採用サイトリニューアルの裏側を公開 より良い候補者体験を設計するデザイン思考とは 

採用サイトリニューアルの裏側を公開 より良い候補者体験を設計するデザイン思考とは 
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 統合コマースプラットフォーム「ecforce」の開発・提供を中心としたSaaS事業と、自社D2C事業を展開する株式会社SUPER STUDIO。同社のデザイン組織は、主要のSaaSプロダクトである「ecforce」以外にも、バックオフィス領域まで幅広い業務に携わっています。第3回では、株式会社SUPER STUDIO カスタマーエクスペリエンス室 ブランドデザインユニットのマネージャー森藍さんと同ユニットのデジタルチームに所属する新井田萌さんが、採用ブランディングにおけるデザイン思考についてお届けします。

 こんにちは、SUPER STUDIOの森と新井田です。

 SUPER STUDIOのデザイン組織であるカスタマーエクスペリエンス室のブランドデザインユニット・マネージャーとして、自社D2Cブランドやコーポレート領域のプロジェクトマネジメント、フロントエンド開発、デザイン組織のマネジメントを担当している森と、カスタマーエクスペリエンス室のブランドデザインユニットで、自社D2Cブランドやコーポレート領域におけるデジタルデザインを担当している新井田がお届けします。

 前回は、コーポレートブランドの確立におけるコーポレートサイトリニューアルの裏側についてお伝えしました。今回は、採用ブランディングにおける採用施策の推進や採用サイトリニューアルについて、候補者体験を設計するためにどのようなコンテンツやデザインを制作したのか、具体的な取り組みを紹介します。

コーポレートブランドを起点にした採用候補者ジャーニーの設計

 コーポレートブランド確立のためのコーポレートサイトリニューアルのプロジェクトは半年以上におよびましたが、2023年10月にひと段落しました。当初課題としていた「実態と異なるコーポレートイメージの払拭」に貢献することができ、“SUPER STUDIOとは何か”を視覚的に伝えることができました。

 次のフェーズとして考えたのは「コーポレートブランドをふまえた採用ブランディングの設計」です。採用ブランディングにおいては、採用サイトリニューアルを中心により良い候補者体験をつくること、これにより採用目標数を達成することを目的とし、まずは採用候補者の方がどんなタイミングで採用サイトを訪れ、活用するのか。そして、採用サイトを経てどのような行動をとっていくのかを整理しながら、SUPER STUDIOの採用候補者のジャーニーを作成していきました。

採用候補者ジャーニーを可視化した資料
採用候補者ジャーニーを可視化した資料

 具体的に行ったのは、採用候補者のペルソナを明確にし、ダイレクトリクルーティング、リファラル、採用エージェントといったチャネルごとに、認知から応募、入社までの各フェーズにおける採用候補者のアクションを整理することです。その後、チャネルごとの現状の課題や、候補者にしてもらうべき最適な体験をまとめていきました。プロジェクトメンバーでこのジャーニーをベースにしながら、採用サイトリニューアルや採用候補者の体験設計において注力すべきポイントを議論していきました。

 採用体験の設計時に実施したのは、自社で使用している採用管理システム「HRMOS」のデータを確認しながらの数値分析です。内定オファーが多い流入経路や母集団形成に対する各ステップの通過率などを比較するなかで、SUPER STUDIOではもっともレバレッジ効果が高いと考えた「リファラル施策」への注力を決めました。

HRMOSのデータを集計した資料
HRMOSのデータを集計した資料

 SUPER STUDIOには、リファラル採用の促進を目的とした「むすびNIGHT」と「WithUS!」という制度が設けられています。

 むすびNIGHTは、メンバーの友人や知人、選考中の候補者の方が自由に参加できる交流会イベントで、ケータリングのおにぎりを食べながら、SUPER STUDIOのメンバーと交流を深めていただける制度です。一方WithUS!は、SUPER STUDIOの紹介やリファラル採用が目的。社外の友人や知人と食事などを介し、コミュニケーションを図る制度になっています。

 当時、こうしたリファラル制度を利用しているのは一部のメンバーのみにとどまることが多く、個人の能動的な姿勢に依存している状態でした。その課題を深掘りして浮き上がった仮説は、リファラル採用への心理的ハードルが高かったり、紹介した後のアフターフォローが希薄化していたりすることが起因しているのではないかということです。

 そこで、SUPER STUDIOのメンバーのリファラルへの認知や動機づけ、行動、再紹介に関するメリットや課題についてディスカッションを行いました。そこで挙げられたのは、「定期的に採用候補者を紹介してくれたメンバーへの感謝はできているものの、それをやることへの具体的な理由づけができていない」「自発的に動く仕組みが薄い」などの課題。そうした議論の末、現状の課題を解決するアプローチ方法として、アトラクト資料の制作や求人要項の情報整備などに注力していくことを決めました。

採用戦略を設計した際の資料
採用戦略を設計した際の資料

 そのひとつとして制作・公開したのは、SUPER STUDIOの仕事や制度、働きかた、カルチャー、インタビュー記事など、社内のあらゆる情報を集約したバーチャルマップ「SUPER STUDIO360°ツアー」です。

 現在、360°ツアーはHRMOSの会社紹介資料として一般向けに公開しているほか、選考中の採用候補者の方にもお送りしています。実際に、面接の際に「360°ツアーを見た」「SUPER STUDIOの丁寧な姿勢を感じた」という声もいただきました。また社内のメンバーからも、面接の際に情報が不足しているがゆえの質問が減少し、より深いコミュニケーションが取れるようになったと好評です。採用エージェントにもお渡ししているのですが、エージェントの方からもSUPER STUDIOについて紹介しやすくなったとの反響をいただいています。

採用候補者や採用エージェント向けに公開している「SUPER STUDIO360°ツアー」
採用候補者や採用エージェント向けに公開している「SUPER STUDIO360°ツアー」

 また、社内メンバーがリファラル採用に関わる際、どのように魅力を伝えてアトラクトすると良いかをまとめた「リファラルガイド」も作成しました。もともとの課題として、リファラル採用における採用情報や選考フローのわかりにくさ、部署・担当者間でのリファラルの得意不得意のばらつき、SUPER STUDIOを語れる情報の不足などが挙げられていました。リファラルガイドではこうした課題を解消すべく、リファラル採用における採用情報を明示したり、過去の成功事例をまとめたりして、リファラル採用における当事者意識の向上を促すようにしました。

リファラル採用で活用する「リファラルガイド」
リファラル採用で活用する「リファラルガイド」