に青を基調とした配色にすることで、冷静さや真剣さを表現しながらも、ラフな表情で生き生きとした様子が伝わるように意識。
動きや明るい色を中心に構成することで快活なイメージを持たせたり、コーポレートサイトに比べてリズムをつけたレイアウトを増やしたりすることで、風通しの良い柔軟な社風を表現しました。とはいえ、アットホームでカジュアルすぎるとSUPER STUDIOの落ち着いた雰囲気が損なわれてしまうため、初期にプロジェクトメンバーで意見を出し合った“SUPER STUDIOらしさ”に立ち返りながら、デザインの温度感を調整していきました。
そのほかに取り入れたのは、メンバーが仕事にワクワクしている様子を印象的に切り取った写真や手書きの有機的な矢印、イラストなどの細かな表現です。いくつかリサーチしたSaaS企業のサイトでは、デジタル感の強い表現が多いイメージがありましたが、SUPER STUDIOはSaaS事業のほかに自社でD2C事業も行っているため、グラデーションやざらつきのような表現を組み合わせ、D2Cならではの“ものづくり感”も演出しました。
採用サイトで使用する写真の撮影にも工夫を凝らしました。植物や自然光を取り入れて柔らかさを表現したり、被写体となるメンバーの服装もグリーンやブルー、ベージュなどのアースカラーを取り入れたり、といった具合です。また黒やネイビーといった服装だとどうしても冷たい印象を与えてしまうため、温かい色味を取り入れつつ、メンバー同士の洋服の色のバランスなども調整しました。
コーポレートサイトと比較し、アニメーションの量も増やしました。「企業の顔」とも言えるコーポレートサイトは、採用候補者だけでなく投資家の方、メディア関係者など、さまざまなステークホルダーが訪問します。
しかし、採用サイトへ訪れる方の多くは、候補者やSUPER STUDIOに興味・関心がある方。そのため、SUPER STUDIOメンバーの情熱や人を大事にする温かさが伝わるよう、細部のデザインやモーションにもこだわりました。ファーストビューにもアニメーションを取り入れ、私たちの情熱を内包した“コト/モノ”を表した「キューブ」がメンバーの周りを飛び交っています。
そして2024年4月、 SUPER STUDIOの採用サイトをリニューアルしました。
採用進捗やSUPER STUDIOへのイメージのズレを解消することを目的に立ち上げた本プロジェクトでしたが、この取り組みによって、期中の採用目標数達成に貢献することができました。公開から2ヵ月ほど経過した時点では、採用サイトにおけるアクティブユーザー数が500%以上改善、採用サイト内のエンゲージメントが20%以上向上などの効果が生まれており、継続的な母集団形成に寄与できています。
また、今回のアウトプットや全社を巻き込んだ取り組みに対し、社内外からの反響も非常に大きく、「SANKOU!」というウェブデザインのギャラリーサイトにも取り上げていただきました。
こうした成果を生むことができた大きな要因は、SUPER STUDIOのコーポレートブランドの確立と採用成果の創出を目的に、サイトリニューアルから採用候補者の体験設計まで、さまざまな施策を推進できたことだと思っています。同時に、採用・人事や広報といった他部署のメンバーの当事者意識を引き出し、一丸となってプロジェクトに取り組むためのプロセスを確立できたことも、成功の秘訣だったと分析しています。
他部署のメンバーと円滑にコミュニケーションを取るために、このプロジェクトでもとくに「コミュニケーションの量と質」を意識しました。コーポレートサイトリニューアルのプロジェクトと同様、「スクラム」と呼ばれる開発手法を活用しながら、計画から実行、振り返りまでのプロセスを繰り返し実施。デザイン組織の専門用語ではなく共通言語を用い、常に同じ目線で会話できるよう心掛けながら、お互いの部署で取り組むものの認識が揃うようにコミュニケーションをとりました。
いかがでしたでしょうか。本連載では、事業にインパクトを与えるデザイン組織について、組織の成り立ちやその意図、コーポレートブランディングや採用ブランディングの具体例などを紹介してきました。
組織や事業を成長させるために、「デザインの力」は欠かせないものです。ビジネスサイドやプロダクトサイドとは異なったアプローチで事業・組織課題に向き合い、解決に貢献していくことは、どの会社のデザイン組織でも求められていることではないでしょうか。
「個」の組織力も大切ですが、事業会社のデザイン組織の醍醐味は、さまざまな部門と手を取り合い、互いの職域をリスペクトしながら理解を深め、「チーム」でひとつのことを成し遂げられること。
私たちと同じように事業会社で多くの課題に向き合うデザイン組織の方々に本連載が届き、課題解決の一助となれば嬉しいです。