モーションに個性と感情を宿らせる
効果的なモーションを創作するうえでは、単なる視覚的表現や技術的な精度だけでなく、人間の感性と動作認知に対する深い理解が必要だ。
たとえばVuckoがオンライングラフィックデザインソフトウェア企業「Canva」と開発したモーションシステムでは、カーソルの動きさえもブランドの性格を反映する重要な要素とされた。
(出典元:Creative Boom)
彼らはまず「意図的で人間らしい動き」というモーション原則を設定し、すべてのアニメーションが単に機能するだけでなく、感情を伝え、体験に共鳴を生むように設計している。このようにして作られたモーション言語は、Canvaの「カジュアルな創造性からプロフェッショナルな共同作業まで」を視覚的かつ直感的に表現する、柔軟で統一された仕組みとなっている。
成功するモーションアイデンティティの要点
ここで、数々のプロジェクトの実践から導かれた、モーションアイデンティティを成功させるためのポイントをまとめてみよう。
戦略から始める
モーションはただ動かせば良いのではなく、ブランドの本質を表現する手段として位置づける必要がある
エコシステム全体を設計する
UI、UX、マーケティング、広告など、あらゆる接点でモーションが整合性を持って機能するように計画することが重要
スケーラビリティを確保する
多様なプラットフォームやデバイスにおいて一貫した表現が可能な汎用性の高いシステムを構築すること
人間らしさを意識する
モーションは自然で、意図があり、感情と共鳴するものでなければいけない。無意味に複雑で機械的な動きは、かえってブランドへの不信感を招くこともある
パフォーマンスを重視する
動きの美しさがUXの質を損ねてしまっては本末転倒。表示速度やスムーズなインタラクションを実現するために、技術面からの最適化は欠かせない
モーションの未来
テクノロジーの進化とともに、私たちが触れる情報はますます動的になり、空間コンピューティングやARのような新しいメディア環境も登場している。このように、デジタル空間でのインタラクションが日常化する時代において、モーションはもはや単なる補助的な要素ではなく、ブランド戦略そのものの中核をなす存在だろう。
(出典元:Creative Boom)
最終的にモーションとは、ブランドが“生きている”ことの証となる。ブランドとユーザーとの間に生まれる“つながり”の質を高めるために、動きは言葉以上に多くを語り、感じさせる力を持っている。だからこそ、モーションはあとから追加されるものではなく、ブランド構築の最初の段階から統合されるべきものなのだ。