山梨県は11月20日(水)、デザイン推進の新たな拠点として「山梨デザインセンター」を甲府市の県庁舎にある防災新館2階に開設した。同センターは、県立美術館(同市貢川)の付属施設として設置する全国で初めての試みで、デザインの力で地域活性化や社会課題の解決を図ることを目的としている。20日に開催したオープニングイベントでは、主催者挨拶やトークセッションが行われ、関係者など約100人が出席した。
「デザイン先進県」の実現にむけたセンターの役割とは
オープニングイベントで、長崎幸太郎知事は「デザインの持つ力を最大限に生かし、デザイン先進県の実現に向け、しなやかな発想で取り組む」と決意を述べた。また、県立美術館の⻘柳館長は「山梨県は東京を支える場所としてのポテンシャルがあり、本来の力を発揮するにはデザインの力が重要だ」と話した。
「デザインとは何か」
オープニングイベントの第2部では、チーフ・デザイン・オフィサー(CDO)でセンター長を務める多摩美術大学の永井一史教授、デザインディレクター(DD)の深澤直人副学長(同)、柴田文江教授(同)、「継承される地域」のデザインに取り組む会社Q0の林千晶社長の4名によるトークセッションが行われた。
ファシリテーターを務める永井氏は、デザインについて「デザインの真理を一言で言うのは難しい」と話したうえで、登壇者それぞれのデザイン観について聞いた。
深澤氏は、デザインの定義を「人と環境の関係を最適化すること」、柴田氏は「人が人間らしく生きるための知恵」と語った。また、林氏は戦前の哲学者であるハンナ・アーレントの「人間は何のために生まれるのか。それは新しいものを生み出すためだ」という言葉を引用しつつ、「デザインとは新しい挑戦をすることと、時代の感覚を取り入れること」と話し、デザイン先進県の実現に向けて、それぞれの“デザイン”に対する思いを明らかにした。
今後の展望
永井氏からは「目標はデザインの力で山梨をしなやかに美しくすること。行政とデザインの融合を目指し、山梨県をモデルケースとして全国展開していきたい」と抱負を述べた。
深澤氏は「⼭梨県を、全ての人が共感し憧れるユートピアにすることが今私に与えられたミッション」、柴田氏は「デザインは⼤きなうねりを作る⼒を持っている。デザインの専門家としてそれが間違いのないよう方向を見据える役目」、林氏は「地域を支えるデザインの観点から、点在するローカルプレイヤーの活動したい」とし、意気込みを語った。
「山梨デザインセンター」とは
山梨デザインセンターは、洗練されたデザインによる地場産品の商品開発やプロモーション支援を行うほか、多摩美術大などさまざまな機関と連携してデザインを学ぶ講座を開き、子どもから大人まで幅広い層にデザイン思考の浸透を図っていく。また、デザイナー、アーティスト、クリエイターなどのネットワーク構築の拠点として機能させ、政策立案へのアドバイス、地域アイデンティティーの創出などに貢献していく。また、同センターはデザインを通して、イノベーションやコミュニケーション、そしてプレゼンテーションが生まれる場所となるように、素材や品質、ディテールにこだわり、シンプルで落ち着きのある空間として構成され、⼭梨におけるデザイン活動のハブになる拠点としてデザインされている。
コミュニティスペース
デザイナーやクリエイター同士が交流できる場として活用可能。また、デザイン分野のセミナーやワークショップの場としても活用できる。
展示スペース
組み立て式展示台によって、デザイナーやクリエイターがいつでも作品を展示・発表できる場として機能する。