動画コンテンツで意識している「シリーズ化」と「パッケージ化」
そして、ここでさらにひと工夫。前半で折原からも「試合に行って生の選手たちをみてみたい!と思えるような魅力を出すためには、どういう企画が良いのか。その企画がちゃんと多くの人に届くような目線はあるか――。このような「やる意味」と「見たくなるポイント」を組み合わせて企画を作りましょう」とありましたが、この中でも「企画が多くの人に届くような目線」というワードはとくに重要です。
そしてその点を意識し、我々クリエイティブチームが日々必死に考えているのが、動画コンテンツの「シリーズ化」「パッケージ化」です。
たとえば現在、長尺動画では「ANOTHER INSIDE」というシリーズがあります。これはもともと制作していた、チームに1年間密着した硬派なスポーツドキュメンタリー「THE INSIDE」とは違い、より選手の素顔や人間性を知ってもらうために誕生したシリーズ企画です。

さらに、ショート動画では究極の二択を選手に答えてもらう「2択ショート」やいきなり話しかけて選手に何かに挑戦してもらう「いきなりショート」、さらには試合映像の切り抜きにキャッチコピーをつけて試合後に公開している「即だしショート」などを、「シリーズ化」「パッケージ化」して発信しています。

「シリーズ化」「パッケージ化」をすることの利点は、チャンネルの個性が出ることはもちろん、千葉ジェッツをレコメンドで知ってくれた視聴者が「なんかこのシリーズおもしろそう」というフックになってくれる可能性が高まること。その結果、YouTubeチャンネルに長い時間滞在してくれるようになります。シリーズでの出会いをきっかけに、お気に入りの選手が出ている動画だけでなく、かっこいいプレー、かわいい素顔などを各々が追い求めディグする好循環、つまり徐々に「沼っていく」アクションが生まれていくのです。
そして、これにはもうひとつのメリットがあります。それは千葉ジェッツ広報チームをはじめ、選手にもこのシリーズ名で浸透していき、コミュニケーションコストが格段に減ることです。撮影では何を撮りたいかをいちいち説明するまでもなく「今日は何ですか?」「今日は二択撮ります!」というワンラリーで、いきなりRECスタート。限られた時間を有効に使うことが可能になります。
そういった工夫をしながらチャンネル運営を行ってきましたが、紆余曲折もありました。順風満帆な運営を目指していくなかで、数々の壁が出現したのです。
「サムネイルの壁」をどう打開したのか

上の図は、我々の前に立ちはだかった「3つの運用の壁」です。それぞれの壁を運用チームがどう乗り越えてきたのかについては、次回以降で現場のディレクターたちが詳細を解説しますが、今回はここには挙げていない、YouTube運用者なら誰もがぶち当たる「サムネイルの壁」と我々の打開策を紹介します。
YouTubeにおいて動画の表紙とも言える「サムネイル」。誤解を招いてしまうかもしれませんが、動画の中身よりも重要ではないかとすら感じています。というのも、動画のクリック率の高さが、動画の視聴回数に直結しており、動画の中身が良くてもサムネイルのクリック率が低くては多くの人に観てもらえないからです。しかし運営に携わり始めた当初、テレビ業界出身者が多いMIXIメンバーは、僕を含めほぼ全員のサムネイル制作歴が浅く、制作するメンバーごとにクオリティがバラバラ。おまけに統一感もなし。決してクオリティの高いサムネイルが並んでいるとは言い難い状況でした。
そこで、立ち上がったのが前半を執筆した折原です。すでに公開されている動画をサンプルにし、どうしたらこのサムネをブラッシュアップできるかを考える「サムネ道場」を実施。1人ひとりが自分の手を動かし、サムネを作り直してみるというワークショップを行いました。

そして各自が手を動かし作ってきたサムネイルをもとに、良いものとそうでないものの違いなどについて意見交換を行った結果、惹きの強いサムネイルには「視認性の高さ」と「明るさ」が共通しているということに気づきました。
その後、このふたつの要素をクリアするために「読みやすさを重視したフォント選び」や「サムネ用の写真撮影」「複数の素材を組み合わせる技術」などを取り入れたことで以前より全員のクオリティが安定し、クリック率もアップ。YouTubeの運用をしていくうえで、こういった学び続ける姿勢や努力してスキルを磨く泥臭さも大切なのだと改めて実感しました。
すべては「千葉ジェッツを知り、好きになってもらうため」
今回の記事では、我々がBリーグの中でYouTubeチャンネル登録者数がトップになるまで行ってきた取り組みや考えかたをシェアしてきましたが、自分でも「なんで、ここまで突き詰めて運用をやっているんだろう」と考えるときもあります。しかし、この自問自答に対していつも出てくる答えはひとつ。「千葉ジェッツのことを知らない方々に、千葉ジェッツのことを知ってもらい、好きになってもらいたい」からに尽きるのです。
魅力的なチーム、選手、スタッフたちがそこにいるからこそ、我々MIXIチームも一緒になって、どうにかこの魅力を伝えていきたい。そのためには、携わらせてもらっている我々がときには泥臭く、愛を持ってコンテンツを制作し、運用を行い、発信し続けなくてはなりません。
そして、そんな集団を取りまとめるのが、総合演出としての責務。そして、千葉ジェッツの認知を拡大させていける可能性こそ、この仕事のおもしろみだと思っています。
次回は、選手からの信頼度No.1の千田と、千葉ジェッツへ出向し広報を担当する最終兵器・小原がタッグを組み、いかにしてチーム、そして選手と関係を構築してきたのか。さまざまな事例を交えながら、その秘訣を紹介できればと思います。